第7話 エンゲーム再び
じゃんけんの結果、圭が先行、攻撃側でゲームがスタートした。名付けるなら、マルバツゲームか……、う~ん、センスないな。
まあ、名前なんてどうでもいい。とにかく、次郎の実態を暴く。
「まず、先行だ。問題を提示する」
圭は一歩前に出た。次郎はそれに合わせて、これから起こることを見逃すまいと視線をこっちに寄せてきた。
このゲームに置いて、”表向き”重要なのは、提示する問題の内容か……。
このゲームに置いて答えは0か1か、全て二択だ。単純に当てずっぽうで答えれば、五分五分の勝負となる。だけど、それじゃあ、こっちに勝率を引き寄せられない。
ならば、問題は自ずと、相手に「ウソ/ホントに決まってる」と思わせて、逆の正解を叩きつけられるものとなる。だが、相手はそれを加味して答えを導き出すだろう。そういった、裏の読み合いが重要になる。
だが、所詮答えは0か1。裏の裏を書いてしまえば、たちまち反対に点を取られてしまう。そこのさじ加減こそが、重要になる。
冷静になれば、ここの部分までは大抵、たどり着けることだろう。これが、このゲームの基本的な思考の流れ。
そこまで、既に圭は理解している上で、自分の胸に手を置いた。
「俺は今、ガラケーを持っている。マルかバツか?」
「ガラケーを?」
「ああ、そうだ」
そこで次郎は深い思考に入りだしたように見えた。やはり、思考はするよな……。
次郎は圭がスマホとガラケーの二台持ちだというのは、当然知っている。すなわち、普通に真っ向から考えたらマルだ。
だが、次郎はいま、おそらく、だから答えはマルだなんて、微塵も思っていないだろう。当然、そんな単純じゃない。
次郎にとって、答えはマルとまかりきっているからこそ、マルであるはずがない、とバツである根拠を探そうとする。だが、無論、それを狙っての純粋なマルである可能性も当然ある。
そこは、裏表のさじ加減ってやつになるわけだ。
「現状の……俺の情報なからしたら、それはマルだ……」
圭はゆっくりと胸に置いた手を下げた。
「でも、”持っている”、その定義はなんだ?」
早速、そこに気づいたか……本当に冷静だな。
「それに答える義理はない」
「……なるほど」
次郎は何か言いたげだったが、観念したように引き下がった。当然だ、エンゲームは契約内容が全て。契約していないことを守る必要なんて微塵もない。
「ってことは、この問題は……持っているの定義をまず、当てなければいけないわけか……持っている……、その定義……」
”持っている”、非常にあやふやなこの言葉には、当然いくつもの意味が有る。手で握っているという意味か、所持しているという意味か、ほかにも探せばいくらでも出てくるだろう。
それを、お前はどうやって絞り込んでいく?
「単純ながら、随分と乱暴な質問だな……範囲が広すぎる」
「それがこのゲームだ、嫌なら降りるといい」
「冗談を……俺は、勝たなきゃいけないんでね」
「そうか……せいぜい頑張れよ」
とりあえず、次郎に牽制を入れるため、せいぜいの煽りを入れてみた。
こういうゲームに置いて、煽りは基本中の基本だろう。もっと、煽りスキルを磨いておいて損はないはずだ。