そしてまた春が来た!
そして更に三ヶ月経ち、春になった。
炬燵を片付けるときの、楓と紅葉のとても悲しそうな瞳に、後ろ髪を引かれたのもいい思い出だ。また冬になったら、出してやるからな。
というわけで、冬の間はひたすらモフモフして過ごして……居たわけでない!
夏休みの宿題は、確かに最終日にやっていたけれど、異世界保護猫活動はちゃんとしていたよ。
あれから何度か猫神様へコンタクトを取り、この世界の常識とか、衣装とか色々教えてもらいました。
行き交う馬車や、旅人の服装は見ていたけど一応確認のためね。
思っていた通り文明レベルはあまり高くない模様。内燃機関なんてものも、蒸気機関もなく中世ヨーロッパって感じ。
テンプレですよ、テンプレ! 美味しいよね?
『それ天ぷらじゃ』
聞こえてるんかい、猫神様!
そんなこんなでニャマゾン通販で中世っぽいコスプレ衣装をゲットして、それっぽい革の背負い袋を用意。
『チャックとか付いてるの、まずいじゃろ?』
という猫神さまの指摘も頂いて、金属金具程度にしておいた。
あと財布として首から架けられる、革のポーチみたいなの。
『ワシが選んでおいてなんじゃが、スニーカーもまずいのぉ』
靴に関しても、それっぽい革製のトレッキングシューズを購入した。靴底見られると、びっくりしそうだけど。
街まで歩くとそれなりに掛かってしまい、日帰りにしても余裕がなくなりそうだ。
「好みとしてはクロスに乗りたいけど、道路以外で乗りたくないから妥協だな」
ということで、高級マウンテンバイクを購入した。整地されてないから、クロスや、ロードはちょっと無理そうだしね。
返品可能だったので見た目で選び、実際乗ってみてを繰り返して決めました。まあすぐ決まったけど、サイズ的な問題があっただけなので。
パンク修理やタイヤ交換ぐらいなら、簡単に出来るので問題ない。ママチャリだとそうは行かないけどね。
初めて自転車を見た楓と紅葉はビックリして逃げていき、遠くから「シャー!」って威嚇してたけど、庭で試し乗りしているのを眺めているうちに、慣れてはくれたようだ。あまり近づいては来ないけど。
猫マップを確認してみたけど、半径五キロメートルの範囲であればセンサーとして機能するので人や馬車、まだ見たことがない魔物なども光点で表示してくれる。
実害がないのが青、害意があるもしくは危険な存在は赤で点灯する。
「範囲を最大にしても、赤点はもちろん、街みたいな反応も全くないな」
猫マップで確認しながら、馬車や人が近づいてきたら自転車収納して、歩けばいいだろう。
「帰りは街の外に家建てて、転移すればいいよね」
街に家を用意する必要がないことに気づいた。
最後に俺の体力だけど、若いって素晴らしいね、以上!
というわけで今日は異世界に来て、ちょうど一年経ちました。君たちを迎えて、ちょうど一年の記念日です。
子猫時代の面影はわずかに残ってはいるものの、身体は十分に大きくなり、大変だった階段の登り降りも、へっちゃらです。
やんちゃさんだけど、楓も少し大人しくなりました。二匹とも、もう立派な、大人な、美猫さんになりました。お父さん、絶対君たちを嫁には出さんからな!
お金はあるけど普段から贅沢してると健康によくないと思い、猫も自分も食生活は健康第一にしてたけど、今日ぐらいはいいよねってことで奮発しました。
高級和牛のステーキ焼いて、野菜もたっぷり! 旨い脂たっぷりの和牛も、たまには美味しいよね。心はおっさんだからあんまり脂キツいのは精神的に無理な気がしたけど、若い身体はいいね! がっつり食えるぜ。
美猫姉妹にも高級フードをプレゼント。あまり良いもの食べさせると、普段のフード食べてくれなくなりそう。
「今日はみんなが家族になった記念日だからな、特別だぞ!」
そう語りかけながら、お気に入りのお皿にフードをいれていくと、二匹は分かってるわよ! っと言わんばかりに軽くウニャっと鳴いてから、一心不乱に食べ始めた。
猫って人の言葉がある程度分かるって言う話だけど、この姉妹に関しては完全に理解しているんじゃないかと思うことが多々ある。
トイレの躾も、爪砥の場所とか、危ないこととかやっちゃダメなことなど、説明したら一発で理解してくれるので躾が楽だ。
そんな俺も何となくだが、二匹が求めていることが感じることが出来たりしている。これも異世界転生パワーだろうか。
まあ意思疏通がちゃんと出来るってことはいいことだ、幸せなことだ。
食事の片付けをして、ステーキの香りが残るリビングの換気のために窓を開け放ち、庭に二匹と一緒に寝転がって日向ぼっこだ。
お日様と姉妹の温もりを感じながら、しばらく昼寝しているとステーキの匂いが気になるのか、二匹が左右の手をそれぞれペロペロし始めて目が覚める。
俺は体を起こして懐もとい倉庫から、ペースト状の猫用おやつを二本取り出す。取り出した瞬間に、二匹は前足を俺の体に乗せて臨戦態勢だ。
袋を切って中身を少し押し出すと、前足で俺の手を掴みながら幸せそうな顔でペロペロし始める。罪な、おやつよのぉ。
食べ終わって、口周りを舌でペロリとひと舐めしてから、大きなアクビをして、二匹とも俺の横でまたお昼寝を始めた。
おやつの残骸を倉庫のゴミ箱にポイして、俺ももう一回お昼寝。ああ幸せすぎるぜ。
何か忘れてないかって? 明日でいいじゃないか、早起きして行ってくるよ猫神様!
お読みいただきありがとうございます