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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第4章 革命の時は来た
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第17話 学ばず同じ展開?

 圭はスマホ画面をタップするとポケットにしまい、ゲームに集中し始めた。


 表情を隠すためのマスクを今一度顔に抑え込む。顔は絶対見られてはいけない。このアドバンテージだけは絶対に守りきる。そして一番右端に意識を向けた。


 それは毒入りカード。こいつをネイティブに選んでもらう必要がある。さあ、ネイティブはまずどう攻めてくる?


「さて……お前は前のゲームで、手札の端にジョーカーを置くことは避けていたよな」

「……はい」


 質問なので答える。


「それは五枚あるゆえ、二枚目と四枚目があったからできたことだ。実際……お前は意識的に端をさけて並べたんじゃなかったのか?」


 そういわれ、前のエンゲームのときを思い出す。あの時は何も考えず自然に並べたつもりだったが……本当にそうだったか? いや……違うな。


「端は避けていましたね。たぶん、端にジョーカーを置くのは躊躇していたはずです」


「だよな。だが、今回はどうだろうな? 端か中央しかない。その中で君はどちらのほうが選択しやすいか。やはり、ど真ん中のストレート。端より中央の方が安心しやすい傾向にある。


 だが、お前は前のゲームで端を避けて失敗した。今の選択肢は端か中央の二つと考えれば」


 今度は端が狙われにくいと端を選ぶ?


「逆に端の二つをせんた」

「なら、中央をまずどうぞ。お召し上がりください」


 ネイティブの説明を聞くより先に圭は中央の伏せカードに手のひらを向けた。


 おそらく、こいつは別に本当に圭が端を選ぶと断定しているわけではない。本当にそうなら、わざわざ口に出して説明などしないだろう。なら、本当の目的はその説明を聞いた圭の反応を見ることだ。


 残念ながら右端が毒入りなので端はあたっているが、ここであえて前に出てみる。

「さあ、どうぞ」


「……ほう、逆に攻めてきたな……中央のこのカード……。毒入りじゃないのか?」


 ヘルメットがない今、奴の視線はばっちり見える。自分の手元なんか見ていない。次郎のほうも見ていない。ただただ純粋に圭を観察しようとしている。


「あなたの推理だと端に毒入りがあるんでしょ? なら……中央は問題ない」


 そういうとネイティブは深く息を吐いた。

「よし、ならまずこの中央は毒入りではないと仮定しよう。ではそうなる場合……」


 ネイティブは両手を両端にはる伏せカードへと伸ばした。

「この二枚のどちらかが毒入りとなる」


 そういってネイティブはまず、圭から見て左端のカードに手を添える。

「毒入りは……このステーキか?」


 左端に乗せられる手が離れ、今度は右端のカードに手が添えられる。

「それとこちらのステーキか?」


 そしてその手もゆっくりどけられ、再び中央のカードに寄っていく。

「それともやっぱり、このカードが毒入りだったり?」


 とにかく心を落ち着かせてうつむいた。心を読まれるな、ただそれだけに一身をささげる。読まれなければ勝ちなんだ。なら三分の二の確率で勝てるんだ。

 奴に表情は読み取れない。ただ、無表情のヒーローマスクが奴の目に映るだけ。

 なら……。


「なら……中央は問題ないな。いただきまーす」

 思わずピクリと反応してしまった。


 何とも嫌味がこもった「いただきます」。そんな言葉を放ったネイティブは躊躇なく中央のカードを自分の方に引き寄せオープンさせた。

 もちろん、出てくるのは……普通のステーキ。毒入りではない。


「まだだ、まだ二つ、端にある。端のどちらかは……」


「悪いな。もう分かってるぞ」

「え?」


 そういってネイティブはゆっくりと右端のほうに手を持って行った。

「これが……毒入りだな」

 ……当たりだ……。

 同時にネイティブの口角が上がる。


「当たりらしいな」

 そういってネイティブは左端のカードに手を添えた。毒でないほうに……。


 いや、まだだ。

「本当に……そう思いますか?」

「ああ、そうだな。間違いない」


 圭の攻めなどもろともせずネイティブは左端のカードを自分側に引き寄せた。

「仮面で表情を隠せば読み取れないと思ったらしいが甘いな」


 そういってネイティブは背もたれに思いっきりふんぞり返った。

「気づかなかっただろう。お前、体がお前から見て右に向いていたぞ」


「……え?」

 慌てて自分の体を確認した。確かに体は右端にあるカードのほうを向いていた……。


「そして顔は左寄りだった。カモフラージュしようとした結果だろう。だがな……お前の深層の意識が右に……毒入りに向いていたんだな、これが」


 ……体の向き……そんなものが……!?


「この時点でまずこのカードは毒入りでない可能性が高かった」

 そういって左端にあったカード、今はネイティブの手元にあるカードをととんとんと叩く。


「では、さっきの中央のは……?」


「問題はそれだ。右端を向いていたが、中央に意識を向けていた可能性もなくない。だが、中央が毒入りじゃないと仮定して~の下りから、再び中央に手を戻したとき、お前の肩の力が抜けたのを感じた。それで確信したんだよ」


 ……完敗だった。表情かくして読み取られまいとしたが……それでも無意味。ネイティブのいうとおり甘かったのか……チクショウ……。


「せめて金の返金を要求しなければな……お前らの契約解除させるぐらいなら交換条件で認めてやったかもしれないのになぁ」


 本当にそうだ……確実に勝てる見込みがないのに……こんな勝負を……。


 チャンスをものにできなかった……せっかく正体を暴いたのに……すでに無駄にしてしまった……浅はかな考えで勝負を挑んだ自分が憎い……ひたすら憎い。なぜだ……なぜこんな勝負を挑んだ?


 勝てる見込みがあったから? 惨敗じゃねえかこの野郎が!


 圭はマスクの下であざ笑うネイティブを見るしかできなかった。ネイティブはかちほこりながらゆっくりとカードを伏せられたカードをめくり上げていく。


「残念だったな、小林圭。お前の負けだ」


 敗北は決定した。そんな思いで目をつぶった。

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