6話 選んだ道 その結果 (前半)
翌日、レノアは部屋のベッドの中にいた。
もうすぐお昼、別に風邪をひいたなどというわけではない。ただやることがなくて暇だから、というのと、寒いのでベッドから出たくない、という理由からだ。
暇をもてあましているのは変わらないが、レノアの心は昨日出かける前と比べ、随分と軽くなっていた。昨日の外出により、心にわだかまっていた“彼ら”への憎しみや悲しみ、それにより浮かび上がるネガティブな考えが、随分と消えたのだ。昨日の選択は、レノアにとって非常に良いものになったのではないだろうか。
「ん~。今日も暇だなぁ。でも、外は寒いし、こういうときは昼寝だよね~」
そう言い、布団を深くかぶる。この穏やかな時間は、負の感情の少ないレノアの心から彼らへの憎しみのほとんどを消し去るには、十分すぎるものだった。
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そこは、不思議な空間だった。光の加減や、見る角度によって黒にも白にも見える不思議な空間。対になる2つの色が、決して混ざりあうことなく共に存在する、不思議な空間。
「オズウェルー」
その青年、いや、彼の性格から言えば少年だろうか。その少年は、突然現れた。黒と白の世界に、何の前触れもなく、気づけばそこに当たり前のように、以前から存在していたかのように、違和感なく存在する純白の髪を持つ少年。
その少年は、子供のような無邪気さと、長い時を生きた者の達観したような雰囲気2つをあわせ持っており、異なる2つの雰囲気を持ったその少年は、人間から見ればひどく異質なものだろう。少年は、その手に水晶のようなものを持ちながら、自らの分身の名を呼ぶ。
「なんだ、コリー」
その青年もまた、純白の髪の少年のように、突然その場に現れた。
青年は、少年と対をなすような漆黒の髪をもっているが、その顔は、まるで人の手で造ったかのように、恐ろしいほどに少年と同じ造りをしている。しかし、その人外じみた美しい顔は、到底人の手で造り出せるものではないだろう。
「オズウェル。見て見てー。この天使のハーフの子」
少年は、そう言って手に持っていた水晶のようなものを青年に見せる。
「ああ、あの……その子がどうしたんだ」
「この子さ、あのディランとメレディスが興味を持ったんだ。天使のみんなはずっと見てるし、あのフランクも、“あいつが執着してるからな”って言ってたまに見てたし、すごいよね」
「へー。で、お前は何をするつもりだ?」
「この子とお話したいなぁって」
「はぁ。だから、いつもいつも言ってるだろ。お前はもっと人と関わるのを控えろ。そのうちばれるぞ」
「大丈夫大丈夫。そこらへんはうまくやってるから」
「そういう問題ではないんですよ、コリー様。あなた方が関わること自体が、人間の感情に影響を与えたり、我々の世界に取り込んでしまったりするのですから」
突然現れた全ての色素が抜けたような白髪の青年が、どこか疲れた顔でそう言う。
「もーう。オズウェルもアルヴィンも厳しすぎるんだよ。こんぐらいいいでしょ?」
「「そんなわけないだろ・でしょう」」
2人は口を揃えて否定する。しかし、その顔はどこか諦めているように見える。少年が1度言い出したら、絶対にそれを実行してしまうことをわかっているのだ。
「コリー様。その案、素晴らしいと思います。彼女は私たちの女神です。私も是非1度会って話してみたい」
そう言いながら、また1人青年が現れる。
「アイザック、何をしているんですか」
白髪の青年が、呆れたように現れた青年に言う。
「彼女の話をしているのが聞こえたので、是非参加したいと思いまして」
そう、にこにこと笑いながら言う青年。
「アイザック!やっぱりこの子を連れてきた方がいいよねっ」
純白の髪の少年が、水晶のようなものに映る少女を指差しながら言う
「えぇ、もちろん」
「うんうん。そうだよねぇ。じゃ、早速行こう!」
2人は、自分たちだけで勝手に話を進めていってしまう。
「はぁ。この人達はどうしてこう、いつもいつも」
「アルヴィン。すまない」
「いえ、大丈夫です。いつものことなので」
「「はぁ」」
この中ではまともな2人が、揃ってため息をはいた。
これは、レノアが海に行った日から、1週間後の話である。
残り3人書く予定だったのに、なぜか1800文字。いつも1000~1500ぐらいなのに……
ということで、前半後半わけました。
多分後半の次かその次くらいでルート分岐します。作者の共通ルートでのネタがつきたんで。
といっても、まだヤンデレ達の半分とも会っていないので、もちろん個人ルートには入りません。
★ルイを選べば反乱軍ルート
★アレクを選べば王国軍ルート
★マルセルを選べば隣国ルート
★あのよくわかんない謎の集団を選べば、○○ルート
です。最後のはネタバレかもしれないので、一応○○ルートにしときます。