17話 悲しみ『軟禁2日目・3日目……』
大変お待たせいたしました
『雑なこれまでの粗筋』
目が覚めたらレオンに軟禁されていたレノア
魔法は使えないことと軟禁の動機をなんとなく理解したレノアは、ここから出たいとお願いしたが、拒否され強制的に眠らされる
翌日、起きたらレオンは居らず、出口はなく、ボーッとしたまま“ルイに会いたいなぁ”と思う
~そして今回に続く~
寂しさを感じながらも、なにも出来ることがなく、ひたすらボーッと過ごしていたレノア。そうしてぼんやりとしていた意識の中に、突然大きな音が響き渡った。驚きにガバリと起き上がる。
「あ、レオン……」
「レノア!ただいま!会いたかった!」
レオンが満面の笑みを浮かべながら抱きついてきた。その様子に困惑する。
こんなレオンは、見たことがない。
レオンは、出会った頃から穏やかで、こんなに分かりやすく好意を見せることなんてなかった。昨日の狂的なものとも違う、純粋な好意に、なんだか気恥ずかしさを感じ、視線を反らす。レオンはいっそ不気味な程ニコニコと笑い、レノアを見つめている。
「あの、レオン……」
「なんだ?」
思いきって話しかけた。レノアに話しかけられたレオンが、よりいっそう嬉しそうな雰囲気を醸し出す。
「私を、ここから出して。みんなも、心配してると思うの。急にいなくなるなんて」
自分の思いを訴えても出してくれないなら、友人たちのことを話せば、出してくれるかもしれないと考えた結果だった。
優しく友達思いのレオンなら、今は暴走してしまっていても、友人のことを考えたら出してくれるかもしれない。きっとみんな、突然いなくなった自分を心配しているはず。大切な友人が自分のせいで困っているなんて、レオンは嫌なはずだ。
そう改めて考え、自分を自分で誉める。なんて良い考え。これなら絶対にレオンは出してくれると、レノアは自信に満ちていた。
しかし、当然ながらそう簡単にはいかない。レオンは相変わらずニコニコしながらレノアの言葉に返した。
「みんなって、例えば誰だ?」
「え?ルイとかだよ。何も言わずに居なくなったんだもん。ルイ、私のこと探してるでしょ?レオンは、ルイがそうやって困ってるの嫌じゃないの?」
「別に。ルイが悲しんでても困ってても、俺には関係ないし」
「え……?」
「ルイとか、どうでもいい。俺はレノアがいればそれで良い」
「っ!」
レオンの言葉に、目を見開いた。
まさか、レオンがそんな事を言うなんて
友達想いのレオンが、友達がどうでもいいと言うなんて
聞き間違いだろうか?信じたくない
どうしてレオンはそんなことを……
『俺はね、いろんな人たちに焼きもちを焼いているんだ。レノアと仲良くするのは俺だけが良いと思ってる』
(焼きもち……)
心の中で、小さく呟いた。
レオンは、焼きもちを焼いていると言っていた。だからだろうか?だから、あんなことを言ったんだろうか?
自分と一緒にいることの多いルイに、焼きもちを焼いた?
焼きもちを焼いて、ルイに嫌な感情を抱いてしまった?
自分が原因で、レオンが焼きもちを焼いてしまった?
自分のせいで、優しいレオンに嫌な感情を抱かせてしまった?
「……ぁ…………」
思考が、おかしな方向へ行ってしまった。
レオンの友人を軽んじるような言葉を、どうしても受け入れられなかったのだ。レオンがそんなことを言う人間だと、思いたくなかった。
だから、理由を考えた。このレオンは、何かのせいであって、レオン自体は優しい人だと、無理やりにでも、違和感から目を背けてでも、そう思い込もうとした。
そうして、昨日のレオンの言葉を思い出し、原因は自分だと、悪いのは全部自分なんだと、そんなおかしな答えを導きだしてしまった。
「レオン、レオンっ。ごめんね……」
「…レノア、大丈夫だよ」
レノアの瞳から、ボロボロと涙が零れた。
自分のせいだという考えにたどり着いた途端、悲しみが溢れだしたのだ。もちろん、この状況も、何もかも、レノアは悪くない。しかし、おかしな思考の沼に嵌まってしまったレノアには、ただレオンに謝るという選択肢しかなかった。そんなレノアに、レオンが優しく声をかけ抱き締める。泣きながらひたすら謝るレノアを慰めながら、レオンがニヤリと笑みを浮かべた。
◇◇◇◇
目が覚めた。いつの間にか眠ってしまっていたらしい。探したがレオンの姿はなかった。忙しいのだろう。太陽は真上に昇っていて、もう翌日になっているんだろうということが分かった。
ベッドに寝転んで、ぼんやりと天井を見つめる。
昨日のことを思い出すと、自然と涙が溢れてきた。
レノアは、レオンのことが大切だ。大好きだ。そんなレオンが、ルイのことをあんな風に言うなんて、辛かった。自分のせいで、レオンがああなってしまったなんて、悲しくてたまらなかった。レオンに申し訳なくて、涙が溢れて止まらなかった。
「ふっ、うぅ、ごめん…、ごめん、ねぇ……レオン…、…私の、せいで……」
誰もいない部屋で、ひたすら泣き続けた。謝り続けた。
自分のせいで、レオンは変わってしまった。自分のせいで、自分のせいで…… そうやって、自分を責め続けた。
そうして泣き続け、涙も声も枯れてしまうという頃、レオンが帰ってきた。
「あぁ、レノア。泣いてるんだね」
「…うぅっ、、…レ、レオン………?」
「レノア、大丈夫だよ。俺は何にも変わってないよ」
「で、でも……」
「大丈夫、大丈夫。俺はレノアを心の底から愛してる。愛してるって、嫌な感情じゃないだろう?」
「ぅん、そうだけど……」
「大丈夫。時間はたくさんあるんだし、じっくり考えて、レノアなりに納得してくれたら良いから。大丈夫だよ。レノアは悪くないよ」
「うん、、レオン、ありがとう」
レノアは淡く微笑んだ。けれど、申し訳なさも、悲しみも、消えてはいなかった。
そうして悲しみが消えないまま、数週間。
レノアは今日も泣いている。1つの思考に囚われたレノアは、なかなかそこから抜け出すことが出来ていなかった。
自分のせいで、レオンがあんな感情を抱いてしまった。そのことをひたすら謝って、悲しんだ。
あの日以降そうして過ごしていたレノアが、レオン以外の人を思い浮かべることも、会いたいと願うこともなくなっていた。
そのことにレノア自身は、全く気付いていなかった。
『お知らせ』
以前どこかの後書きでエンド3つ書く予定だと書いたのですが、予定を変更してエンドは2つになりました
すいません