ミドルフェイズ7
FHのアジトを壊滅させた双葉たちは、一度UGNのM市支部――すなわち、双葉たちが本来所属する支部――へ戻った。こちら側の支部で調査をすることがあるからだ。
そして三人は軽く休息を取ると、すぐに調査活動へ乗り出した。
行方を眩ませた『電光月下』なるFHの改造オーヴァード。探し出さなければ、いつS市が破壊されるか分からない。早急に見つけ出す必要がある。
双葉は自分の支部長室へと赴き、自らの支部の端末からUGNのデータベースへ支部長権限を用いてアクセスした。おそらくS市内に潜伏しているであろう『電光月下』について、何か情報は得られないか調べるためだ。
このデータベースにはUGNエージェントに関する情報や、過去に確認されたFHエージェントの情報がまとめられている。もしもどこかのUGN支部で『電光月下』の目撃情報があれば、このデータベースに登録され情報が共有されているだろう。容姿の特徴や戦闘スタイル、危険度や過去の活動などが分かれば、それだけ対策もしやすくなる。
支部長権限を利用すれば、一般のエージェントでは閲覧できないような機密度の高い情報にも目を通すことができる。より詳細な情報の中から手掛かりを探し出そうと、双葉はマウスを操作して次々にディスプレイへ表示されるページに目を走らせる。
敵対するFHエージェントのコードネームが分かっているのだ。ここから、何か手掛かりは得られないか。
すると、彼の目に一つのページがとまった。それはUGNのエージェントが登録されるページの一つだ。多くのUGNエージェントたちのコードネームが書かれている、そこにFHで改造されたエージェントのコードネーム、『電光月下』の名前があった。
なぜ、FHエージェントであるはずのコードネームが、UGNエージェントの中に?
双葉はかすかに震える手でマウスを操作し、そのページを開いた。
双葉が支部長室でデータベースを調べているそのころ、ノハラとジバシはとある人物をM市支部に迎えていた。
その人物はUGNの日本支部職員の一人で、ジバシは伝手を頼りにして、萩村紫電にまつわる詳細な情報を――特に、萩村が以前に務めていた支部での話を求めていたのだ。
およそ半年前、萩村はS市とは別の支部で支部長を務めていた。しかしその支部はFHからの襲撃に遭い、萩村は右腕を失う大怪我をしたという。
そのころの話が嫌にジバシの頭の中でひっかかっていた。だからこうして日本各地の支部を統括する日本支部の職員の一人を頼った。
その彼から伝えることがある、と連絡を受けてジバシたちは一度M市支部へもどってきたのだ。
表向きは喫茶店として営業しているこのM市だ。主に厨房は支部長の担当だが、アルバイトとして働いているジバシもコーヒーの淹れ方は支部長から教わっている。客人にコーヒーをだし、すぐに話を伺う。
「それで、萩村紫電についてですが」
彼は隠し立てすることなく、すぐに語ってくれた。
「萩村紫電。もう知っていると思うが、半年前にFHとの戦いで右腕を失う大怪我を負った。だけど彼が失ったのは腕だけではないんだ。その戦いで、当時部下で恋人だった女性を亡くしているんだよ。それ以来、部下を失うことをひどく恐れるようになってね。戦闘では自分から率先して前に出て仲間を庇うようになった」
「そんな……」
萩村紫電は、恋人であった女性を半年前に亡くしている。FHの手によって殺されてしまったのだ。
「その女性の名前は?」
そして、その女性の名前を聞いて、ジバシは驚愕した。
「亡くなった女性の名前は稲見月子。エンジェルハィロゥとブラックドッグのオーヴァードだったよ」
双葉がUGNのデータベースの中で見つけた、『電光月下』のページ。そこには、こう記載されていた。
UGNエージェント、『電光月下』。本名、稲見月子。
半年前、FHとの戦闘で死亡。




