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生徒会パーティー

 そして、それぞれの想いを抱えた生徒会パーティーは始まった。

 当初から予定した通り白制服を着た私達は、先に会場へ入り舞台裏で待機していた。

 だから、エルヴィスがエスコートをした相手はどなたなのかは知らない。


(目を背けていることと同じなのかもしれないけれど……、でも、私にはまだやるべきことがある)


 まずはそれを終えてから、彼と向き合うことにした。

 

(だから、見ていて)


 そっと“彼”の名前を口にすれば、わぁっと歓声が上がる。


「ミシェル、出番よ」

「えぇ」


 レティーの言葉に私は力強く頷くと、正真正銘、最後の仕事をこなすため、眩しいほどに照らされている壇上へと上がった。





 旧生徒会から新生徒会への橋渡しの舞台を終え、私達は熱気溢れる会場の外へと出た。


「あー、これで本当に白制服とはお別れかあ」

「そうね。 何だか肩の荷が降りてほっとしたような、でもやっぱり寂しいような……、複雑な気持ちね」


 レイモンドとレティーの言葉に私は頷けば、隣にいたニールが口を開いた。


「でもこれで、間違いなく私達の思いは次の生徒会に託さた。 あのメンバーなら大丈夫だと、そう思います」

「! あら、ニールにしては良いこと言うじゃない」

「……それは貶しているんですか」


 ニールとレティーのやりとりに思わずクスクスと笑ってから言った。


「そうね、私もニールの言う通りだと思うわ。

 確かに、生徒会としての仕事は終わってしまったけれど、私達の役目が全て終わったわけではない。

 私達は、彼らが作っていく新しい生徒会の形というものを、この学園の一生徒として卒業するまで見守るという使命がある。

 私達が先輩方から繋いできた生徒会のバトンがそうして繋がっていくと思うとほら、素敵だと思わない?」


 そう笑みを浮かべて言えば。

 レティーはうるうると目に涙を浮かべ、声をあげて泣き出した。


「え、あ、レティー!? な、涙を拭いて、ほら、まだパーティーは始まったばかりよ」

「っ、だって! ミシェルがそういうこと言うからぁ……!」

「そうだよ、会長。 そんなこと言われたら、堪えていたのに涙が止まらなくなっちゃうよ……」


 レイモンドまでそう言って涙を溢すのを見て、ニールが苦笑いを浮かべ言った。


「会長の言葉だからこそ、一言一言が重いということでしょう。

 ……お疲れさまでした」

「! ニール……」


 その言葉が、心にグッと来て。

 私もツンと目頭が熱くなりながら首を振って言った。


「っ、こちらこそ。 皆、お疲れ様でした」


 そう言って、四人で笑いあったのだった。





 生徒会として過ごした時間を終えた私達は、一旦そこで別れを告げた。

 それぞれがパーティーに参加するための準備をするからである。


(……そう、私も)


 ギュッと胸の前で手を握り、コンコンとノックをして部屋に入れば、そこには私の侍女であるメイが朗らかな笑みを浮かべて立っていた。 そして、私に近づいてくるとお辞儀をして言った。


「長期に渡るお役目、お疲れ様でした。 ミシェル様」

「! ふふ、ありがとう、メイ」


 メイの温かな言葉に、知らず知らずのうちに緊張から強張っていた体からふっと力が抜ける。


「最後のお仕事はどうでしたか」

「とても緊張したわ。 白制服を手渡す時に手が震えないか心配だったくらい」

「えぇっ、お嬢様でも緊張することってあるんですか!?」

「あら、そんなのいつものことよ。 人前に何度出ても、緊張感は慣れるものではないわ」

「そういうものなんですねえ」


 そんな会話をしながら、メイは私の髪を丁寧に櫛で梳かしてくれる。

 その姿を鏡越しに見ながら言葉をかけた。


「待たせてしまってごめんなさいね。

 しかも、私の準備を貴女一人に手伝わせてしまって……」

「いえいえ! お嬢様のためなら私、全力でお手伝いさせて頂きます! それに、お嬢様のお陰でこうして学園の空気を吸うことができて嬉しいです」

「! そう」


(メイも私と同じ歳なのよね。 メイもこの学園にいたらきっと、もっと楽しかったのだろうな)


 そんなことを考えながら、彼女の手元を見ていると、慣れた手つきで私の髪を結いていってくれている。


(……本当に、メイには沢山お世話になりっぱなしだわ)


 改めてそう思っていると、彼女は「出来ました!」と嬉しそうに笑みを浮かべて言った。


「今日はこんな感じでどうですか?」

「えぇ、とても素敵ね。 ありがとう、メイ」

「はい! ……ではいよいよ、あれの出番ですね!!」


 メイは声を弾ませ、意気揚々としながら私の手を引いたのだった。





(エルヴィス視点)


「ミシェル、何処へ行ったんだろう……」


 彼女の最後の仕事を見届け、その後に話をしようと思っていたら、生徒会と共にパーティー会場を後にしたらしく、何処を探しても姿が見当たらなくて。


(生徒会のメンバーと一緒にいるのか? 今日は会えないということはあるのか……)


 そう悶々としながらも廊下を探し歩いていれば、ばったりと探していなかった人物と遭遇してしまう。


「……いや、どうして此処に君がいるんだ」

「あら、探しに来たに決まっているでしょう」


 そう言って嫌味なくらい優雅に笑う幼馴染もとい腐れ縁であるエマに言葉を返した。


「僕は君のことは探していない。 放っておいてくれないか」

「放っておくわけがないでしょう? こんなに面白いこと、この私が放って置くとでも?」


 何が面白いんだか分からないが、笑みを浮かべる彼女に対し嫌悪感を抱き口にする。


「大体、どうしてそこまで僕達に関わろうとするんだ。 君には毛頭興味がないと言っただろう」

「そんなことを言って良いのかしら? 

 貴方の国の王妃殿下がそれを望んでいるというのに」

「っ、あの人は僕とは一切関係ない!!」


 思ったよりも厳しい言葉が出て、流石の彼女も驚いたように目を見開く。

 そんな自分の言葉にハッとして、目を逸らしたその視線の先で、僕は目を奪われる。


「? どうし……、!」


 僕の様子が気になったのか、エマもまた首を傾げ視線を僕と同じ方向に移し、そして目を見開いた。

 僕はみっともなくも、少し震える声で視線の先にいた人物の名を口にした。


「……ミシェル?」


 そう、僕の目の前にいたのは見紛うことのない、先程見ていた白制服とは打って変わった姿……、淡い色のパーティー用のドレスを身に纏い、いつもとは違う雰囲気を醸し出す彼女の姿があったのだった。


いつもお読み頂きありがとうございます。

そして、この度作者の連載していた小説、『その政略結婚、謹んでお受け致します。〜二度目の人生では絶対に〜』の書籍化&コミカライズが決定致しました…!

応援してくださっている皆様方のお陰です。本当にありがとうございます!

情報はTwitterや活動報告にて随時更新していく予定ですので、お手隙の際にチェックして頂けたらとても嬉しく思います。

宜しくお願い致します。

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