1話 楽しいゲームを始めよう
今から約2年前、オブセラヴ王国で反乱が起こった。反乱を起こしたのはその国の第2王子であるレオン・オブセラヴ率いる平民や1部の貴族たち。
リーダーであるレオン
平民代表で副リーダーであるギル
2人は親友でお互いを強く信頼しており、そんな2人に反乱軍の人間は平民貴族関係なく、絶対の信頼を寄せている。
反乱軍幹部は、元王国騎士団員で反乱軍の騎士団長であるライアン
平民で魔術師団長であるルイ
平民で斥候部隊隊長であるユーリ
元伯爵令嬢で救護部隊隊長であるレノア
この4人も、とても慕われていた。
約2年間、各地で争いを続けてきた。
数 対 力 の平行線の戦いは、反乱軍が徐々に力をつけてきたことにより均衡が崩れ、このままいけば王国軍が負けるかと思われていた。そんなとき、反乱軍である事件が起こった。
《救護部隊隊長であるレノアの裏切り》
ーそれは突然のようで、今まで何個も証拠はおちていた。
何度か目撃されていた、レノアの友達だという謎の少年と歩く姿
その少年と頑なにあわせようとしないレノアの態度
今考えれば、王国軍の人間に情報を渡していたのだろう。
もう1つ、レノアは炊事部隊に所属しているサンディという少女をいじめて幹部以上の人間と関わるなと言っていた。
サンディは他の反乱軍の者たちよりずっと幹部以上の人間と話すことが多いうえに、レノアの行動を不審に思っていたことから危機感をもったのだろうー
というのが、今の反乱軍の考え。
そして今反乱軍は……
レノアの裏切りが発覚したとき、魔術師団長であるルイがレノアを庇った。
サンディが“ルイとレノアは特に仲が良かったから、きっと騙されてしまっている。早く連れ戻して助けてあげよう”と言ったことから、ルイを探している。
反乱軍は、特に幹部以上の彼らはサンディを信じすぎている。
確かにサンディは誰にでも優しい好感のもてる少女だったが、サンディの一言で、ずっと仲間だったレノアの言葉を一切きかずに追い出し、サンディの一言で、レノアと共に消えたルイを一切疑わずに探している。
以前の彼らではあり得ないその強い信用。それを全く不審に思わない周囲の態度。それはもはや異常といえる。
(みんなに、何があったんだろう。どうしてあんなに、変わってしまったんだろう)
「……はぁ。ばかばかしい。私が考えるのは復讐のこと、それだけ」
そう呟き、レノアは後ろにいる人物に呼び掛ける。
「ルイ、行こう」
「……」
ルイは無言でついていく。
2人は全ての未練を断ち切り、1度も振り返らず去っていった。
全てが終わり、始まり、変わり果てた場所、反乱軍の本拠地を。
『さあ、楽しいゲームの始まりだ』
その言葉は、誰の耳にも入らずに消えていった。