12話 勝利?
翌々日
レオン達は幹部以上専用の部屋にいた。
レオンが集めたからである。
「それで、レオン。何か話でもあるんですか?」
1人1人の飲み物を持ってきたギルがそう聞いた。
「話というか……兄上が来るから」
「「「……」」」
「お前の兄貴が来るのか!?なら戦う用意しねぇと!!」
レオンの兄、つまり敵であるアランが来るという予想外の言葉に、全員が驚きに沈黙する中、ライアンが叫んだ。それに、すかさず否定の声をあげた。
「違う違う!戦う訳じゃないんだ!たぶん、もうすぐ1人で話をしに来ると思う」
「話?何でだ?」
「何でと言われても、兄上はそういう人なんだ。とにかく、戦う事はこれからもうないと思う」
「「?」」
レオンの言葉に、不思議そうな顔を浮かべる。
その時、どこからか声が聞こえた。
「さすがは私の弟。大正解だ」
「「「!」」」
突然、レオンの兄、アランが現われたのだ。
「おめでとう。君達の勝利だ。王国軍は負ける事にしたよ」
そう言って、一見考えが全く読めないような笑みを浮かべた。
「突然そんな事を言って、どういうつもりですか?」
ギルが眉をひそめながら聞く。
「おぉ、先日の…久しぶりだな」
「あれ、ギルいつアラン様に会ったの?」
アランの言葉に、ぼやっとしていたレノアが不思議そうに問いかけた。
「先日サンディと‘お話’した時に会いました」
「へー…………お話……」
「そんな事より、王国軍が負けって、なぜですか?」
「飽きたんだ」
「は?」
「戦うのはもう飽きた。それよりもおもしろい事も見つけたしな」
「「「……」」」
「じゃあ、王国軍が降伏したという事で。それで、兄上はどうするんですか?」
「適当に遊んでくる」
「そうですか。ではもうこの国を使って遊ばないでくださいね」
「それは約束出来ないな。だがまぁ、しばらくはやらないな」
「そーですか……」
「では、またな」
そう言って、アランは消えた。
「はあぁぁぁー」
レオンはそれはそれは大きなため息を吐き、机に倒れこんだ。
「もうやだ。関わりたくない。‘またな’ってなんなんだよ」
兄弟として長い間関わってきて、もうそれ程恐怖は感じないが、やはり苦手なのは変わらない。
「レオンに賛成。何あの人、怖すぎる。もう会いたくない」
「お前の兄貴すごいな。おれ1ミリも動けなかった」
恐怖から解放されたユーリとライアンが口々に声を出す。
「えー?そんなに怖い?」
レノアが不思議そうに首を傾げた。
「怖いよ。レノアは慣れちゃってるんじゃない?」
ユーリがすかさず反論する。
「えー?そうなのかなぁ。ねぇ、ルイはどうだった?」
「…怖く、なかった」
「ルイもこう言ってるし、ギルだって話しかけてたじゃん。」
「えー?ギルも怖くなかったの?」
「怖くなかったと言えば嘘になりますけど、動けない程ではないですね」
「うんうんそうだよねぇ」
レノアが満足そうにうなずく。
「ユーリやライアンの反応があたり前だぞ」
4人に正解を伝える。アランをみれば誰もが本能的な恐怖を抱く。レオンも幼いころは恐ろしく感じていた。レノアは最初からそんな様子はなかったが……
「そんな事より、どういう事ですか?適当に遊ぶとか言ってましたけど」
「俺達にあの人をどうこうすることはできないから、遊ぶと言ったら遊ぶんだ。善悪関係なく、おもしろい事が好きな人だから」
何を考えているか分からないようで、本当はただ何がおもしろいかを考えているだけ。兄弟のはずなのに、自分よりずっと上の次元にいると感じる。兄だが、今は敵。それなのに、逆らう事なんて出来ない。
今回の反乱も、サンディが起こした事件も、この反乱の結末も、結局は全てアランの手のひらの上。もしかしたら、これからの事も……
「とにかく、みんなに勝利を伝えに行こう。実感ないけど」
そうして反乱軍は一応の勝利を得た。
アランの思い通りに
遅くなってしまってすいません
何かない限りどれだけ遅くなっても投稿を止める事はないので、これからもよろしくお願いします