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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第2章 絶対なる契約
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第18話 亜壽香が語るコントラクトの現状

 その後、適当に入った喫茶店でさっそくスマホにカバーを合わせた。チェックのカバーは見事に圭のスマホを包み込み、まるで別のスマホに変わったようにさえ思えてしまう。


「うん、いいじゃん。似合ってる」


「似合ってるって……スマホに対して言うことか? 服じゃあるまい」

「いやあ基本的に肌身離さず持ち歩くものだし、似合ってるって間違ってないと思うよ」

「そういうもんか……」


 圭はそういわれ一応遠目から生まれ変わった自分のスマホに目を通し、その後はさっさとポケットにしまいこんだ。

 代わりに頼んでいたカフェオレに手を伸ばす。対して亜壽香は同じカフェオレを飲みながらも同時スマホを操作していた。


「何やってんの?」

「ゲーム。圭はゲームはやらないの? いろいろあるよ」


「う~ん……ゲームか。今は……いいかな」

「そっか……おすすめのゲームならいくらでも教えてあげるよ」


 そう言って亜壽香は圭と同じ手帳型カバーの蓋を閉じると机の上に置いた。そしてカフェオレをもう一口グッと飲んだ亜壽香は圭としっかり目線を合わせてきた。


「ねえ、圭。最近ちょっと聞いた話なんだけど」

「うん」


「……コントラクトってアプリさ。前、圭のスマホに入れたあれ……あれが……結構やばい事に使われているみたいなんだよね」


 ……今さらになってその話題が来たか。そんなのとっくの昔に身をもって知っている。でも……ここで返すべき言葉は……。


「やばい事って?」


 スマホに関しては無知と言う演出をしてみた。


 やはり、もうそのやばい事に巻き込まれているというのは亜壽香に話したくなかった。本人はまだかかわっていない以上、やはり面倒なことに亜壽香を巻き込みたくないということと、心配をかけたくないということ。


「理不尽な契約を結んだりして従わせたり……とか? 詳しい事は分からないんだけど」


「ふ~ん、俺もよく分からないな……」

 我ながら演技が臭い気がするな。これは、もっと演技力を鍛えないと。


「その……このアプリって契約したことは絶対に守り通さないといけないから……というより絶対破ることができないから……」


 ああ、そうだな。破ることができない。こっちの意思がどうであれ、絶対に。

 ん? 絶対に敗れない……。守らないといけない……ではない。あくまで意思関わらず……破ることができない。


 いや……コントラクトによって意思すら捻じ曲げられる。どちらにしても……契約を破る手段はない。これは……もしかして……。


 契約を行えば厳守される、されてしまう。契約……契約……なにも契約はエンゲームを行うためだけに有るものではない。絶対に破ることができない。この大原則は……逆転的に利用することもまた……可能なのでは?


「圭は大丈夫?」


 うつむいていた圭が亜壽香の言葉に顔を上げた。なんのことか、なにが大丈夫なのか、話の流れが分からず首をかしげてしまう。


「圭は……巻き込まれていない?」


 そう言われ亜壽香の声掛けの意図が分かった。だからこそ、笑顔で答えた。


「コントラクトの厄介ごとに? 大丈夫だよ」


「でも、気を付けてよね」

「もちろん」


 残念、注意が遅かった。でも、圭の現状などつゆ知らない亜壽香は淡々とカフェオレを飲み続ける。むろん、知られたくないことだけど。


「逆に亜壽香は巻き込まれていないのか? 面倒なことに?」


 亜壽香に対しこちらから同じ質問を出してみた。それでも亜壽香はカフェオレを物続ける。そして、最後までゴクッと飲みきるとコップを机の上にゆっくり置いた。


「もちろん大丈夫、心配しないで」


 そう言って見せた亜壽香の表情は何と表現していいのか分からないほどいい笑顔だった。それに対し圭は「そっか」としか返すことができなかった。


 それと同時にカフェの壁にかかった時計に目が行く。


「ごめん、俺、昼からバイト。悪いけどこれで」

「うん、用事は済ませたからね」


 そう言って立ち上がり、圭は会計を済ませた。そして別れる間際、亜壽香に問いかけた。


「なあ亜壽香?」

「何?」

「俺のスマホカバー選んでくれてた時、悩んでたのってなに?」


「え? いや、あれは……」


「コントラクトのこと話そうかって悩んでたわけ?」

「うん。まあ……そんなとこ。……もし、圭が知らないなら知らないままのほうがいいと思ったから……余計なことに……心配をかけさせたくなかったから」


「そっか。ありがとう。うれしかったよ。じゃ」


「うん、また」


 圭は手を振り今度こそ亜壽香と別れる。そしてバイト先に向かいながらも、さっき頭の中に浮かび始めた、大原則の利用方法を考えるのだった。

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