【EPISODE6 AIMFORSTARZ(エイムフォースターズ)】
●配役表
ベリオ♂️:
ラプラス♂️:
フラワ♀️:
ワカミネ/女性技術官♀️:
カリオストロ♀️:
ネリル♀️:(※フラワと兼ね可)
ヒメ♀️:(※ワカミネと兼ね可)
ディール♂️♀️:
●男女比率
最小6人【♂2・♀3・不1】
最大8人【♂2・♀5・不1】
ベリオ:....凄ぇ.....。....けど。オレは何もしてねぇよ。
フラワとディールの実力だろ。....オレは.......
フラワ:.....言うと思ったわ。シュヴァリエ!!来なさい。
シュヴァリエ・カリオストロ:なんだい、フラワ?
ベリオ:だ、だい?
フラワ:紹介するわ、シュヴァリエ・カリオストロ。
ランドスタッド疑似戦闘の適正値がモーーーーーレツに高いの。
別にディールみたいに目と耳がレーダー並みに良いわけでも、私みたいに神経接続機構が埋め込まれてるわけでもなく。
ただただ空間認識能力や重火器の扱いがズバ抜けてんの。
ってな訳で、ランドモービルじゃなくて、ワンオフのランドスタッドを急遽製造してるってわけ。
カリオストロ:君がベリオ君だね?......
その体、まるで秋の紅く染まった落ち葉の如し.....
君というただ1枚の儚い葉を、僕は柔らかく抱きしめる森でありたい.....
ベリオ:はよ喋れ
フラワ:優秀ではあるのよ。優秀では....。
カリオストロ:良いんだよ。彼の心の鍵は暗く深い海の底....
僕はその海水を掻き分け、君の鍵を見つけてみせよう。そう、この出会いはまるで海底火山....
ベリオ:後半マジで何言ってんだ?
ディール:前半も分からなくないですか?
カリオストロ:この傷....。 ラプラスに立ち向かって出来たんだってね。
<ベリオの手を取り、熱っぽい視線で眺める>
カリオストロ:「傷とは勲章だ」....ではないのは重々承知なのだけれどね。
楽に得る勝利は真の勝利ではないというのが僕の持論さ。
....君が命がけで建てた孤児院のお陰で、没落貴族の僕の弟は飢えずに済んだ。
そして君は道を切り開こうとしている。
その代償のこの傷....。誇るべきものだよ。
ベリオ:....勝利に真も偽もあるか。勝ちゃなんだって勝ちだろうが。
....おい、触んな。....オレが弱いからついた傷だ、褒められるようなもんじゃねえ。
カリオストロ: ...あッは......♡ 済まなかったね。
おいそれと傷に触れられる容態ではないという事を失念していたよ。
...では、また会おうベリオくん。二人っきりでの特訓、期待しているよ。
ベリオ:....なんだったんだ。
フラワ:ここにいる約半数は、アンタの孤児院で家族や自分が助かった人々。
私たちは半分くらいしか集めてない。...胸張んなさい。
たった1年でこんなに人を助けたのよ。
そして、これからもっと救うためにアンタはここにいる。
ディール:そして、僕たちが変えるんです。火種になれば良い...ではない。
後に続く者たちへ...でもない。僕たちが、変えるために。その為の、機体なんです。
この....A.F.S超短期想定鎮圧作戦行動用ランドスタッド ドミナント・ジェイルブレイクを始めとしたランドスタッドで、半年以内のNOAHへの移動、作戦行動を開始します!!!
ベリオ:.....長えよ
ディール:嫌いですか?
ベリオ:億兆万光年大好き。
フラワ:光年は距離でしょうが。.....バカね。
<ディールとベリオは顔を見合わせて照れ臭そうに微笑み合っている。
それを呆れた顔で一瞥して去っていくフラワ。>
<NOAHへの巡航飛行で移動する戦艦“ヴェイルサイド”内。>
ヒメ・ミッシェル・ヤクト:ね~大佐あ~
ネリル:...大佐は現在NOAH本部へのOBLOM保存情報の破壊報告レポートの処理中です。
言伝であれば私が承りますが。
ヒメ:....えぇ~?ヤダ~~ なんかヘンな匂いするんだけどぉ~~~~?
オバサンみたいな匂いするぅ~~~~~☆
ネリル:先ほど殺菌シャワーと加圧式滅菌ルームにおりましたので、 雑菌の苦しむ匂いはするとは思いますが。
ヒメ:へえ......?大佐に媚び売る割には自分だけキレーで居たいんだ~~~~?
ネリル:媚びではなく“実力”で大佐の補佐をしております。
“媚び”で職務中の大佐に要らぬ時間を取らせる程薄汚れてはおりませんので。
ヒメ:......オメぇあんま上等くれてっとブチ抜いちまうぞ? クセぇんだよババアよぉ。
次のランドスタッドパイロット選抜...流れ弾に気ィつけとけよ?
ネリル:....見苦しい。 剥がれるような仮面であれば着けるだけ無駄でしょう。
<口論をする二人の女性。片や冷たく見下すように、片や熱を持って射殺すかのような視線でにらみ合っている。
むにゅんとお互いの胸がぶつかって形を変えるという蠱惑的な光景であるが、
周囲の航行管理官を始めとした船員は目を合わせぬようにし、何ともいえぬ緊張感が漂っている。>
ラプラス:...その辺りにしておきたまえ二人共。他の兵士の士気にも関わる。
ネリル:....は。然し大佐。軍規に外れた態度や言動を繰り返しているのはヤクト軍曹であることは明白かと思われます。
適切な対応の検討は必須かと。
ヒメ:ねぇ大佐ぁ☆ ダメだよぉこんなオバサンに仕事まかせてちゃぁ~☆
時代はやっぱコミュニケーション☆ ジメジメ堅苦しいのはもう古いってぇ~☆
それにランドスタッドだって私の方がうまく乗りこなせてるしぃ☆
ネリル:選抜において1位を取ったからこそ此処に居る私には、滑稽に響く言葉ですね。
ヒメ:ぁん?かかってこいよババァがよ。
たまたまヒメが遠距離狙撃部隊に配属されたからって前線張ってるつもりか?
ラプラス:....その辺に、
<ぶわっ、と空気が変わるような言葉。
言い切られていないその言葉は、ネリルとヒメの背筋を冷たい刃物でなぞるようなプレッシャーを放った。>
ラプラス:したまえ。 今の私は少々気が立っている。
ネリル:...失礼いたしました。
ヒメ:冗ッッッ談じゃあ~~~ん大佐ぁ~~☆
ネリルさんともちょっとじゃれてただけぇ~~~☆
ネリル:では、大佐。
<そう言って二人はメインルームを後にする。>
ラプラス:..NOAHも人類も、所詮は同じ。
書面で現場を把握できない事は明白であるのに....。
人類はもはや巨体を横たえる老いた象だ。
立ち上がる事すらできずに死を待つだけの運命に気付かぬふりをしている。
.......成し遂げねばならない。...“VAILSIDEDRIVE”の点検を怠るな。
女性技術官A:はっ。
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<場面が変わり、ランドスタッドのドック(倉庫・格納庫)。
そこでは四体のランドスタッドが格納されていた。その空間で二人向き合っているフラワとカリオストロ。>
フラワ:....何で呼び出したか分かる?
カリオストロ:分からないね。まぁ....慣れてはいるからね、女の子に告白をされるのは。
だが申し訳ない、君という真珠はまだ硬い殻の中....海の冷たさを知るには時期尚早だと言わざるを得ない....
フラワ:黙って。...つーか、んな訳ないでしょうが。
....そりゃ、盲目なガキはアンタに懐くでしょうね。妙なそのポエムも親しみを覚えさせる為ってトコ?
でもね。一つだけ忠告しとくわ。
ベリオに変な事してみなさい。...コックピットごと引きちぎってやるから。
カリオストロ:......何を根拠に言っているのか分からないが....小鳥は可愛らしく囀るから駆除されないのさ。
人に不利益をもたらす害鳥は....駆除されるのが運命だよ、フラワ君。
子供じみた独占欲でチームメイトを攻撃するのは集団行動において必要かな?
フラワ:アンタ、ベリオは憧れって言っていたわね。憧れってね。小さい童って書くのよ。
大人ぶりたい年ごろなの?
カリオストロ:言葉遊びが趣味かな?
フラワ:あら、詩人さんが言うのね。
カリオストロ:.....可愛くはない言葉選びだね。
フラワ:アンタの視界の女が全員アンタに媚び売ってくれると思った?
カリオストロ:....興味深いね。
<二人が向かい合って距離をずんずんと詰めている。必然お互いの胸がむにゅんとぶつかり合う。>
<物陰に隠れているベリオとディール>
ベリオ:バカディール聞こえねえだろ!もっと前行こうぜってば...
ディール:なんで僕がこんな事....フラワさんに観測部からのデータについて話がしたいだけなのに....
ベリオ:おい怖い顔してるぞ!!!もうちょいでケンカすんじゃねえか!!?!!?
ディール:なおさらこの場に居たくないですよ!普通に話しかけに行きましょうよ~~~....
ベリオ:あっおっぱいぶつかってる!!!ディール!!!カメラ!!!!
ディール:ないですよ書類しか!!!!
ベリオ:くっそ~~~挟まりてえなあ!!しかしフラワもなかなかどうして時の流れというものは
<ごむん、と柔らかいものをハンマーでたたいたような音が二人の脳内に響き渡る。>
ワカミネ・スギウラ:何をしておるか貴様らは。
ベリオ:ねえディール?オレの頭ある?
ディール:わ....ワカミネさん......。
ベリオ:ディール?オレの頭ある?
ワカミネ:コソコソとした盗み聞きは好かん。男子たるもの、隠れる時は涙を流すときのみ。
ベリオ:誰゛こ゛い゛つ゛.......
ワカミネ:おお、自己紹介がまだであったな。ウェストホーキング出身、ワカミネ・スギウラ。
NOAHZで空間戦闘ランドアームズの特殊訓練を受けていた。
ベリオ:....!!!
ワカミネ:そう怖い顔をするな。受けて“いた”と言っているだろう。とっくに除隊している。
ベリオ:なんで抜けた。
ワカミネ:簡単だ。私の下には幼い妹が二人いて.....両親がコールドローズ症で死んだ。
....親戚は居ない。ベビーシッターを雇う事も勿論考えたが、
両親の治療費のローンを自転車のように返しては働き、返しては働き、返しては...の日々でな。
...恥ずかしいものだが、最早3人で、とのところでイーストダーウィンでの孤児院の話を聞いた。
中等範囲までの学問も安く修められるとも聞き....縋る様に妹二人を預けた。
そして...その設立はお前なのだろう?東の英雄、ベリオ。
ベリオ:なんだかむず痒いな。辞めてくれよ。
カネ出しただけ、運営も設立も維持も全部俺より賢い大人がやってる。
オレの懐にはカネも入ってきてねえし...っつうか、なんだよ、東の英雄って。
ワカミネ:くっくっく....照れには弱いと見えるな。
そんなことでは今後苦労するぞ、ベリオ。
そして、話の続きだが...そんな折に偶然ディールからAFSに誘われ、今ここにいる、といった具合な訳だ。
ベリオ:なんか濃い奴ばっかり誘ったんだな、ディール.....。
ディール:そんなことより、見てくださいフラワさん。
<手に持った書類を差し出すディール>
フラワ:何..?これは....
ディール:AFSのIOPLANET周囲定期周回衛星の6時間前の観測映像の画像です。
フラワ:これは....IOPLANETの軌道修正スラスター...?
カリオストロ:隕石を始めとした外的要因による衝突の回避のために設置されたコロニー回避行動用のスラスターだね。
人類を乗せる箱に相応しい...相変わらず巨大なスラスターだね。
ディール:2枚目の拡大画像を見てください。スラスターの陰に....
ワカミネ:まるで.....人、だな。
カリオストロ:君が最も間近で見て居たんじゃないか?正式名称で呼びたまえよ。
ワカミネ:......スペリオル。
ディール:2体確認できます。そして....
フラワ:“張り付いて何をしている”,,,,?
ワカミネ:スラスターの点検ではないのか?
ディール:であれば、通常30分ほどの点検で終了するはずなんです。
しかし今回は5分もかかっていません。...“早すぎる”んです。不自然なほどに。そして、これが映像です。
<タブレットを出して映像を再生するディール>
フラワ:これは....何かを点検しているというより....
カリオストロ:“何かを設置している”。
ディール:そして、セントラルエジソンへの報告は有りませんでした。
....点検時には報告の義務があるんですが、それがされていない。
僕達の非合法で飛ばした把握されていない衛星だからこそ撮影できたこの映像。
そして、報告のない水面下で行われる謎の作業。
ワカミネ:...イヤな感覚だ。
ささいな疑いが“疑念”に変わる瞬間は、何度経験しても毛穴が開くような不快感に襲われる。
フラワ:...偵察の必要があるわね。
ディール:然し....ランドスタッドの試運転も不十分です。
最終動作にこぎつけるまでは....どう甘く見ても1か月は必要です。
フラワ:1か月で仕上げるわよ。
ディール:了解。
ワカミネ:了解だ。
カリオストロ:了解だよ。
ベリオ:えオレの意見は?
<1ヶ月後>
カリオストロ:やあ、ワカミネ。
訓練に精を出している様子、視界に入るたびに感服の思いだよ。
さながら大地に楔を打ち込む開拓者....
ワカミネ:....? 貴君は不思議な言い回しをするのだな。
私は大地に楔など打ち込まないぞ。
カリオストロ:あはは、ワカミネのそのあどけなさが時にミスマッチに....然しその非対称さが僕の何かを刺激する.....!!!
ワカミネ:私からあどけなさを感じるのか。
妹も二人いる事が関係しているのだろうか。貴重な意見をありがとう。
ベリオ:おい、あれ混ぜちゃダメな二人じゃないのか
ディール:シュールが売りのコントみたいになってますね
フラワ:静かにする。集まるなりぺちゃくちゃぺちゃくちゃしないで。
2徹してんだから頭に響くのよ。はい、皆さんが静かになるまで15秒かかりました。
ベリオ:ジャッジが辛いな
フラワ:まず...ベリオ。高密骨構成材を一か月飲みながらの訓練、お疲れ様。
ベリオ:腕とれるか思た
ディール:構成材は文字通り骨を構成する材料を体に入れて骨をメキメキ治すものですからね。
ワカミネ:毎晩シクシク泣いていたな。
カリオストロ:......僕が添い寝をしてあげてもよかったのに....。
フラワ:はいだまらっしゃい。 ....ワカミネのランドアームズも整備が完了。
ディールとベリオのランドスタッドも出撃準備が可能...、そして。
ネペンテスも出撃最終調整がついさっき終わったわ。
カリオストロ:なかなかに時間がかかるものだね。
フラワ:どこかの誰かさんによる注文が多かったものでね。
カリオストロ:では全部搭載してくれたのかい!?
フラワ:ベリオの心拍数を図るセンサーを始めとした箇所は全部却下したわよ。
....IOPLANETの軌道修正スラスターへの調査は翌日の06:00(ゼロシックス)。
15分以上の滞在は恐らくNOAHZに探知される。
ワカミネ:15分以上ミッションにかかってしまった場合は?
フラワ:...警告無しで撃墜を目的とした射撃が行われるわ。
ワカミネ:了解した。留意しておく。
フラワ:軌道修正スラスターはあまりに巨大。
全員で随時の情報共有をしながらでないとこのミッションの完遂は不可能。
各自配ったデータに目を通して持ち場を確認しておくことね。 ....以上。解散。
<場面が変わり、星空の下のフラワとワカミネ。>
フラワ:....ひっく。ぐす...。
ワカミネ:風邪をひくぞ。
フラワ:!!!!!.....ワカミネ....。
ワカミネ:この丘は私も好きだ。
この景色は天候操作システムによる表示板の映像ではない。
コロニーが透明化して星が見えている。....この光は確かに本物の光なのだと、どこか胸を子供の様にときめかせてしまう。
そんな甘いむず痒さは、ここでしか味わえんからな。
フラワ:カリオストロみたいなこと言うのね。....笑うでしょ。
ワカミネ:笑う?何故だ。
フラワ:わかってんのよ。私じゃ、完璧なプランを立てられていない。
不信感で挑むには巨大すぎる敵。私が乗れる機体は強くなんかなくて、精密な動きが出来るだけ。
あなた達みたいに最前線で機体と対峙する訳じゃない。
......皆の命の責任を取れるわけでもないのに、雲をつかんだようなもやもやがずっと胸の中から晴れなくて...。
ワカミネ:..................フラワは、優しいのだな。
フラワ:...ありがと。
ワカミネ:褒めてはいない。戦場ではお前のような奴から死ぬ。
フラワ:........。
ワカミネ:命の責任は人間を生み出した神...仮にそんな存在がいるとすればだが....その存在にしか責任は背負えない。
私たちは脅されたわけではない。志願してここに居る。
そんな私たちに命の責任を感じる人間が、敵という人間に引き金が引けるとは....私は思わんな。
ワカミネ:明日の作戦は統率として本部で待機していても構わんのだぞ?
“セイヴァージーク”も発艦するだろうが.....地上での待機は怯えではない。
フラワ:....私が、出たいから、出るの。皆と、この作戦を完遂したい。
ワカミネ:そうだ。私も、ベリオも、ディールも。カリオストロも。
A.F.Sのクルーも。出たいから、出る。見たいから、見る。
知りたいから、変えたいから、集まった。
そんな人間しかいないこの場で、何かを背負い込もうとするな。
お前がお前で精いっぱい在れば良いのだ。....無論、作戦も完遂させられれば、言う事はないがな。
フラワ:............少し、泣くわね。
ワカミネ:..........冷えるな。ほどほどにしておけよ、フラワ。貴君が欠けては遂行は難しくなるからな。
<フラワの肩に自分の上着を被せて去っていくワカミネ>
フラワ:.....おやすみ。