そして冬が訪れる
そして更に半年が過ぎた。最期に日本にいたのは秋だったけど、転生してきたとき、こっちは春だったのかな?
今は夏や、秋を通り越して、冬となりました。台風みたいな激しい嵐はなかったです。雨の多い時期はあったので、雨季はありそう。
遠くに見える森が色づくことはなかったので、樹木がきっと違うんだろうね。
こちらの冬は雪は降ることは降ったけど、ほんのり積もる程度。これが普通なのか少ないのかはわからないけど、過ごしやすい地域なんだと感じている。春までまだまだだから、実際どうなるかわからないけどね。
馬車や徒歩で移動してるってことは、そんなに高い文明レベルじゃなさそう。豪雪地帯とかだと流通完全に止まっちゃうだろうしね。
雪が少ないといっても、寒いものは寒い!
だが我々には炬燵という、力強い味方がいるのだ!
これさえあれば、一騎当千!
みかんもあるので、兵糧攻め対策もばっちりさ!
猫たちと言えば最近はお腹を投げ出すようにした、へそ天スタイルを新たに取得して、可愛さが更にパワーアップしてる。
あと前足ふみふみスキルも取得していて、もうボスのライフはゼロに近い。
冬毛になってモフモフ感も更に増加している。
長いしっぽがとても愛らしい。
柔らかピンクの肉球がすばらしい。
ああ、生きているって素晴らしい!
ピコーン
『ニャー』
ちょっと懐かしい音と共に、どこからともなく猫の鳴き声が響く。
楓と紅葉は耳を澄ませて瞳をぱっちりと開き、一点を見つめている。彼女たちには何か見えてるんだろうか。
二匹はそのあとニャーニャー鳴きながら、へそ天してしまった。
『久しぶりじゃのぉ、まあ元気なのは見ておったが、そっちの世界での生活はどうじゃ?』
猫神の代弁者であるお爺さんの声が続いて、響いてきた。
「最高です! モフモフです!」
『なら良いんじゃよ、猫たちも幸せそうでなりよりじゃ。それはそうと、転生して、そろそろ落ち着いてきた頃じゃろう? 他の保護猫のことも、そろそろ考えてやってくれんかのぉ』
ですよね、確かに放置していたという、自覚はあるんだが一応理由はある。
「考えてないことはないんですが、この子たちはまだ完全に成長しきってないので、放置して街にいくのも心配なんですよ」
これはまさしく本音だ。こんな大事な時期に放置するなんて出来ない。それが、地球で二人を保護できなかった理由でもある。
「春になればちょうど一年経ちますので、日帰りならなんとかなるかなって思ってるんですが」
『まあそれもそうじゃな、今の時期に移動するのも大変じゃろうて。
留守番に関しては街にマイホーム作れば良いぞ。マイフォーム同士であれば、猫部屋から転移できるからな』
マイホーム同士リンクするのかよ、ヘルプに書いておいてよ、大事なことだろ!
「転移できるんですか、マジですか」
『マジマジ、本気と書いてマジじゃぞ』
おっさんか! 俺、元おっさんだけど。
「転移機能は良いとして、そんな簡単に街で家とか買えるもんなんですか?」
『知らんけど? 買えるんじゃないんかのぉ。金ならあるんじゃろ? 金貨の山積み上げて、金貨入りの袋で頬っぺた殴ってやれば、イチコロじゃろ?』
いやいや金貨の袋で殴ったら、下手すると首折れますよ。頬骨折れますよ。別に意味でイチコロですよ。
「そんな簡単なものじゃないでしょう? あまり目立つと襲われたりしたら怖いですし」
『大丈夫じゃよ、お主らを襲おうなどすれば猫神様の祟……げふん、加護が発動するはずじゃし、問題はないぞ』
いま祟りって言ったよね、それやばい奴じゃ……
『悪意を持った時点でなんらかの警告があるじゃろうし、直接手を下そうものなら……』
「ものなら?」
『…………』
いや、なんか言えよ、お爺さん!
『まあそこまで行くことは稀じゃろうから、どっちにしろそんな者は、ロクな目には合わんよ。あまり気にせず軽~い気持ちで、どーんと行っちゃって大丈夫じゃよ』
「わかりました、とりあえずもう少し暖かくなったら、街へ行ってみようと思います」
『頼んだぞ! あとヘルプには書いておらんのじゃが、マイホームの倉庫はどこでも使えるぞ。購入なぞはマイホームでしか出来んが、購入済みの物は倉庫に入れておけば、どこでも取り出し自由じゃよ』
「マジか……」
『本気じゃよ。まあ内部は時間が止まっておるから、生き物は収納できないんじゃがの。うまく使えばよいじゃろ、というわけじゃよろしく頼むぞ!』
『ニャー』
最後に猫神様の鳴き声が響くと、楓と紅葉はへそ天やめて、またスヤスヤと眠りだした。
「あー、猫神様に服従の姿勢見せてたのね。まあ神様だしな仕方ないね」
そんなこんなでそろそろ本格的な活動をすることに備え、徐々に街へ行く準備を進めますか!
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