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絡み合う愛情と憎しみ 少女は誰の手を掴むのか  作者: 如月麗羅
第2章 反乱軍,共通ルート
23/53

7話 1日目 レオン

「……」

「……」

「………」


部屋の中が微妙な沈黙につつまれるなか、レノアはレオンの目の下にある真っ黒な隈に気づいた。


「レオン、昨日どれくらい寝たの?」

「…………かん」

「……え?」

「…2時間、くらい」

「ええぇぇぇ!2時間!?私12時間だよ!」

「それは長すぎだろ」

「だって、眠かったから!…って、違う!そんな事より、寝て!私膝まくらするから!」

「…えぇ」

「ええ、じゃない!とにかく寝るの!倒れちゃうよ?」


そう言って、レノアはレオンの頭を自分の膝に押し付けた。


「痛い痛い!…分かった、分かったから。はぁ」

「分かればよろしい!じゃあ、おやすみ~」


その後すぐに、レオンは穏やかな寝息をたて始めた。


「はやっ。やっぱり眠かったんじゃん…」


レノアはそう小さく呟いた。


「……」 

「………」

静かな空間で、ルイの無言の視線をひしひしと感じる。

長い間一緒にいたのだ。ルイが言いたい事はなんとなく分かる。


「…今日の夜、一緒に寝る?」

「!」


そう言ったとたん、ルイがその顔に“パアァァァ”という効果音が付きそうなほど、一気に満面の笑みを浮かべた。


(やっぱルイって可愛いなぁ。私の癒し。やきもきやいてるんだねぇ)


心の中で、そんな事を考える。ルイが無言で見てくる場合、大抵はやきもちだ。今回は、レノアの膝を独占しているレオンにやきもちをやいたのだ。だから、レノアはルイに一緒に寝ることを提案した。


「…でも、、いいの?」

「もちろん!」


少し不安そうに聞いてくるルイに、レノアは大きく頷いた。



部屋の中に、穏やかな沈黙が満ちる。


レオンのサラサラとした髪を撫でながら、レノアはふと幼い頃を思い出した。



◇◇◇◇



レオンとは、レオンの兄であるアランの婚約者として出会った。

2人の王子は、どちらも非の打ち所がない完璧な王子だと噂されていた。

アランは、本当に完璧な王子であった。しかし、どこか近寄りがたいと、そんな風に感じていた。

レオンも、同じような人なのかと思っていた。完璧だけれど、何を考えているか分からない、近寄りがたい王子。しかし、それは違っていた。確かに噂通りの完璧な王子だけれど、アランとは違い、親しみやすい人物だった。 

それから2人は、だんだんと親しくなっていった。


それから少したち、王宮の図書室にいたレノアは、そこでもの凄い勢いで本を読むレオンを見つけた。

その時、今まで知らなかったレオンを知った。

レオンは、努力家だった。アランに少しでも追い付けるように、毎日毎日地道な努力を繰り返していた。レノアは今まで、レオンは特に努力をしなくても簡単にできてしまう天才、そんな人種だと思っていた。けれどそれは違った。レノアは、レオンに純粋な尊敬の気持ちを抱いた。

それからたくさんの話をし、2人の距離はグッと近づいた。

その頃から、アランがレオンを視るようになったことに、レノアは気づかなかった。


それから、ルイとギルを合わせた4人、ずっとずっと、信頼し合える幼なじみで仲間だった。

今回のことで、その関係が崩れた。その事をレノアは、それほど気にしてはいなかった。元々そういう性格なのだ。良く言えば、心が広い。悪く言えば、薄情、無関心。

しかしレオンはそうでもないようだ。責任感の強い性格なので、どう接したら良いかわからなかったのだろう。先ほども、どこかレノアに対する態度がぎこちなかった。

けれど、眠りから覚めれば少しはそれもなくなるだろう。ケンカをして、謝りあってもまだレオンが責任を感じて、レノアの全く気にしない様子に流され、レオンもいつの間にか笑っている。それがいつもの流れ。今回は、それの規模が少し大きいだけ。すぐに、また笑い会える。レノアも、少しだが彼らへの情や関心が戻ってきているのだ。出来るだけ早く、以前のような関係に戻りたい。そう思いながら、優しい瞳でレオンを見つめた。



■■■■



レノアは、俺の大切な仲間だ。

優しくて、いつも笑顔で、つらい時、支えになってくれた。

俺はレノアを、友人として好いている。でも、レノアの中で、1番はいつもルイだ。それが時々酷く寂しく感じる。恋人でもない、反乱軍のリーダーとして、俺だってレノアを自分の中で1番にすることはできない。それなのに、レノアの中で1番になりたいなんて傲慢な考えだろう。そう思い、自己嫌悪におちいる。

寂しさと少しの苛立ちと、自己嫌悪。もしかしたら、サンディは俺のそんな闇に入り込んだのかもしれない。

今回のことで、レノアは俺を嫌っただろうか。レノアは、ずっと人を嫌ってられるような人間じゃない。それはよく分かってる。でも、俺は、俺たちは、本当酷いことをした。何の疑問もなくレノアを裏切り者とした中、心のどこかが、残っていた自我が、ずっと悲鳴をあげていた。レノアの戸惑う瞳の中にある絶望を見て、悲鳴をあげていた心が、レノアに嫌われたことに、レノアを絶望させてしまったことに、絶望して、絶望して、自分が、何をしているのか分からなくなって、自分が、分からなくなって、最後に、レノアの絶望と目があって、その瞬間、甘ったるい、どこか兄上の魔力を感じる闇に、その心は消えていった。

気づいたら、レノアがいて、その瞳に絶望はなくて、どこか安心して、それ以上に申し訳なくて……

レノアは、気にしてないと言っていた。でも、それはきっと関心がなくなったから俺らのことなど気にしてないという意味で。もう、関心を持ってくれないかもしれない。関心が戻っても、嫌われるかもしれない。それが、怖くて、怖くて。俺はもう、レノアの1番になれる可能性すらも、自ら棄ててしまった。



ずっと遠くに、レノアが見える。

「……っ!」

名前を呼ぼうと思った。でも、呼べなかった。声が出なかった。レノアはルイと一緒にいる。幸せそうに笑っている。ふと、レノアが俺に視線を向けた。でもその瞳は、すぐにそらされて。


「私、ルイを世界で1番愛してる」

「!」


その言葉に、目を見開く。“待って”って言いたくても、声は出なくて、レノアはルイと共にだんだんと離れて行く。いくら足を動かしても、距離は遠くなるばかり。

レノアの言葉が、頭の中で何度も何度も繰り返される。

どうして、どうして。何でルイなの?俺じゃダメなのか。


「……ン!レオン!」


レノアの声が聞こえた。ゆっくりと目を開ける。


まぶしい


「もー、レオン。寝てる間にまで眉間にしわよせないでよー」


レノアが笑いながら言ってくる。それにひどく安心する。大丈夫。きっと大丈夫。また仲間に戻れる。


「しょうがないだろう。それより、膝まくらありがとな。よく眠れた」

「眉間にしわよせてた人に言われてもなー」 

「それはごめんって」


また、笑いあえる。信頼しあえる。


不安な心にも、夢の中の感情にも、気づかないふりをして。

以前のように、ただ笑い合う。


感想がまたきました!すごい嬉しいです。柴犬つくよ様、本当にありがとうございます!

もし登場人物たちの誕生日を決めることがあれば、感想をもらった日を誰かの誕生日にしようかなーなんて思ってます。

私の呟き(?)にも答えてくださり、本当に嬉しかったです。叫びました。


2日目はギルになります。


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