表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
197/484

ダルムの深謀遠慮

■中翼正面、部隊長ギダルム・ジーバス――



 通信師の少女が部隊長ギダルムに告げる。


「ルスト指揮官より打伝! 全速後退!」


 ダルムに付いている通信師の少女は16歳ほどで比較的体のガッチリした子だった。レザーヘルムと防刃外套マントを羽織り、最前線での激しい動きに積極的に付いてきている。意外だったのは白兵戦闘の心得があったようで、木製ではあるもの戦杖を巧みに使って時折迫ってくる敵の攻撃を巧みにかわしていた。

 その彼女がダルムの背後にしっかりとついて声を送ってくる。

 

「中翼を左右に分かれる形で離れるとともに、全速で後退するとのこと」

「全速後退だと?」

「はい!」


 ほんの僅か思案したダルムだったが、すぐに判断を下す。

 

「了解と伝えろ!」

「了解、打伝します!」


 そして、中翼部隊に指示をくだす。ルストの裏の意図をくんで考えた特殊な指示を――

 

「聞け! 全速後退! 最寄りの右左翼前衛の後方へと回り込め! 一旦さがるぞ!」


 それは敵であるトルネデアスに聞かれることを前提とした指示だった。そして、その指示が裏の意図をはらんでいることは自軍の者であれば即座にわかるはずだった。

 

「全速後退! 引けぇ!!」

「引くぞぉ!」


 職業傭兵が、正規軍人兵が、声を掛け合いながら速やかに引いていく。そして、ルストが意図したように、中翼部隊は左右に割れながら下がっていったのだ。

 ダルムは周囲の動きを視認しながら自らも下がり始める。手にしていた戦鎚を奮い、追いすがってくるトルネデアス兵をいなしながら下がる。直ぐ側の通信師の少女にも大声で告げる。

 

「下がるぞ! ここに居ては危険だ!」

「はい!」


 機を見てその少女も一気に走り出した。その周囲には若い傭兵が数人寄り添い、守りを固めていた。それを見てダルムは言う。

 

「よし、あっちは大丈夫だな」


 そう漏らしながら自軍中翼のもう一人の発令役であるエルセイ・クワル少佐の姿を探す。すると彼も中翼右側の傭兵や正規兵に対して指示を下しているところだった。

 不意にエルセイ少佐と視線が合うがダルムは頷いてみせる。すると少佐も頷き返してくる。彼もルスト指揮官からの意図を理解したのだろう。彼の号令と同時に中翼部隊の右側の者たちが一斉に下がり始めているのがわかる。そして、中翼部隊の者たちは、まるで賢者の呼び声により海が断ち割れたかのように、徐々に徐々に左右へと別れていく。

 だが、ダルムは見つけた。

 自らの視線の先に予想だにしないものを。

 

「ルスト!」


 彼の視線の先には敵に対して自らを隠すことなく左右へ問われる自軍の動きのどちらにも隠れずに陣形中央で堂々と待ち構えている戦象とその背に乗っているルストたちの姿だった。

 思わず驚きの声が漏れるが、今この場で急いてどうなるものではない。

 不安を押し殺しながら、彼もまた後方へと下っていく。突撃してきたトルネデアス兵をさらなる深みへと引き込むために。

 今はただ、指揮官であるルストの意図が目論見通りに成功することを祈るのみだった。


お願い:☆☆☆☆☆を★★★★★にして、ルストたちの戦いを応援してください!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
■新シリーズの■
【旋風のルスト正当続編『新・旋風のルスト 英傑令嬢の特級傭兵ライフと、無頼英傑たちの国際精術戦線』】
⬇画像クリックで移動できます
新・旋風のルスト<

【本編リンク】

第1部:西方国境戦記・ワルアイユ編

第2部:西方国境戦記・オルレア編

■旋風のルスト:関連作品リンク■


■第2部の後のルストと仲間たちの〝それぞれの物語〟■
【旋風のルスト・アフターストーリー『それぞれの旅路』】


旋風のルスト外伝
『旋風のルスト・2次創作コラボ外伝シリーズ』連作集

▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒■いつも本作をごらんいただきありがとうございます
▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒
【幻想検索 tentatively】
ツギクルバナー 小説家になろうSNSシェアツール
小説家になろうアンテナ&ランキング
fyhke38t8miu4wta20ex5h9ffbug_ltw_b4_2s_1

Rankings & Tools
sinoobi.com

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ