#11「小さな償い」
今回は残酷な描写を含みます。
苦手な方はご注意ください。
「だから、薫子ちゃんが嫌がらせをしていた相手は、愉嬉歓じゃなくてずーっと私だったんです」
知らない狭い部屋で知らない男の人2人に、みんなの話をした。
薫子ちゃんのこと、蛇籠先生のこと、猫さんや知真輝くんのこと。
そして、愉嬉歓の話。
「私、愉嬉歓のことを守ってるつもりでした。頼ってもらっているつもりで。でも逆でした。愉嬉歓は私のことを助けてくれていて、私は気付かないまま愉嬉歓を苦しめてただけでした」
向かって右に座っている男性は右目から涙を零した。
そして、私に向かって
「辛かったね」
と、掠れる声で伝えた。
「いいえ、辛かったのは私じゃないです。私に苦しめられた愉嬉歓と、嫌いな私に殺された薫子ちゃんです」
薫子ちゃんを殺したあの日から
薫子ちゃんと一緒に私の感情も死んでしまった。
何を見ても感心しなくて、何をされてもどうも思わなくなってしまった。
これは薫子ちゃんの呪い。
当たり前かもしれない。あの日に善悪をつけるとするなら悪いのは私だ。
左に座っている男性は分厚い眉間にしわを寄せたまま私を睨み続けていた。そのしわは小さな瞳にすらかぶさっている。
私の前に2つ枚の写真を提示する。蛇籠先生と三途川先生の写真。
「あなたの担任の蛇籠叶月さんは昨日亡くなった。自宅で首を吊った状態で発見された。見つけたのは同じ学校の教師、三途川小鳥さん」
その言葉を聞きながら、写真の中で微笑む蛇籠先生を見つめる。
良かったね、薫子ちゃん。
蛇籠先生、そっちに行ったよ。
写真を差し出した方の男性は、力いっぱい机を平手で叩く。
「何が面白いんだッッ!!!お前が殺したようなもんだぞッッ!!!」
「…お、落ち着いて」
右の男性がなだめている。鼻息を荒らげたまま私の言葉を待つ左の男性。
「私、愉嬉歓から学校を奪っちゃったんです。彼の全てを」
愉嬉歓の顔、そして猫さんや知真輝くんの顔が浮かんだ。みんなの背景に綺麗な白のゼラニウムも。最後に教室に飾ったっけ。
ごめんね。私1人じゃうまくいかなかった。
皆をもっと頼ればよかった。1人でうまくいくはずなかったんだ。それに気が付けなかった。
本当に恥ずかしいよ。私はただ、
4人で並んで帰りたかっただけなのに。
薫子ちゃんの呪いだ。両眼から涙が止まらなくなっちゃった。こんな時だけ返してくれるんだね。
私はただ一言「ごめんなさい」と2人に伝え、口の中で舌に歯を強く立てた。




