ことわざ生産省
登場人物
十囮大臣ーとててれだいじん
可愛副大臣ーかわいふくだいじん
鯱町隊長ーしゃちまちたいちょう
鰤檻副隊長ーぶりおりふくたいちょう
秘書ーひしょ
「最近の若者のことわざ離れは深刻であります!私が国会議員になった暁には、必ず、必ずや、ことわざ力の向上を約束いたします!もっとことわざを身近に!清きことわざを国民に!ついでに私に一票を!」
○
「十囮大臣、漣機関言ノ葉部隊から鯱町様と鰤檻様がお見えになっております。いつも通り第7会議室でお待ちです」
「そうか、うむ。すぐ行こう」
ことわざ生産省大臣室からスキップで第7会議室まで移動した十囮は扉の前で服装を正し、ノックする。
ココココココココココ!
「うるせぇよ!」
ドカン、と音を立てて鯱町が扉を開ける。
「入れよ!」
会議室の中では鰤檻がレモンを咥えて筋トレをしていた。
「やぁ、鰤檻君。なぜレモンを咥えてロシア式モンゴリアンスクワットをしているんだぃ?」
ハッハッハと快活に笑い鰤檻が答える。
「十囮大臣!こんにちは!その質問に私は答えよう!ズバリ、レモンを咥えながら筋トレをするとクエン酸が体に染み渡りすぐに疲れがなくなってしまうのだ!よって永遠に筋トレができる!永久筋トレ機関の完成だ!」
「よし、鯱町君、本題に入ろう」
鰤檻を椅子に座らせ、鯱町、十囮も座ったところで扉が開く。
「失礼いたします。お茶と書類とカステイラです」
お茶と書類とカステイラを持ってきた可愛副大臣は洗練された動きで配り終えたあと、椅子に座った。
「さて、それでは会議を始めよう。可愛副大臣」
4人はそれぞれ手元の書類を見る。
「はい。今月抹消候補に上がったのは、目くそ鼻くそ、腐っても鯛、壁に耳あり障子に目あり、の3つです。鯱町様、いかがですか?」
「う~ん。目くそ鼻くそは確定でいいだろ。今まで残ってたのが不思議なぐらいだ。腐っても鯛は代案次第かな。壁に耳あり障子に目ありはどういう理由だ?」
「はい。実は海外から日本に移住してきた方達から、壁に耳あり障子にメアリーと、からかわれるので抹消してくれと。日本全国300人のメアリー様から署名が届きました。」
「それは由々しき問題だ。大臣の名のもとに抹消しよう。では、代案を聞こう。鰤檻君、よろしく」
「任せてくれ!まずは目くそ鼻くその代案は、木苺野苺、でどうだろうか!次に、腐っても鯛の代案は、砕けてもダイヤ、でどうかな!?壁に耳あり障子に目ありの代案は思いついていない!」
「うむ、いい案だ。大臣の名のもとに承認しよう。残りの1つはどうしようか」
「はい、大臣。公募という手もありますが…今回は見送って来月決定でよろしいかと」
「よし、それでいこう。では、鯱町君。今月は新しいことわざはあるかな?」
「いくつか良さげなのはあるぜ。猿の虹渡り、これは実現不可能な事だな。他には、美人の平手打ち。自分はお仕置きのつもりでやったことなのに相手からするとご褒美になってしまうという事だな。後は…しらたきで首吊り、とかいいな。求める結果に対して行動が完全に間違っているって所か。今月はこれぐらいか、鰤檻はなんかあるか?」
「あるぞ!鯱町隊長!発表させていただく!1つ目は、曇天の名月!どんなにいいものでも見えなければ意味がないという事だ!2つ目は、太陽に火矢!意味は、やっても無意味という事だな!以上!」
「はい。では今月は、猿の虹渡り、美人の平手打ち、しらたきで首吊り、曇天の名月、太陽に火矢、の5つです。十囮大臣。」
「そうだな、猿の虹渡り、しらたきで首吊り、太陽に火矢の3つは大臣の名のもとに承認する。残りの2つは幹部会議に持っていこう。他になにかあるかな?」
「あ、大臣、1個だけ。来月ウチの部隊に新人が来るんだわ。漣機関が子供の頃から目ェ付けてたらしくてな。アメリカ留学から帰ってきたってんで引き入れたエリートちゃんなんだが」
「是非会ってみたいな。うむ。連れてきてくれ」
「了解した。じゃ、また来月よろしく」
「ハッハッハ!十囮大臣さようなら!」
「うむ、皆ご苦労だった」
「はい。では今月のことわざ生産会議を終わります。鯱町様、鰤檻様、十囮大臣、お疲れさまでした。また来月お会いしましょう」
○
ーことわざ生産省副大臣室ー
「ぐはー。鬼疲れた。だりーしんでぃー」
ボフンッとソファに飛び込む。
「あら、副大臣。お行儀が悪いですよ」
美人と評判の秘書が注意をしてくるが、とりあえず無視してSNSを見る。自分の名前で検索してどんな投稿があるかをチェックしなければ。内閣総理大臣を目指すものとして!
「そういえば副大臣、天照党の代表から荷物とお手紙が届いてますよ」
「んー後で見とくー」
よしよし、支援者達の今日の活動も完璧だな、と思っていると1つの投稿が目にとまった。
『ウチの部下が総理大臣目指してるらしいwwwwwwまじでwww猿の虹渡りwwwwww』
な、なんたる僥倖!!!
「おい、秘書!このアカウント絶対大臣だ!特定して証拠を掴め!!逃がすなよ!追い詰めてお仕置きだ!」
「お仕置きって何するんですか?ビンタとかですか?」
「バカ!それじゃあ文字通りの美人の平手打ちじゃねぇか!」
そんなんじゃないんだよ!
そんなんじゃなくてこれを契機に大臣を失脚させて僕が大臣になって内閣総理大臣への足がかりにするんだよ!!
「このことわざを知ってるのは俺を入れて4人しかいないんだ。スクショ撮ったし、大臣に、直談判行くか?この暴言をバラされたくなかったら辞任しろってな!」
秘書は髪の毛をいじりながら言った。
「やだ、副大臣。それ、太陽に火矢ですよ?」
閲覧ありがとうございます。
変な名前が好きです。