まずはマイホーム!?
肉球魔方陣に吸い込まれていった俺の魂が、次に目覚めたのは草原だった。
遠くに森も見えるが川は見当たらないな。まあ水なんかのインフラは、マイホームでなんとかなりそうだし問題ないか。
そして目の前には、左右に伸びる道のようなものがある。
ピコーン
『無事に転生できたようじゃな。年齢はそちらでの成人基準で、十五才になっておる。名前は好きに名乗るがよい。何か問題があればメニューから猫神コールすれば、繋がるはずじゃ』
「ありがとうございます」
再び『ピコーン』という音とともに、視界の右上にマップのようなものが表示された。
『今表示したのは猫マップじゃ。猫の癒しを求めているものが、肉球マークで表示されるようになっておる。オートマッピング機能付じゃが、肉球マークはある程度近づかなければ反応しないようになっておる』
今のところ反応はないな。
『目の前の道を、西に行けば街にたどり着く。この場所は安全じゃから、ここで家を建てるもよし、街に行ってもよし、好きに生きればよい。保護猫のことだけは、よろしく頼むぞ。ではな!』
「ありがとうございます!」
さて、新たな人生をどうすべきか……とりあえずモフりたいな。うん、モフろう!
スキルってどうやって使うんだろう、念じればいいかな? メニューから猫神コールとか言ってたし、メニューがあるのかな……あ、出てきた。
猫レーダーはオン、オフできるのか、とりあえず視界の邪魔だしオフにしておこう。あった、保護猫召還だ。えーっとヘルプが出たぞ。
≪ヘルプ≫
保護猫はマイホーム設定されている家に召還されます。先にマイホームを設定してください。譲渡する場合は肉球マークされている人物に接触して、スキルを実行してください
≪ヘルプ≫
先に家を建てろってことね。
「じゃあマイホームスキルを起動して……ヘルプが長い……音声チャットってなんだよ! 面倒だ、こういうのは実践あるのみ!」
とりあえず、オーソドックスな二階建ての四角い家を選択する。
「この範囲が家の大きさだろうし、道路は避けて、北側に設置してみるか」
半透明のブルーの枠が視線に応じて動くので、道路を避けて移動させる。
「で、配置場所はオッケー……」
『カスタマイズを開始しますか?』
必要ないからスルーしたら、家具の設置になる。手動と、自動を選べたから自動で配置。
「家を建ててるって気がしないな……。これで設定終わりか? このまま建てたら目立つぞ」
オプション設定に、不可視化と偽装があったので不可視化を選択した。これで大丈夫だろう。
決定ということで念じると『ニャー』と猫の鳴き声とともに、ピンク色の肉球魔方陣が展開され、三次元プリンターで製作されるように下から上へ、順に建物が出来上がっていく。
「一分で出来てしまった……これで一千五百万円か」
青い屋根に、白い壁、遂に手に入れた夢のマイホームだ!
さっそく中に入る。リビング、トイレ、洗面所と浴室に続く廊下を進み、リビングへ。
「広いし、明るいな。街道を見れるから、猫も飽きないだろ」
南向きのキッチン一体型のリビングなので解放感がある。テレビに、サラウンドシステム、ふかふかソファー。
「冷蔵庫に、炊飯器、オーブン付きガスコンロ、一通り揃ってるんだな。異世界に来た感じが全くしない!」
冷蔵庫から水を一本取り出し、ソファーで一息つく。
「あ、馬車が来た」
一頭の馬が牽く帆付きのシンプルな馬車が、街道を西へ進んでいくのを眺めているが、こちらに気づく様子はない。
「不可視化さんは、ちゃんと仕事してるね」
内心ちょっとドキドキしていたが、何事もなく通りすぎた馬車に安堵する。
建てるときにヘルプは飛ばしたが、気になるところをピックアップして読んでみる。
「水光熱費は無料って太っ腹だね。家具の移動は視線で……こんな感じか。倉庫に収納も出来るんだな」
実際にテレビを倉庫へ収納すると、スッと消えてしまった。取り出して再び配置。
「時間停止機能までついてる」
防犯機能は、立ち入り制限が細かく出来たので問題ない。現状は俺だけ入れる制限中。
「準備は整った!」
さあモフモフの時間だぁぁぁ!!!!
お読みいただきありがとうございます