『神との面談』当日
私の1歳になる誕生日当日、あれよあれよという間に神殿へ連れて行かれ祭壇の所で高い高いのポーズで掲げられる私。気分はライ〇ンキ〇グのあのシーンかな。
今私の目の前にあるのは白亜の男女の像である。夫妻神の神殿と言うのだから彼らの像で間違いないだろう。
そんな事をボーッと考えてると、私を高い高いしている司祭さんが、祝詞っぽい言葉を紡いでいた。私はただ聞いていただけだったのだが、途中から周りの風景がボヤけ目の前の像達が現実味を帯び始めてきた事で私は気付いた。
「ルビディアの娘が遂に1歳になったのね~。可愛らしい女の子だわ。」
目の前に居たハズの夫婦神の像が動き出した事に。
「ふむ、これはまた興味深い。この子は久し振りの【迷い子】だね、いらっしゃい我等が治める世界へ」
「へ?迷い子?なんの事??」
いきなりの事で気が動転していた私は気が付かなかった、普通に喋れてる事に。
「【迷い子】とは、この世界とは違う世界で生まれ育った魂がこの世界の人間として転生した存在の事を言うのよ。ああ、かわいい・・・」
そう言いながらイヴリース様は私の頭を撫で続けていた。
「なぜ、どうして」
光のなくなったジト目で思わず呟いてしまった。
「君の元居た世界の神話だと、ギリシア神話のハデスとペルセポネを知ってるかな?」
ハデスとペルセポネ、ギリシア神話ではとても有名な冥府の神々だ。学生の時ギリシア神話とかにハマって色々調べたの思い出した。私が好きなギリシア神話の神は月の女神アルテミスだ。
「なんでそのハデス様とペルセポネ様が?」
「我々の核を成すもの、それが地球という星のギリシア神話のハデスとペルセポネだ。地球では物語として根付いてはいるんだけど、神として存在する為の信仰力が足りなくてね。こちらの神も兼任してるのさ」
「は、はぁ」
思わず生返事をした、帰ってきた答えが意外すぎて。つまりは、元居た世界で神様やってた人達である。なんでかこんな世界の神様兼任で。
「難しい話は省くとして、何故こちらで地球の魂が転生出来るかと言うと、我々の核の力にあたる冥府の力が不慮の事故や災害により身体が死に、選ばれた魂が掬われこの世界に連れられてくるのだ。その魂が産まれそうな身体をみつけ混ざり合い、その身体で生を受けこの世界で人生を歩んでいくのだ」
聞いてもいないのにつらつらと異世界転生の仕組みを教えてくれた。なんとなく聞いてただけだけど気になった事があったので聞いてみた。
「じゃあこの身体には元々の魂の持ち主が居たってこと?」
「そこら辺は心配しなくても良いわ。元の持ち主だった魂は死産で産まれるはずの運命だったの。それをこの世界を発展させてくれそうな身体を失った地球の魂に宿ってもらって、この世界の文明を緩やかに進ませてもらってるのよ。・・・ああ、かわいい」
サクッとアヴェム様の説明の補填にイヴリース様が付け加えてくれたけど相も変わらずかわいいかわいい言いながら私の頭を撫で続けていた。どんだけだよ。
「まあ、突然見知らぬ世界に前世の記憶を持ったまま転生して放置するのも可哀想だからね。この世界の神殿に【神との面談】というイベントを設けさせて、異世界転生をしてきた人間を見つけ出しこの世界でどう生きたいかアンケートを取ってるんだよ。」
「は、はぁ・・・」
神様からの突然の交渉に思わず呆然としてしまったが、思いのほかこの世界での人生の福利厚生は悪くないのかもしれない。むしろ、前世で死ぬ原因になった会社がブラック過ぎたのかもだけど。
イヴリース様基本的にかわいいしか言ってない件