お屋敷を改造しよう!
「では、今ソフィーさまが仰ったことをご用意できれば、お屋敷でちゃんと過ごして頂けますか? 今まで出来なかった貴族らしい教育も、しなければならないようですし、私も頑張ります」
「それはもちろん、ですが……」
トイレの件は流石に直球投げないから安心してください。
「領主さまへの提案としては、こうです。お風呂の用意で、いつも水汲みで大変な思いをしている使用人のために、水の出る魔法具がある、こちらでなるべく過ごしていた。領主さまの許可さえあれば、私が同じ設備をお屋敷に用意します。こんな感じです」
「用意できるのですか?」
「出来るか、出来ないかであれば、出来ます。さきほどソフィーさまが仰ったすべてを。必要なのは領主さまの許可だけです」
「わかりました、お父様にお時間をいただきましょう」
たぶん、執務放り投げて話を聞いてくれそうだけどね。
「メリッサ、お屋敷へ戻ります。戻り次第、お父様にお時間をいただくように伝えてください。ミカエル、帰りますよ~」
「にゃ~う」
ミカエルは為されるままにソフィーさまに抱っこされたので、そのままお屋敷へ戻ることとなった。
けど、その前にここのベッドと猫グッズ一式を、倉庫へ仕舞ってお屋敷へ移設できるようにしておいた。
ミカエルがすでにマーキングしちゃってるから、このまま持っていた方がいいだろう。ベッド本体はともかく、布団関係も同じものを持っていった方が落ち着くだろうしね。
そんなこんなでお屋敷に戻り、領主さまへお伺いをたてて待っていると、
「ソフィーお嬢様、旦那さまがお会いになるそうです」
程なくして執事のお爺さんがやってきた。というかほぼ待ってないんだけど、領主さま娘に甘々だね! タピオカドリンク並みの甘さだね!
「失礼致します、旦那さま、お嬢様とタケルさまをお連れ致しました」
お爺さん、ミカエルも忘れないでね。
「入りたまえ」
領主さま、声が嬉しそうですよ。
「領主さま、度々お時間をいただいて申し訳ございません」
「構わぬよ、こちらから頼んでおるのだ」
「ありがとうございます。それでお嬢様からの提案があるのですが、私からご説明させていただいて、よろしいでしょうか?」
「構わぬ、申せ」
領主さまとソフィーさまとの間で軽いアイコンタクトがあり、俺から話をする許可をもらったのでプレゼン開始だぜ!
「まず、一つはミカエルがあちらの部屋にある家具を気に入ってしまったたため、こちらへ家具などを移動させてほしいということです。これは実際問題簡単で、お話を聞いてすでに移動できる用意を整えております」
「にゃ~う」
もうちょっと待っててなミカエル。
「もうひとつ、こちらが重要なのですが、お屋敷にあるお風呂の改造です。綺麗好きのお嬢様ですが、お屋敷のお風呂に入るためには使用人たちに非常に苦労を掛ける必要があり、今まで目が見えず苦労を掛けさせていたことにも、気に病んでおられました」
「お嬢様が気に病む必要などございませんのに……」
執事のお爺さんが驚愕しているけど、実際に作業する使用人はどう思ってるかわからないからね。
「それで気兼ねなく風呂へは入れるあちらの部屋で、毎日過ごしていたと言うわけか」
「申し訳ございません、お父様、わたくしのわがままです」
綺麗好きっていうのは、いいことだと思うよ。
「わがままなのかも知れませんが、綺麗好きということは大切なことです。洗浄魔法があるから大きな問題にはなっておりませんが、現状この世界の風呂トイレ事情は洗浄魔法が万が一使えなくなった場合、大規模な疫病を発生させる可能性が非常に高いものです」
「疫病か……」
「実際のところ魔法が使えなくなるということはないのでしょうし、庶民すべての環境を改善するのは、なかなか難しいと思います」
さすがに街の建物を、ひとつひとつ作業するのはマイホーム機能があっても遠慮したい。設置するぐらいならいいけど、わざわざ建物の所有者に許可もらってとか無理!
「とりあえず、こちらのお屋敷と、使用人の皆様が住んでおられる敷地内の寮から始めてみませんか? 領主さまの許可と、数分だけ建物から全員出ていただければ、下準備はすぐに整います。下準備さえ終われば、すぐ建物に入って頂いて大丈夫です」
マイホーム化するときに、人や、動物が居るとダメっぽいんだよね。
「ほんの少し、下準備のお時間をいただければ、わたしが建てましたあの家にあるお風呂、トイレ、水の出る魔法具すべてご用意させていただきます。下準備のあと、水の出る魔法具は相談の上で、設置場所を指定して頂けます」
「タケル君が今まで成したことを見ておらねば、やはり到底信じられぬことではあるが、出来てしまうのであろうな……。して、費用は如何ほどになるか」
「費用というより魔力の問題となりますので、一級品の魔石ひとつあれば問題ございません」
この世界の動力代わりになっている魔物の核である魔石を購入して、換金したら購入金額が換金額とほぼ同等になった。一級品一個なら百万円程度になる。実際百万円じゃ赤字だろうけど、前回の報酬もあるから十分だ。
「その他、必要なものはないか?」
「ございません、今言った、領主さまの許可とほんの一時、建物からの退去、そして一級品の魔石ひとつだけご用意ください」
「よかろう、許可を出す。いつから動ける?」
「今すぐにでも……と言いたいところでございますが、執務や、使用人のみなさまのお仕事もございますでしょうし、明日の昼食後でいかがでしょうか? 魔石に関してはこちらも在庫がございますので、後日でも構いません」
「明日の昼食後だな、承知した! セバスチャン、使用人への通達は任せる。ソフィーもそれでよいか?」
「はい、お父様。ありがとうございます」
「では、その段取りでよろしくお願いします。あとはお嬢様の部屋へ家具を運ぶだけなのですが、流石にお嬢様のお部屋に入るのは失礼かと思いますので、どこか家具を出す場所を貸していただけますか?」
「ソフィーがいいのであれば、タケル君が部屋に入ることを禁ずることはない。別に部屋が必要であればセバスチャン、手配を頼む。では、私は執務へ戻る。タケル君さえよければ、夕食までゆっくりしていってくれたまえ」
楓と紅葉が待ってるので謹んで辞退致します! やることやったら、さっさと帰るよ俺は!
結局、ベッドや猫家具は俺が直接ソフィーさまの部屋に運ぶこととなった。いいのかソフィーさま! お部屋はとってもいい匂いがしました!
元々あったベッドは俺が持っていていいということに……いや、いや、いや、いや、ダメでしょ? ということでセカンドハウスと入れ換えることになった。
夕食まで引き留めようとする色々な誘惑を断ち切り、遅延戦闘を指示したしっとりクッキー約一個大隊と、試供品茶葉たちの犠牲により俺は無事、楓と紅葉の待つ本部まで撤退することが出来た。
マイホームヘ帰り、猫トイレの掃除とカリカリフードを補充して、自分のごはんも食べてリビングで寛ぐ。
せっかく作った猫家具を気に入ってくれるのはいいんだけど、最近、上の方ばかりに居るものだから、お父さんちょっと寂しいぞ……。
降りてくる気配がないのでお風呂に入って今日は寝るかな。
お風呂から上がって、リビングで風呂上がりのフルーツ牛乳をイッキ飲み!
そこに楓と紅葉の姿はない……二階かな?
猫部屋にもいない……寝室?
やあ、お二人さんこんばんわ。そこは俺のベッドなんですが、どうして二人はど真ん中に寝ていらっしゃるのでしょうか?
どっちかにちょっと寄って頂くことなど、できませんでしょうか?
聞こえてない振りをしないでもらえませんか?
耳がピクピクしてるのはわかってるんですよ?
なんとかベッドの隅っこを譲っていただけました。おやすみなさい!
そして次の日、楓と紅葉に添い寝して、大満足の夜を過ごした俺はちょっと身体が痛い!
お昼時も過ぎたのでちょうどいい時間かなと思い、セカンドハウスへ転移。
一階に降りると、領主さまと、ソフィーさまが、執事さんとメイドさんにお世話されてました。ヘンリーさまもお茶飲んでるのは気のせいでしょうか?
使用人さんは皆さん庭で待機中だそうです。
「では、領主さま、お屋敷までご一緒頂けませんでしょうか、建物の入り口で許可のために儀式が必要です。そのあと寮へ向かい、そちらでも儀式が必要です」
「承知した」
というわけでヘンリーさまのことは一先ず気にしないことにして、お屋敷の玄関までやって参りました。マイホーム機能を起動してお屋敷へ干渉する。建物の管理者権限の割り当てを貰うことによって、建物の所有者は変わらず、俺は建物に干渉できることになる。
「お屋敷のシステム管理者権限を新規発行します、許可をお願いします」
肉球陣が展開されて、許可待ちになるってここも肉球なのか!
「よろしい、許可する」
領主さまの宣言により、お屋敷のマイホーム機能が解放され、建物の情報が流れ込んでくる。
ピロリロリロリロリロリロリロ~ン!
連続する電子音と共にマイホーム機能のアナウンスがこれまた連続して流れる。
≪異世界住居(領主のお屋敷)が解放されました≫
≪異世界家具・生活設備・魔法具が解放されました≫
≪馬車の購入・カスタマイズが可能になりました≫
≪マイホーム機能がアップデートされ都市機能が追加されました≫
≪管理区域への電力供給が可能となりました≫
≪管理区域へのガス供給が可能となりました≫
≪管理区域への上下水道機能が利用可能となりました≫
≪管理区域へのデジタル通信機能が利用可能となりました≫
≪管理区域の道路網へ干渉が可能となりました≫
≪管理区域の防衛設備へ干渉が可能となりました≫
≪管理区画の家屋へ修復機能が利用可能となりました≫
≪管理区画の家屋へ強制執行が可能となりました≫
これはちょっと予想外だぜ!
お読みいただきありがとうございます。