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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第2章 解放者契約
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第9話 キングダムの内部

 紙に書かれたテンプレートの契約内容を一通り読み終えたころ、森はその紙を裏返しにして、コップをその上に置いた。


「さて、話を元に戻しましょう。支配形態に移っていった過程ですよね。


 さっきいいたように、情報展開は上から下に流れてきます。そして、実際に新しく変更されるという契約内容が流れてきたんです。


 チャット内で確認されましたが、誰ひとりとしてこの情報が流れなかった人物はいなかった。もし、情報が流れていないところがあれば……すなわち、王からの命令でなければ、誰かしらそれは嘘だと発言します。


 匿名でメッセージを送れますからね。でもなかった」


「確かに……上を取られたら、あとは一気だな。逆に言えば、俺も上を取れば一気につぶせるということだが」


 そんなことを話していると、ふと頭に浮かんだのはひとりの女子生徒。王と名乗る人物……。


「その話だと、お前も当然、王の正体を知らないんだよな?」


「ええ。ひとつ上の人物しか知りません。もちろん、その人物が王である可能性だって無きにしもあらず、ですけど……低いでしょうね、その確率は」


「ちなみにそのひとつの上の人物は男子か? 女子か?」

「女子ですね」


「っ!? ちなみに学年は? そいつの特徴は?」


「え? ええと、たぶん2年ですね……。特徴……何回もあっているわけではないので詳しくは覚えていませんが、背丈はあたしより少し高いぐらい、髪は黒でセミロングってとこだったと思います」


「……そうか」

 もしかしてと思ったが、あの女子生徒と同一人物ではないことはほぼ間違いないだろう。まあ、そんな簡単なことではないのは十分承知している。


 しかし、本当にあの女子生徒が王という人物なのだろうか……あいつが、元の王を潰して今のキングダムにした? 確かにあの人物から狡猾なものは感じられたし、そういうことをしてもおかしくはないのかもしれないが。


「待って、じゃあ、森さんの下にも人っているの?」


 ずっと圭と森の話を聞いていた次郎がふと声を上げた。


「はい、確かにいます。上からもらった情報は下に渡すことをしています。ただし、その下のアカウントのさらに下がどうなっているかは分かりませんけどね」


「それって、どうやって、下を得たんだ?」


「あたしの場合、どちらかといえば、ひとつのグループごとキングダムに入ったという方が正しいですね。キングダムのことを聞いて、友達同士でグループを作ったあと、そのグループでキングダムに入って今の状態にあります」


 そのことを聞いて、圭はなるほどと思った。


「なら、お前には仲間がいるということだな?」

「手を貸すのはあたしだけですよ。みんなを巻き込む気はありませんから」


 こっちがいうよりも先に森が釘を刺す形になった。思わず「うっ」と口をつぐむことになる。


「これはあたしが勝手にやっていること。みんなとは関係ない。それに、解放者としても、群れるのは避けたいはずですよね」


「そう言われたら……そうとも言えるな」


 解放者のことを知っている人物がいれば、それだけ情報を持っている人物が多くなるということ。多ければ多いほどその管理は難しくなる。下手に仲間を増やすよりは、少数でこっそり切り込む方がよっぽど都合がいいだろう。


 少なくとも、数でおせて勝てるという展開はあまり望めないだろう。


「まあ、大体はわかった。お前の立場も、大筋は見えてきたな」


 そして、圭がすべきことを見えてきたと言える。面倒なことであることに変わりはないが、無理なことではない。事実、一度下克上があったキングダム。ならば、その上をとるのも可能だと、単純思考で言える。


「うん、しかし疑問はまだあるな? 俺はキングダムが集まっている時があったのを見かけたが? ネイティブの時と同じように、キングダムの連中が確かに空き教室に集まっていた。


 その情報網があれば、わざわざ集まる必要があるとは思えないがな」


「そこはあたしも疑問に思っていたところではありました。でも、おそらく、それこそリーダーが変わった、組織が変わったということをはっきり示すための行動だったのかもしれません。


 あとは……その集まりを嗅ぎつけて情報を得ようと群がるネイティブ側の生徒を見つけて逆に情報を得ようとしていたのも、狙いの一つだったのでしょうね」


「……」

「あれ? 先輩、なにか身に覚えがありました?」


 少し意地悪でもするような表情で森がそんなことを言ってくる。向かいで「うんうん」と頷いている次郎もいた。


 ああ、そうですよ。王の策略に引っかかり、まんまと王とかなのる女子生徒に目をつけられましたよ、ああ、つけられましたよ!


「あ、ちなみにその集められた時にあたしが情報をもらった人物は、直属の上ではなかったです。といっても、顔は見せなかったのですがね……男子生徒ではありました」


「集められた人物は? お前のほかには誰がいた?」


「完全にランダムでしたね。あたしの知り合いはその場にいなかったです。キングダムのグループを完全にバラバラに集めていたんだと思います」


「もとある情報網を一時的に崩したと……そうまでして展開した情報は?」

「ネイティブの情報を集めろ、というだけですね。支配形態になってから行われた初の本格的な命令でもありました」


「なるほどね……だが、その情報を直接会って流してきたその男子生徒は、ひとつのキーとなる可能性はあるな」


「……そうですね。その人物の特定は難しいですが……、おそらく、かなり上の立場にいる人物だと思います。まさか、王本人だとは……思いませんがね。あと、そういった人物は複数いたのも確認済みです」


「幹部レベルが何人かいるってところか」

 まあ、組織の形態から見ても、当然のことだろう。

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