プロローグ
プロローグは短めです。
大広間に響く足音。
青白い顔をした黒ずくめの男がケープコートを揺らしながら胸に手を当てて頭を下げた。
玉座に座る頭を下げられた黒髪の青年は赤い目をゆっくり開いた。
「魔王様。どうやら人間共が聖女召喚を行うようです」
黒ずくめの男は頭を下げながら報告した。
「聖女召喚?今の人間共に出来るとは思えないが…」
以前聖女が召喚されたのは一万年前の話だ。
当時は大陸が安定しておらず、その代の魔王と女神が陸地の奪い合いをしていた。
所謂『神々の戦国時代』だ。
その時代に女神は聖女を召喚し魔族は地底へと追いやられた。
しかしそれ以降女神は姿を消し、聖女が召喚される事もなくなったはずだが…。
女神が蘇った?
いや。そんな気配はしない。
人間共。一体何を考えている…。
「如何なされますか?」
もしこの話が本当なら捨て置くわけにはいかない。
俺は立ち上がると背中から漆黒の翼を出した。
「様子を見に行く」
黒ずくめの男は慌てた。
「御自ら行かれずとも我々に命じて下されば…」
「もし本当に聖女が召喚されたら相手出来るのは俺しかいない。力の無い内に叩く」
俺は翼を羽ばたかせ宙に浮いた。
「しばらく城を空ける。後の事は頼んだぞ」
黒ずくめの男は飛び去る主に再び頭を下げ見送るのだった。
読んで頂きありがとうございます。