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絡み合う愛情と憎しみ 少女は誰の手を掴むのか  作者: 如月麗羅
第2章 反乱軍,レオンルート
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12話 風邪の後

翌日、レノアはいつものように半覚醒状態で準備をした後、ソファの上でぼやんとしていた。けれど、風邪は治り意識もしっかりとしてきていた。


レノアは、困っていた。

それというのも、昨日の記憶がほとんどないのだ。確か、1番大切な人がルイだと分かった気がするのだが、どういう経緯でそうなったのか、全く覚えていないのだ。

風邪を引いていると、驚くほどネガティブな思考になることは自覚している。けれど、それと同時に、自分でも自覚していない本心を知ることができる。心が弱ってしまい、いつも無意識に抑え込んでいた本心を、押さえ込むことが出来なくなるのだろう。

だからきっと、ルイが1番大切だというのは、レノアも知らなかった本心なのだ。

最近、一番大切な人は誰か考えることが多かった。それが原因で、風邪を引いている間もそれについて考えたのかもしれない。


それにしても、そうか。

ルイが1番なのか。

1番大切な人はルイなのか。

意外だとは思わなかった。それどころか、しっくりときた。違和感なんてなかった。

ルイだ。

ルイなんだ。


「……」


自然と口角があがった。

ルイはいつも、レノアを1番優先してくれる。言葉はなくとも、分かる。雰囲気と、その瞳で。レノアを1番大切にしてくれていると。

ルイは、レノアの唯一無二の存在。

レノアも、ルイの唯一無二の存在。

お互いがお互いを大切に思っている。とても幸せなことだと思った。


しかし、そもそも自分はなぜ風邪を引いたのだろうか。

「…………ぁっ」

(そうだ。レオンが彼女と一緒にいるのを見て、何故か悲しくなって、雨の中走り回ったんだ)


レノアは、起きてから数分後、やっと自分が風邪を引いた理由を思い出した。

そしてレノアは、自分の中であの時の女性を完全にレオンの彼女だと決めつけてしまっていることに気付いていない。風邪で意識がぼんやりする中、“彼女なのでは”という不安だけが膨らみ続けて、“きっと彼女だ”という結論に辿り着く。そして、その結論だけうっすらと覚えており、“あの人は彼女だ”という確信に無意識に変わっていたのだ。レノアの気分としては、レオンに“俺の彼女だ”と紹介された気分にすらなっている。


(でもなんで私悲しくなっちゃったんだろう)

レノアは考えた。

そして、おかしな結論に辿り着いた。

(そうか!不倫してる父親を見た気分になったんだ!)


ここにギルがいたら、冷めた視線を向けられ、罵詈雑言の雨を浴びせられたのだろうが、生憎、今レノアは部屋に1人で、勘違いを正してくれる人はいない。


あの時、レオンを見た時。

レノアは“1番は自分じゃないのか。どうして……”と、身勝手な感情を覚えた。その感情が、そのまま“不倫している”というものに置き換えられたのだ。それにレノアの中で、レオンは時々父親のようだと感じることがあった。その2つが結び付き、あんなおかしな結論が生まれてしまった。

勝手に自己完結してしまったことを、蒸し返すことはあまりない。

その結論は、自分を守るために無意識の内に無理やり出した結論かもしれない。けれど、例えそうだとしても、もうどうにもならない。

それは、レノアの中では完全に解決したことなのだ。



◇◇◇◇



そろそろ昼食の時間だという頃、レノアはやっと部屋から出て廊下を歩いていた。


「~♪~♪」


レノアは意味もなくテンションが高かった。本当に意味はない。無理やり理由を考えるなら、1番大切な人が分かって気持ちがすっきりしたからかもしれない。

とにかく、そんなテンションの高いレノアの髪が、珍しく結ばれていた。

高い位置で、ポニーテールにしており、結び目では、銀色のリボンが髪と共に揺れている。


「~♪~♪…あ!レオン!おっはよー!」

遠くに見えたレオンの元へ走りよっていく。

「お、おはよう?もう昼だけど…レノア、テンション高いな」

レオンが少し呆れたように笑いながらそう言った。

そして、レノアの顔を見ようと下げた視線が途中で止まった。その視線は、レノアの頭、正確には、そこで揺れているリボンに注がれている。


「?……レオン、どうしたの?」

「そのリボン……」

「あ、これ?似合う?ルイからの誕生日プレゼントなの!」

「っ……そう、か……」

レオンが、微かに表情を歪めた。

「レオン、大丈夫?…寝不足?それとも私、風邪移しちゃった!?」

レノアはそう言いながらレオンの顔を覗きこんだ。


レオンの視界に、不安気に眉を寄せた、見慣れた端正な顔が入り込む。その顔を見ただけで、勝手に表情が緩むのに、少し視線を動かせば見える、()()のそれに、胸のなかに黒くどろりとした感情が広がった。


「いや、大丈夫だ………そのリボン、似合ってる」

「本当!?ありがとう!」

そんな感情など知らず、レノアはレオンの称賛をリボンを着けた自分と、そのリボンを選んだルイへのものだととらえ、自慢気で、得意気な、そんな無邪気で残酷な笑みをその顔に浮かべた。

この話で大事なのは、ルイの(左)目が銀色なことです

最初の頃、雑に書いた1章の登場人物紹介を書き直しました

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