5話 仲間
「それよりギルはどこ?それと、ユーリは何でかたまってんの?」
「む!?本当だ、ギルがいない!そしてユーリ!お前どうした!おい!生きてるか!?」
ライアンが人形にように立ったままでいるユーリのもとへかけ寄り、その肩をガックンガックンとゆさぶった。
「いや、さすがに生きてるでしょ」
レノアがすぐさまそう言う。
「あー、大丈夫大丈夫。それ元々生きてないから」
突然、頭上からユーリのものと思われる声が聞こえてきた。
「「「え!?」」」
全員が同時に上を見上げる。
「ヤッホー」
ユーリがぷかぷかと浮いていた。
「ユーリが2人!おい!どういうことだ!?」
ライアンが全員の疑問を代表して叫んだ。
「いやー。実はぼく、結構前から諸事情でここにいなくて、ぼくの情報を入れた魔法人形をかわりに置いといたんだよね」
「「「は?」」」
ユーリの言葉に、全員がぽかんと口を開けて惚ける。
「ぼくね、隣国の諜報部隊に所属してるんだ。なんか、隣国の第2王子がレオン達の反乱に協力したいからってぼくをレオンにかしたんだけど、急にレオンやギルにも内緒で任務を頼まれちゃって……ぼくが隣国から来たって事は今まではレオンとギル以外には黙ってるよう言われてたんだけど、なんかレノアに伝言を頼まれてね。それを言うために正体を明かして良いって」
「伝言」
「そう。なんか、第2王子がもうマルセル王子に会うなって。あの王子、すごいブラコンだからねぇ」
「はぁ」
たくさんの事実に、レノアはぼんやりとした返事しか出来なかった。
「それで、ギルはどこにいるんだ?」
一応落ち着いたところで、レオンがそう言った。
「あ、そういえば…」
「………」
「どこにもいないねぇ」
「おーい、ギルー!どこだー」
「ここ、だよー」
どこからか、聞いたことのない、子供のような高い声が聞こえた。そして
「よいしょっ、と」
腕に意識のないギルらしき人物を抱えた少年が、壁の中から出てきた。
「ギルが、大変なことに、なってたから……ぼくたちで、保護してたんだ」
少年が、今にも寝てしまいそうな様子でそう言った。
「保護してくれたのはありがたいが、お前は誰だ?」
レオンがギルを受け取りながらそう言った。
「ぼくのことは、気にしないで……それじゃあ」
「あ、おい!」
少年は、すこしふらふらとしながら、壁の向こうへ消えていった。
「「「……」」」
「誰?……ルイ、わかる?」
レノアは、横にいたルイに聞いてみた。
「……多分、精霊。だと思う」
「精霊……」
精霊は、自然を守護しているという一般的には伝説上の生き物だが、ギルは精霊に何故か愛されており、何度かその姿をみたことがあるので、実在している事を反乱軍の全員が知っている。精霊に愛されているギルは、先程の精霊の少年がしたような壁を通るなど、普通人には出来ないことを出来る。
「おい、ギル、起きろ。ギル」
「……ん…」
レオンがギルに声をかけると、ギルがゆっくりと目を開けた。
「ギル!」
「…レオン?」
「大丈夫か?俺たち、サンディに操られてたみたいなんだ」
「操られて……あぁ、そういう事ですか」
「理解はやっ」
「そのくらい普通です」
「あーそうですね(棒)」
ギルは会話が終わると、レノアのもとへ駆け寄り、深く頭を下げた。
「レノア、申し訳ありませんでした。あんなのに操られるなんてとてつもない馬鹿です。どんな罰でも受け入れます」
「え、罰なんてそんなことしないよ。私、またここでみんなと暮らすの。今回の事は気にせず、もう一度みんなを信じたい。そう思ってる」
「そうですか……貴女の信頼を取り戻せるよう、出来る限りのことをしたいと思います。これから、宜しくお願いします」
そう言って、ギルは心からの笑顔を浮かべた。
こうして、レノアと反乱軍は元の生活に戻った。
しかし--
消えてしまった、レノアからの信頼
溢れ出す不安、恐怖
それが、徐々に徐々に、誰かを狂わせていく
狂うのは--?
「お前の全ては、俺のもの。他の誰にも見せちゃいけない。宝物は、大事に閉じ込めないと」
「全ては計画通り。貴女の恋情も、愛情も、依存も……これで貴女は、一生私のものです」
「なぁ、レノア。一緒に死のう。そうすれば!そうすればさぁ、永遠にお前は、おれのものだ」
「うるさいうるさいうるさい!嘘をつくな!そんな事言う口は、ぼくが、ぼくが壊してやる!」
「嫌われた嫌われた嫌われた!こんな僕、もういらない。レノアに嫌われた僕なんて、もう……」
な、なんと!初めての感想を頂きました。
すごい驚きました。でも、それ以上に嬉しかったです。
叫んではないけど、噛みまくって“感想”って言えないかと思いました。人間って、あんなに噛むんですね。
ひよこレモン様、改めて、本当にありがとうございました!“おもしろい”って言われて、こんなに感動したの初めてです。
すごいやる気出ました。その結果がこの更新です。私にとっては驚きの速さです。
また地獄が迫ってきましたが、精一杯頑張ります。