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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第4章 革命の時は来た
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第3話 誘導

 そして、教室には中央にポツンと置かれた投函箱。放課後そこに二人、圭と次郎は立っていた。


「じゃあ、俺は入れるからな」


 次郎はそう言って投函箱に契約の結果、情報なしで増額された1万六千円が入った封筒を投函。封筒には次郎のアカウント名が記載されている。対して圭はその投函箱を観察していた。


 箱はざっと一辺二十センチメートルの正方形の形。そこまで大きくはないが隠し持てるようなしろものではない。だとすれば、この箱を取りに来るのはまず間違いなく、学校の人気がない放課後遅くか、朝早く。


 箱を持って歩くのは目立つだろうからそれは避けるはず。


「どうしたんだ? 箱が気になるのか?」

「うん? ああ、まあな」


 やはり、尾行が最善手……しかし、うまくいくものかどうか……。


 投函場所から少し離れたところで次郎に声をかけた。

「次郎、ひとつ、お前に頼みたいことがある」


「頼み?」

 あんまり次郎を動かすのは避けたいところだ。下手に動かして、そのことをネイティブに知られたら元も子もない。だが……尾行がうまくいくとも限らない。


「ここの教室を見張っていてもらえないか? そして、箱を持ち出した人物を見つけたら尾行してくれないか? 箱がどこに行くのかを知りたい。無論、誰にも見つからないようにしろよ。見られないこと最優先で行動して欲しい」


 それと同時に、圭もまた別の場所の投函場所をターゲットにして尾行する。成功する確率を上げるのに一番いい方法は、二人で二つの場所を監視することだと踏んだ。


「それはいいけど……何が目的なんだ?」

「ん?」


 次郎が突然そんな質問をしてきたので流石に少し焦った。その焦りが生み出した睨みを次郎は、違う意味を感じたらしく、慌てて首を振る。


「いや、もちろん。お前が行動を起こすのネイティブを救うっていう目的というのは分かっているけど。この行動自体の目的っていうの……かな?」

「あぁ……目的……な」


 やはり、契約の効果が溶ける用心はしておくべきだと感じた。もし、次郎が本格的に大きな疑問を持ってしまえば、効果もなくなる可能性はある。ある程度はコントラクトに思考をコントロールされているのだ。

 しっかりと次郎に根拠を与えて誘導しないと。


「とりあえず目先も目標はネイティブと顔を見ること……正体を確かめるということだな」

「……それが、どうネイティブを救う事になる?」


 想定通り、というより狙った通りの質問をしてくれた次郎に少し笑みを出す。そして少しわざと含みあるように次のセリフを吐く。


「ネイティブとエンゲームをするためだ」

「なっ!?」


 当然次郎はそれを聞いた途端、目をまん丸にして共学の表情を見せる。


「お前、それって!」

「おい、いいから落ち着け。俺の行動はすべてネイティブを救うことになると契約で宣言しているだろう? ならば、当然この行動にも、意味はあるさ。感情的になるな」


「……そ、そうか……そうだよな」


 次郎はエンゲームの段階である程度施行することはできることを十分理解していた。ならばそれを、別の方向に誘導して思考させるまで。


「俺はネイティブを救う。ネイティブを正体を知り、ネイティブにエンゲームを挑む。そして、ネイティブを救う。ネイティブを……コントラクトの呪縛から解放してやるんだ」


「……え? ……は?」


「あぁ。今のアイツはコントラクトで俺たちを支配しているのかもしれないが、実際はアイツもまたコントラクトというアプリに支配されているようなものだろ?


 だからこそ、俺が……その支配からあいつを救い出すんだ。エンゲームに勝てば、すべてを解放させられる。それが奴をコントラクトから解放させることにつながるのは、お前も理解できるだろう?」


「そ……それが、ネイティブを……救うと……言うことなのか?」

「あぁ、そうだ」


 あらかじめネイティブを救うと言っていたが、具体的なことは何も契約していない。つまり、救うが、具体的になにかまでは指定していない。


 そしてなにより、コントラクトの支配は絶対だが、絶対になりきれていない。しはいしきれない、制限は存在しているというのが、これに大きな意味を持ってくる。


「そうか……そうだよな……そうだよ! それがネイティブを救うことに……なる」


 やはり、想定通りの反応だった。


 この反応になる解釈は以下の通り。


 確かに次郎はネイティブ側の人間だ。圭の行動を監視し、行動を制限しようとしてくる。

 だが、それは所詮契約によって無理やり結ばされているもの。エンゲームで確認できたとおり、次郎の根本、心の奥は圭を親友だと、圭の味方であると思っている。


 次郎は圭の味方でありたいと願う。だが、契約上できない。ならば、その契約より優先度の高い契約を結ばせ、さらに圭に味方することができる理由をなにかしら、それこそ強引にでも作り出せれば、ガラリと状況は変わってくる。


 次郎もまた、そのことを理解しているからこそ、自ら進んで圭の言葉に乗ってくれる。本質的には次郎は、圭の味方である。それはコントラクトでも覆せない。

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