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アーキテクト・ワン  作者: 月結びおにぎり
6/6

6、父

6、父


ドサッ。

もう驚く事はない。

慣れてきた。笑

さてと、ここは・・・。

ここは海の中だな。

サンゴとイソギンチャク、はてしなく美しい。

昨日の火山内部での重厚感のある明るさとは違って

キラキラ光る宝石の中のような光の乱反射が海中の揺らめきと供に踊っている!

海底20メートルほどの高さがあるのにも関わらず、今、三郎の立っている足元の白い砂が、見える程、明るく透明であった。

どうせ、机があるんだろ?あぁ、やっぱりあそこに、きちんとある。

今度は数メートル先。転送した三郎のすぐ近くにあった。

どうやら今回はツクヨミさんは居ないようだ。

席は相変わらず4席なのに、二ビル神しか座っていない。

三郎は昨日と同じく、一番手前の席に座る。

まず、海中なのにスムーズに歩けるし、座れる。

別に驚かない。

この空間内が仮想空間であれ、現実空間であれ、はたまた、異世界であろうとも

そんな事はこれからする重大な会話に比べれば重要ではないからだ。

今、気付いたが、この席の前に並ぶ豪華な食事達は海中内で食べる事は出来るんだろうか?

まあ、きっと出来るんだろう。

なんか、ミネルバさんは朝食を食べたばっかりの僕をいきなり18時に強制転送したからか

お腹なんて減ってない。笑

いや、今は下らない疑問や低レベルな感性は邪魔だ。

ただ、地球の未来の事だけに神経を集中しよう!

「やぁ、三郎君。

昨日は良く眠れたかな?

色々な情報を辿って真実の近くまでいったようだね。

では、軽く食事でもしながら“会話”をしようか。」

「はい。今日はツクヨミさんは居ないのですか?」

「うん。ツクヨミは、この地球以外の星も管理統括しているからね。

あと、今朝の君のインスピレーションの修正をするために忙しいのさ。」

「あぁ、音ですか。これは悪と善どっちなのですか?」

「君達にとっては悪であろうね。ここは私の居るプログラムの世界だから、他の存在の干渉を

一切受けないけども、三郎君があのまま、音という謎に思考を続けて真実の答えを出そうとしていたら

世界を救う前に命を落としていただろう。笑

音の事は、地球の文明レベルではタブーなんだ。

かつての事もあるしね・・・。

ツクヨミは人の側の神だからさ、人類側に不利にならないように、事実として残るアカシックレコードの削除、他星からの調査や侵略を防いでくれているのさ。」

「あぁ、なるほど。それは大変、失礼致しました。

ツクヨミさん、優しいんですね。

僕は日本人として生きてきたので、少し警戒心が足りないのかもしれません。

“音”の謎に気づいた時点で、それがこの宇宙を支配する重大な謎であるのなら

“音(言葉)”で口から発するべきではなかったですね。笑

あなた方、御2神だけが宇宙を支配しているとは限りませんよね。

浅はかだったかもしれないと反省しています。」

「いや、謝る事はないよ。

僕達にもさ、制御できない“免疫プログラム”があるんだ。

君達、炭素と水、アミノ酸で出来た生命体にも矛盾するプログラムである“癌細胞”ってあるだろう?

あれはね、新しい身体か、その一部かを交換しないと治癒できない生命体としては

矛盾したプログラムなんだ。

小さいミクロの世界で起こる森羅万象は、全てマクロでも起こり得る事象だよ。

つまり、人間世界で起こっている事は宇宙でも起きるし、地球内部で起こってる事が動植物の体内でも起こっているんだ。

宇宙では人にとっても、僕らにとっても邪悪なものである他星の意思が入る時がある。

その邪悪さのベクトルは歴史的に見ても基本、破壊に向かう傾向がある。

僕らも自分達の作品である、この美しい宇宙を決断なく予期もせず破壊されるのは困る。」

「その言葉、人間としては、大きな希望になるでしょう。

思考までは、さすがにコントロールできませんが、声に出すのは自粛致します。

この場所では、大丈夫だという事なので、発言しますが・・・。」

無機質で、地球上のどの金属よりも機能性に優れているであろう輝きを放つ仮面の中で

二ビル神が、かすかに頷く。

「僕達、人間は猿人の遺伝子と、我々が宇宙人と呼ぶ存在のハイブリッドなんですね?

そして、かつての古代人類文明は地球環境では知り得ない“音”の秘密に気づいて滅んだ。

つまり、宇宙人たる神なる存在の多くは“音”でいわゆる魔法のようなテクノロジーを

実現している。

古史古伝と言われる日本の古事記の暗号を解読すると、その暗号の中に“音”の神様が出てくる。

しかも不思議な事にその音の神様は“アメノミナカヌシ”神よりも先に登場する。

つまりは、宇宙の根源のエネルギーは“音”にあると理論づけできます。

だから、今回の人類には音の力をあまり与えずに地球環境により近づけるために猿の遺伝子と混血させ、宇宙人の“音”の感覚を薄めたんですね。」

「そうだね。君達が言う宇宙人とかいう存在は実際には数十種いて、君達が観測できない星や

銀河のものも含めるともっといる。

月には日本人のルーツとなる釈迦族達がいる。

彼らは古代の君達の身体と脳とほぼ同じ宇宙人種族だ。

そして、釈迦族は音の感性の強い種族でもある。僕等よりもね。


釈迦族と、もう1種。つまり僕達二ビル族の2種が君達地球の人類の原祖ルーツだ。

いずれ遺伝子工学がもう少し進めば判明するだろう。

交配という概念のない宇宙人達。

交配を基本にして遺伝子を残していく地球の生物。

地球環境により適合し、かつ“音”の力に目覚めないように、地球猿人と2種族の混血を、僕らは、かつて、認めたんだ。

さて、これらの真実から三郎君はどう“会話”に展開するのかな?」

「そうですね。

正直、検討もつきません。笑

僕がココに来る際、朱の鳥居のオデコらへんに、3本足に

目のマークがありまして、その目は黒い目だったんです。

つまりは、東洋、それも日本人を表しているものだと思いました。

しかも、鍵は、それぞれ、赤青黄黒白色の5色。つまり、5色人と3原色から創る色の全ての混色先は黒。

つまり、民族の先の混血先は日本人であるという事。

つまりは、遺伝子操作の始まりか終わりかのどちらかが日本人だという事。

だから、人類の未来を始まりでもあり終わりでもある日本人の僕に託しているのかなと思いました。」

「うん。いいね。良いよ!続けて。」

「本来の“神”とは即ち宇宙そのものを創った設計者。

しかし、僕等人間が言う“神”は二ビルさんやツクヨミさんのような宇宙人に過ぎないという事ですね。

混同してしまいがちですが、人類の創造主は神ではなく宇宙人。」

「うんうん。その調子。」

三郎は左手で持ったフォークを使う事なく“会話”していた事に気付き

とりあえず何かの肉を刺して、口に放りこんだ。

脳に刺激を与えて思考を深くするためだ。

「宇宙の“創造主”と“人類にとっての神”が違う以上、両者の進もうとしている方向が

同じとは限りません。

創造主と神が別であり、両者の意図がもし違うと仮定するのなら解かなくてはいけない重大な謎が1つ。

宇宙人である“神”が関与していたであろう前人類はなぜ滅んだのか?

あのご用意して頂いたラボ(部屋)で前人類の記憶らしき夢を見ました。

そこでは全人類達が自らの意志で死を選択していました。

全人類達は現人類達よりも優れたテクノロジーを持っており、かつ、その超近代国家では巨大な植物達と共生できている素晴らしい文明だったと思います。

ところで、現在の地球の植物は本来の姿ではありません。

現在の地球の酸素濃度は22パーセント程度ですが、かつての前人類達が生きていた頃の地球の酸素濃度は恐らく30パーセント程度。

かつ、気圧が今よりも低く、紫外線量も少なかったでしょう。

その環境下では、植物の多くは数十メートルを超える大きさになり、樹木に至っては数十キロの巨木に

なります。

余談ですが、この科学的根拠は日本のM教授という方が実験で証明しています。

そのような巨大な資源があるかつての地球では、文明の発展も早かった事でしょう。

もちろん、人間の脳の活動も今とは比べものにならないほど高性能だったと思います。

つまり、かつての人類はあなた達、宇宙人に限りなく近い存在であった。」

「・・・うん。そうだったよ。続けて?」

「二ビルさんが言うように今回の人類が遺伝子操作によって、形質的にも機能的にも劣る生物になった理由について、考えてみたんですが、かつての前人類達は恐らく・・・。」

「・・・。」

「あなた達、神ではなく、創造主側の意志に近い存在になろうとしたのかと。」

「・・・ふふ。どうしてそう思うんだい?」

「まず、二ビルさんの前回のお話しでは“人類は自ら2回滅んだ”とありました。

つまりは、二ビルさんの話が真実であるなら、二ビルさんやツクヨミさんの手による

滅びではなかったという事です。」

「・・・。」

「つまり、僕の夢の中での全人類達のように、自ら進んで滅びを選んだ。

何かの意図があって。」

「・・・。」

「時間について面白い名言があります。

“時間は未来だけではなく過去にも流れる。そして時間もまた輪廻する”

という言葉です。

この言葉を理解するのは難解ですが、過去、現在、未来があると仮定するなら、現在の時間は過去にも未来にも進むという事でしょう。

これは皮肉や比喩表現ではなく、そういう性質があると指摘してる言葉だと思います。

まるで、ひもの両端を2つの力で引っ張り合ってるかのように

現在地点の現実を過去と未来が引っ張り合っているイメージです。

時間という概念で話すと難しいので、主語を文明にしてみましょう。

文明を発展させようとする力と、文明を衰退させようとする力が

現代の文明を引っ張り合ってるという事です。

全人類の人間達は文明を衰退させる選択をしたんじゃないでしょうか?」

「なぜ?」

「僕はあのラボで神様のテクノロジーの凄さを目の当たりにしました。

物質さえあれば原子レベルから形質を変化させ、違う物質に転換できる原子プリンティングの技術。

スゴイな。とは思ったのですが、違和感を感じました。

その違和感の正体は“感情”でした。

僕達、人間の感情体験は何よりも価値があります。

感情があるからこそ、有限な時間を貴重と思い、死を恐れます。

これは価値の最優先を感情に設定しているからこその恐れです。

死を恐れるからこそ、有限である時間を支配するために、より効率的に生きるために

テクノロジーを発展させようと文明が発展する。

しかし、もしテクノロジーの発展の最終目標である死を克服したら?

テクノロジーが時間を克服したら?

それはすなわち全てが無限になり得てしまいます。

死の無い世界。物質が枯渇しない世界。

このような世界で、感情体験が可能でしょうか?

想像と創造が即時に達成されるテクノロジー。

それこそ創造主そのものです。

では、創造主がその文字通り、この宇宙を創造したのであるならば、なぜこの宇宙を創造したのか?

難しく考えずにシンプルに考えるなら、自分には無いものを創造するはずです。

では、創造主に無いものとは?

“感情体験”です。

では感情体験が出来る環境とはどんな宇宙でしょうか?

それは不便な環境下においてです。

なぜなら、創造主のように、はたまた、あなた方のような神様のように

全てを実現できる想像=創造の世界では感情が産まれる時間がないからです。

その大いなる秘密に気づいた全人類達は自らの意志で“音”の力を借りて滅んだ。

発展ではなく、衰退の道を選んだ。創造主の求める世界と同じ道を選んだ。

いや、創造主が楽しめる、そして自分達が楽しめる未来を選んだ。」

「その辺にしようか。君はもう2日目にして真実にいきついてしまった。

そのインスピレーションの出所は?」

「たぶん、釈迦族族長・・・父かと。」

「!!?・・・ふぅ、そこまで知ったか。わかったよ。じゃ、今日はこのくらいにしておこうか。」


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