5話(選択肢3) ルイ
5話その3です。 4話の続きです。
レノアは、ルイと共に街の観光をしたいと思い、ルイの部屋へ向かっていた。
“コンコン”
「ルイ、いる?暇なら一緒に街に行「行く」
レノアが言った瞬間、すぐにルイがドアを開けて被せぎみにそう言った。
「あ、うん。行こっか」
それに若干驚きつつも、レノアはルイと共に城下へと向かった。
◇◇◇◇
レノアはルイと共にのんびりと観光を楽しんでいた。
ルイとの観光は会話は少ないものの、幼い頃から共に育ってきた2人にとって、非常に穏やかなものだった。
ルイと出会ったのは、5才のときだった。
周りの子供たちにいじめられても一切表情を変えずに立つルイに、興味をもったレノアが声をかけたのが始まりだった。
「こんにちは。わたしはれのあ。あなたのなまえはなぁに?」
そう、声をかけた。その小さな行動が、2人の人生を大きく変えた。
ただ、ひどく興味をひかれた。自分と同じ、化け物の少年。それなのに、自分と全く違う、たった1人で強く立つ少年。
寂しかったから。一緒に、泣いてほしかったから。悲しんでほしかったから。仲間がほしかったから。自分を重ね、慰めたかったから。理由なんて覚えていない。きっと、理由なんてなかったんだろう。もしくは、この全てが理由なのかもしれない。
ただ、そのときのレノアは、自分と同じなのに、まったく違う、その小さくて大きな少年にひどく興味をひかれ、気づけば声をかけていたのだ。
それから、2人はすぐに仲良くなった。
貴族で、家族がいて、裕福で、1人では何もできないレノア
平民で、孤児で、貧乏で、1人でも強く生きているルイ
全然、違う2人だった。真逆の2人だった。同じ、化け物でも、まったく違う2人だった。でも、同じだから共感できることがあって、違うからお互いを尊重しあえた。
いつしか、お互いがお互いにとってなくてはならない存在になり、レノアは、よく笑うようになった。ルイは、消えていた感情を取り戻した。2人は、2人で1人になった。
それはいつだったか、ある日突然、ルイが遊ばなくなった。姿を見せなくなった。レノアと会わなくなった――
それから数週間がたったある日、ルイは戻ってきた。
戻ってきたルイは、前髪を長く伸ばし右目を隠していた。レノアは驚いたが、それよりもルイが戻ってきたことに喜んだ。だから、気付かなかった――
それからのルイは、以前よりレノアと共にいるようになった。
レノアに時々 “あの人には近づいてはダメ” そんなことをいうようになった。そんな小さな変化に、幼いレノアは気付かなかった。
それから時は流れ、2人は今でも2人で1人だ。ルイにだけは、自分の本音をさらけだせる。
今の自分の、憎いのか、悲しいのか、自分でもわからないぐちゃぐちゃの心の中を、ルイになら自分の思うままに話すことができる。何も言わず、黙って聞いてくれるルイに、心が軽くなる。レノアにとってルイは、唯一無二の存在だ。
そんな、大切な存在。
だからこそふと、不安になる。
時々ルイが自分に向ける、何かに怯えるような視線。
時々見える、真っ白な包帯。真っ赤な血。
しかし、聞かない、聞けない。それを聞いたら、ルイが消えてしまう。またあの時のように、会いに来てくれなくなってしまう。そんな、予感がするから――
ルイについて語っただけでしたね。
昔の2人について書いたらこうなりました。
選択肢もあと1つ。明日も頑張って投稿したいと思います!