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6話 選んだ道 その結果(後半)

6話後半

マルセル、ルイ、アレクの順番で、レノアと出掛けた日の夜の出来事です。

“赤”


どろりと流れる、赤いそれ


ぽっかりとあいた穴から、とめどなく流れてくる。

押さえても、押さえても、まったく止まらない。

それは、とめどなく流れていき、地面に“赤”を広げていく。土が、それをのみ込んで、赤黒く、色を変える。自分の額から、それが流れて、視界を、赤く染める。

押さえても押さえても、それは止まらない。

“赤”は、止まらない。徐々に、地面を染めて、視界を染めて、全てが、“真っ赤”に染まっていく。



“バッ”


「はぁはぁはぁはぁ、はぁ、はぁ……」


ベッドから起き上がったマルセルは、肩で息をしながら、徐々に呼吸を整える。

一瞬、視界が真っ赤に染まっているような錯覚を覚えるが、そこはいつもの、月明かりの差す自分の寝室だ。


マルセルがこの夢を見るのは、随分久しぶりだ。

理由は、マルセル自身も理解している。確実に、今日の出来事が原因だろう。レノアが転んだ時、傷口から流れ出た“赤”。それは、マルセルのトラウマを刺激するには十分だった。それからは、ただただ怖かった。レノアが、()()()()()()()()()消えてしまうのではと、ずっと、怯えていた。


「今度は絶対に守って見せる。そのために、危険は全て、排除しなければ」


マルセルは、暗く濁った瞳で呟く。

その呟きは、誰にも聞かれることなく、暗闇に消えていった。



□□□□



「ねぇ」


ルイが、暗闇に向けて声をかける。

すると、目の前の空間が大きく歪み、全身を黒い衣装に包んだ、白髪の男が現れた。

男のまるで色素が抜けたかのような白い髪と赤い瞳、白すぎる肌は、暗闇の中で妙に存在感を主張する。


「どうしたのですか、ルイ」


男がルイに尋ねる。


「あの2人、最近負の色が強いんだ。あと、反乱軍についても、このままにはしたくない」

「……そうですね。あの2人は、あなたや彼女にとってよからぬことを考えています」

「……やっぱり」

「反乱軍は………あなたのしたいようにすれば、いいのではないでしょうか。騙されたことを愚かと笑い見捨てても、憐れと思い助けても、誰も、あなたのことは責めません。自分が正しいと思う選択をしてください」

「……レノアは、どちらでも気にしないよね」

「そうでしょうね。彼女にとって、もう彼らは()()ですから。あなたが、どうしたいかですよ」

「僕は………」


ルイは、それきり黙りこんでしまう。


「まあ、それはゆっくり考えればいい。とりあえず、目先の問題はあの2人についてですかね」

「あの2人は、絶対にレノアを悲しめる。しかも、同じなんだ、“色”が………絶対、あいつには何かある。これ以上、レノアと近づけさせない」

「僕のこの目があるかぎり、レノアを守るのは、守れるのは、僕だけだ」


そう言って、ルイは右目を隠していた前髪をかきあげ、窓に映った自分の右の目を見つめる。

そこには、どんな光ものみ込んでしまいそうな、どこまでも深い()()の目があった。



□□□□



「兄様ー」


夜、城を脱け出したアレクは、鬱蒼とした森の中にいた。

アレクの声が、冷たい夜の空気に染み込んでいく。


「アレク。随分と楽しそうだな」


アレクの前に、1人の男がゆったりとした歩調で現れる。

薄い金色の髪が、夜風にサラリと揺れる。


「兄様!今の所順調だよ。今日もいろいろ話してくれたし、あぁ、そろそろ連れ帰りたいなぁ」

「そう急ぐな。時間はまだたっぷりある。ゆっくりといこうではないか」

「もーう。兄様はのんびりしすぎだよ。早くレノアからあいつを引き離したいのに」


アレクはそう言いながら頬を膨らませる。


「ははっ。随分と執着しているようだな。だが一応、あの女は私の()()()だぞ」

「そんなの、レノアが覚えてるわけないじゃん」

「くくっ。ああ、まさにその通りだ。あの女は私に破片も興味を持っていなかった。あの女が関心を向けていたのは、レオンと、あの女の義兄、義弟。それと……あの平民の男。私のことなどもう頭の片隅にもないだろうな………あぁ、本当に面白い」

「……相変わらずだね。兄様」

「そうか?お前はいっそうと、腹黒さが増したな」

「えー、そう?」

「笑顔が一段と黒くなった」

「あはは。褒めてくれてありがとう。そういう兄様は、意外と自由人だよね」

「当たり前だ。なぜわざわざ、あの愚かな者達のために私の意見を変えなければならないのだ。私は私のやりたいように生きる」

「それでこそ兄様。でも、あの件はできるだけ早く実行させてね。じゃないと、あいつに先をこされるかもしれないから」

「ああ、もちろん。では、また」

「うん。またねー」


男は背を向け、やがて闇の中に消えていった。

あとには、()()()()の髪を風に靡かせ妖しく笑う、アレクだけが残っていた。


なんか、いろいろと新事実が発覚しました。

レノアに婚約者がいたなんて、作者も知らなかったです。会話の流れでそうなったんです。

ちなみに、その婚約者様。もちろん未来のヤンデレです。なんかすごい発言してましたけど、まだヤンデレじゃないです。病んでないです。ちょっと思考が狂ってるだけです。ヤンデレ製造機レノアの婚約者ながら、ヤンデレにならなかった超人です。王国軍ルートで出てくるんですが、作者の頭の中では、王国軍ルートと○○ルートの人達はだいたいがレノアと会う前から思考回路がおかしいんです。だからなんです。


なんやかんやで、多分次が1章のエピローグです!がんばります!

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