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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第3章 最低の友情、次郎と圭
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第12話 必勝法

「そしてこれが、このゲームにおける必勝法の一つだ」


 そう言い切るより前に、圭は机にかけていた足を前に突き出す。それによって当然、机はバランスを崩し、机の中身を床下にばらまかんと倒れ始めた。


 次郎は慌てて机の起こしに行くが遅い。

 次郎が机に手をかけた時には、床下にパサりと乾いた音を鳴らしながら、ハンカチが落ちていた。


「あっ……」


 次郎が机を投げ捨てハンカチを拾いに行こうとするが、それより先に圭のそのハンカチを盗み取った。

 それをひらひらとさせてみるが百円玉は落ちてこない。床下にも転がった形跡は見られなかった。


「さて、回答だ。机の中に百円玉はなかった。答えはバツだ」


 ハンカチを丁寧に折りたたむと、次郎の前に落とした。次郎はゆっくりとそのハンカチを手に取る。そして、自分のポケットに手を伸ばした。中から出てきたのは、百円の硬貨。


「ふざけるな……こんなのいくらなんでも……ふざけてるだろ! これじゃあ、それこそゲームになってねえだろうが! 机を倒して、中身を確認? じゃけんじゃねえ!」


「うん。俺もそう思う。で? 答えは?」

「こんなの……正解なわけ……」


 そこに来て次郎の様子が変わった。さっきまで剣幕な表情を見せていたのに、とたんに震え始める。そして、ボソリと「正解」という単語を口から告げる。

 そう、この一戦の圭の勝ちとなったわけだ。


「これで、二点だ。おい、次郎。追い込まれたぞ。次勝たなければ、自動的に負けるぞ。今の次郎に、まず引き分けに持ち込める技量はあるかな?」


 次郎は一向に立ち上がる気配がなかった。当然、ゲームを進める気はなさそう。


「なんでだよ……、こんなの認める気は……なにのに……」


「納得できないか……でも、しょうがない。コントラクトで、机を倒してはいけないなんてルールを定めてはいなかった。


 といっても、これが適用されるかどうかは、はなはだ疑問だったけどな……でも、お前がそうやって正解だと告げたことが、なによりコントラクトが認めたという証拠だな」


「エンゲームは……コントラクトの判定が全てだと?」


「そうなるな……といっても、コントラクト自体はタダの……強制的な契約アプリに過ぎない。少なくともゲームをするためのものじゃない。


 となれば、コントラクトを利用してゲームをすると言うのならば、契約で決めたルール以外は、全くもってない。


 いくら相手が反則だと言おうが、コントラクトは認める。あくまでも反則だと言い張りたいならば、グチグチあとから文句言わずに、黙ってゲームが始まる前に、反則を指定しろってことだ」


 といっても、本当に自分のやったことは理不尽な気もするがな。圭がやったことを例えるならば、先生が「ダメ」と言っていないからといって、テストに教科書やパソコンを引っさげて挑むようなものだ。


 つまり、常識を考えろ、常識をって話になる。


 だが、コントラクトを介したゲームになれば、途端にそれは崩壊する。

 常識はコントラクトで指定しておかなければ、文句を言うこともできやしないというわけだ。


 特に今回、回答をするにあたって、出題者は嘘をつけない契約はしておいた。それが、こう言う状況を生み出した。

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