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絡み合う愛情と憎しみ 少女は誰の手を掴むのか  作者: 如月麗羅
第2章 反乱軍,共通ルート
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8話 2日目 ギル

次の日、部屋にはレノアとルイ、ギルがいた。


「よし!ギル、オセロ勝負をしよう」

ギルに指を向けながら、レノアはそう良い放った。

「……はぁ、負けると分かっていてやるなんて、本当に物好きですよね」

「勝てるかもしれないじゃん!」

以前と全く変わらないレノアの態度に、ギルがため息をつきながら答える。それにムッとした顔で言い返すレノア。以前と変わらなすぎる光景である。

「10年間、週に1回以上やってきて1度も勝てていないのに、ですか?」

「ぐっ…!私の繊細な心がぁ!」

「…繊細?」

「ちょっとルイ!そんな真底びっくりした顔で言わないでよ!」

純粋に驚きの目でレノアを見つめながら小さく呟いたルイ。それに若干傷つきながらルイに向かって叫ぶ。

「…あ、ごめんね」

ルイはすぐに素直に謝った。レノアが若干傷ついたことを察したのだろう。

「あぁ、ルイは良い奴だねー。誰かさんと違って」

ルイに抱きつきながらそう言い、ちらりと視線をギルに向ける。

「そうですね。二言目にはオセロオセロとうるさい貴女とは違いますね」

「ぅおい!お前のことだ!あと、そんなにオセロオセロ言ってないから!」

「……私と貴女との思い出、9割オセロなんですが」

「そんなわ、、いや、そうかもしれない。しょうがない!ギルを見ると、何故かオセロしたくなるんだよ!」

ギルの言葉に反論しようとしたが、思い返してみて、完全に否定できない事に気付く。得意のオセロで初めて負けてからというもの、ギルを見つけるたびに勝負を挑んできたのだからそれも仕方ない。

「良いカウンセラーを紹介しましょうか?」

「何で!?」

「まぁ、いいです。オセロを始めましょう」

「切り替え早いね!……まぁ、いいや。今度こそ、今度こそ勝つからね!」

「はいはい。さっさと終わらせましょう。昨日、あの女の居場所が分かったので、早く行きたいんですよ」

「な、なんのために?」

ギルの不穏な言葉におそるおそる問いかける。

「………聞きたいですか?」

「ま、まままま全く!ぜんっぜん聞きたくないよ!うん」

レノアに、答えを知る勇気はなかった。

「そうですか……では、始めましょうか。私はいつも通り黒で良いですか?」

「うん。じゃあ、私からね」


“パチッ”


言い合いの後、2人はオセロを始めた。





今回のユーリの提案、正直ギルには必要ないものだとレノアは思っている。

ギルはどんな時も感情より思考を優先させる人間。自分が何かしてしまっても、相手が心から許したのならそれはもうギルにとって完全に過去の事となる。相手が許しているのに自分がいつまでも引きずっていても何にもならないうえに、相手に不快な思いをさせる事もあると考えているからだ。ずるずると引きずるタイプのレオンとは真逆である。

そんなギルなので、特に気を使ったり何か特別な事をしたりせず、以前と同じように接した。まぁ、衝動的に勝負を挑んでしまったという部分もあるにはあるのだが……それが2人の日常なのでそれで良いのだろう。


勝負には、もちろん負けた。どんなに考えても勝てない。他の人には、1度も負けた事がないのにもかかわらず。

目の前に広がる沢山の黒色にくじけそうになりながらも、“ここまできたら絶対に1度は勝ってやる” そう意気込むレノアだった。



■■■■



レノアは、私の信頼する仲間です。

それなのに、私達は最低な方法で裏切ってしまった。酷く傷つけてしまいました。

家族が全員敬語で、家に図書館にも引けを取らない程大量の本がある以外はごく普通の一家に生まれた私が、レオンやレノアに関わるようになったのは、家のすぐ近くにある図書館での出会いがきっかけでした。

幼い頃、いつもの様に姉と図書館に来ていた私は、図書館の奥の薄暗い場所で濃い隈をつくり、目が充血し、今にも倒れそうな程蒼白い顔をしたレオンを見つけました。見なかったことにしてスルーしようとしましたが、砂漠で遭難した人のように水を求めてきたので、諸事情により使える精霊魔法を使い水を出現させ、口内にぶちこみました。

精霊魔法を使ったのが悪かったのでしょう。次の日から、無駄になつかれてしまいました。王子だということも簡単に打ち明けられました。始めは面倒くさかったのですが、レオンは王子なだけあり、沢山の未知の知識を持っていました。なので、レオンとの会話はとても楽しいものでした。そして、いつしか私達は親友といえる間柄になりました。

それから暫くして、レオンが友達だと言って連れてきたのがレノアとルイでした。それからは、ほぼ毎日4人で遊んでいました。そんな中で育んだ友情や信頼、それを、私達は自らの手で壊してしまいました。

レノアの性格上、もう私達の事は許しているでしょうし、ルイもレノアが許したのなら許していると思います。しかし、今回私達がつけた傷は、とても大きなものです。もしもの時、その傷がひらいてしまったら……そう思うと、胸の中があり得ない程の不安と恐怖で埋め尽くされます。

けれど、起きるかもわからない未来に不安を持っても、何も出来る事はありません。今はただ、以前と同じこの日常を、大切にしていきたいと思います。


さて、今夜にでも、あの女の元へ行きましょうか。やられっぱなしは、私のプライドが許しませんからね。


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