プロローグ
反乱軍の勝利が決まったあの日から、約2ヶ月がたった。レオンが王となり、レノア達も国の重用な役職についた。2ヶ月たち、国は少しずつ落ち着いてきた。
あの後、王国軍の地位の高い者達は公開処刑を行った。それ以外の者達は、この国の民として暮らしていくことになった。
その人達は、決して悪人という訳ではない。戦争にどちらが悪いもない。反乱軍に反乱軍の正義があったように、王国軍にも王国軍の正義があったのだ。彼らは、国を、国王を信じていたのだ。
しかし、戦争がなかった事にはならない。民の間では何度も争いが起こった。亡くなった人も何人もいるのだ。それはあたり前の事だった。
レノア達は、そのたびにその場に赴き、力ではなく、話し合いで解決してきた。
それは、政治の場でも同じだった。元反乱軍と元王国軍の言い争いは何度も起きた。異なったたくさんの意見を聞くために同じくらいの人数を政治にたずさわらせたのは失敗だったかと思った。しかし、始めは互いを罵り合うだけだった言い争いは、まれに罵り合うことはあるものの、しだいに国についての討論に変わって言った。やがて、お互いに兢い合うように国のために自らを磨くようになった。これでよかったのだと、レノア達は酷く安心した。
レノア達の国がある大陸には、6つの国がある。6つの国の王族には、何百年も前から優秀な者しか生まれかった。良い事だが、それ少し不気味だった。
大陸全体はずっと平和だった。
ある時生まれた王子は、驚く程愚かだった。その王子は、愚王になった。その王が、レオンの父だ。王と真逆で、王妃は優秀な人物だった。王妃のお陰で、国は平和だった。しかし、王妃は亡くなってしまった。王妃が亡くなったとたん、王は貴族の操り人形になった。そして、5つの国々とは、だんだんと関係が薄くなっていってしまった。
しかし、この2ヶ月の間にその国々に赴き、もう一度良好な関係をつくることができた。レオンたちの努力の成果だった。
そうして一段落ついたことにより、張り詰めていた緊張の糸が緩んだ。
国ではなく、身近な人や自分の感情に目を向ける余裕ができたのだ。
-ギ、ギ、-
「あれ、レオン殿下?」
ビクッ
「勉強、してるんですか?」
(見つかった!本当はこうやって勉強しないと成績を保てないとばれたら、呆れられる。やっぱり優秀なのは兄上だけだって思われる!)
「いや、これは……」
「すごいです!」
「……え?」
「私、今までレオン殿下は何でも簡単に出来ちゃう類いの人だと思ってました!こんなにたくさん努力してたんですね……こうやって努力出来るのはすごい事だと思います。私、殿下を尊敬します」
「!……ありがとう」
(努力して努力して、いつまでも君に尊敬される人間でいたい)
-ギィ、、ギ-
「レオン!」
「なんだ?」
(やっぱり呼びすての方が嬉しいな)
「あのね!会わせたたい人がいて……ルイだよ!私の“1番”の友達!」
“ズキッ”
「そう、なんだ……」
(あれ、何でこんなに苦しいんだ。俺が一番になれる訳ないのに)
-ギ、ガガッ、-
「レオン!平和になって、良かったね」
「あぁ」
(この思いに気付いてはいけない。気付いだって苦しいだけだ。レノアの一番は、ルイなんだから。でも……)
-ガキッ、ガッ-
レオンの想いのブレーキは、微かな音をたてながら、壊れ始めていた。