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捕縛部隊突入

挿絵(By みてみん)


 そこはその国家の中枢機関が集まっている領域だった。

 フェンデリオル国、中央首都オルレア。その中心地にその建物はあった。

 

 フェンデリオル正規軍中央本部官舎外郭。その中にある重要部署の1つが地方査察審議部である。

 中央に対して、3つ存在する地方司令部。その地方司令部の行動を監視し、時には活動状況を調べ、必要に応じて処断の必要性を判断する部署だ。大小様々な地方領の状況調査や内偵や査察と言った職務も統括している。

 その活動内容の性質から、他の部署への影響力は恐ろしく高く、特に地方にて昇進を目指して軍務に励む者にとっては自らの人生を差配してしまう恐ろしい部署として悪名が轟いていた。

 

 正規軍中央本部官舎外郭、その2階の一角に地方査察審議部部長の執務室がある。

 時刻は夜7時すでに日も沈んでいた時刻だ。その日は首都オルレアの空は重く曇っていて、月明かりすら出ていない。官舎内の乾いた空気が独特の匂いを漂わせていた。

 そこに正規軍の将校と将兵たちが押しかけてきたのだ。

 

 官舎内が騒然となる中、先頭に1人の将軍と1名の巡回警備部隊の大隊長が立っている。その後ろには2列縦隊となって十名の警備部隊隊員が控えている。将軍を除く残りの人員の所属部署は軍警察、正規軍内部の治安を預かる部署の者たちだ。

 彼らは整然と並んだまま、査察審議部の執務室を目指して進む。2階へと上がり大廊下を歩き、角を一度曲がって少し行くと両開きの扉がある。その入口扉の上にはこう記してある。

 

――地方査察審議部・部長執務室――


 その部屋の主はあのモルカッツだ。将軍と大隊長が歩みを止め、10名の隊員が扉の前へと並ぶ。2人の隊員が扉の取っ手に手をかけて振り向くと大隊長へと視線を向けてきた。

 

「開けろ」


 そう命じられてうなずくとその若い隊員は他の隊員へも視線で指示を出して2人で一斉に扉を開けた。

 

――ガッ!――


 金具の音が響いて勢いよく扉が左右に開く。それと同時に牙剣と小銃で武装した警備部隊隊員が一斉に執務室へとなだれ込んだ。

 中では政務机の席に座したモルカッツが、地方査察審議部に寄せられた報告書を眺めているところだった。彼の傍らには3名の女性秘書が控えている。いずれも必要のない無駄な人員だった。

 突然なだれ込んできた男たちに向けてモルカッツは叫んだ。

 

「何だお前ら! 何をしにきた」


 そして彼らからの声も聞かずに立ち上がってモルカッツは更に言う。

 

「ここをどこだと思っている! 地方査察審議部だぞ! 警備隊員ごときが勝手に入っていい場所ではないぞ!」


 それがさも自らに与えられた正当性であるかのような言いっぷりだった。だがそれに対して反論する声があがる。

 

「黙れ! 逆臣! ここはお前ごときが居ていい場所ではない!」


 老齢だが張りと力のある声。現場の第一線で活躍し続けてきたベテランの声質だった。後ろから進み出てきた彼は即座に自らの役職と姓名を名乗った。

 

「オルレア中央首都、第1中央街区警備部隊大隊長! リザラム・マオ・レオカークである!」


 濃紺のボタンジャケット姿の軍服に目深にかぶった警帽、丁寧に手入れされた口ひげが印象的だった。リザラムは懐の中から封書を取り出すとその中から書類を一枚取り出した。それを両手で広げるとモルカッツに向けて尽きつける。

 

「モルカッツ・ユフ・アルガルド! これなるは正規軍中央本部軍警察本部からの〝逮捕状〟である! 本日夕刻4時を持って貴様の全職責は免職となり、職務上の権限は同時刻を持って剥奪となる! さらには証拠保全のために貴様の私有財産の全ては国家管理となり、一切の財産処分と譲渡は禁止される。なお3親等内の親族には当面の間監視がつけられ軍警察による取り調べも行われる! 一切の弁明はここでは受け入れない! 身柄を拘束し軍警察留置場において軍法裁判が結審するまで勾留処分となる!」


 リザラムの告げる処分内容にモルカッツは愕然としていた。

 

「た、逮捕だと?」


 驚きと焦り、そして多大な不安がその顔にはにじみ出ていた。顔面も蒼白、血の気の引いた風貌で今にも崩れ落ちそうだった。無駄な抵抗と知りつつもモルカッツは否定の声を上げた。

 

「う、嘘だ! なにかの間違いだ!」


 ヒステリックにあげられる声をやんわりと否定する声がかけられた。

 

「間違いではない。モルカッツ候」


 その声がすると同時に警備部隊隊員の列が左右に割れて奥から1人の長身の男性が現れた。

 フェンデリオル正規軍の鉄色の軍服に身を包んだ長身の人物、ブロンド髪の屈強な偉丈夫、歳の頃は50を超えるだろうか。地位あるものとして最も勢いのある年齢の人物だ。

 正規軍中央本部に身を置くものなら誰もが知っているその名をモルカッツはつぶやく。

 

「ソ、ソルシオン将軍閣下――」

「いかにも、私がソルシオン・ハルト・フォルトマイヤーだ」


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