第15話 亜壽香による連行
あと、確認しておかなければいけないことは……契約の解除について……
『ピンポーン』
ルールを確認しているとき、家のチャイムが鳴り響いた。しかし、下には母が居る。すぐ出るだろうと思ってもう一度ルールを見だす。
しかし、そんなことするまもなく、圭の部屋のドアが乱暴に開けられた。亜壽香が部屋に入ってきたのだ。
「圭! カバー買いに行くって約束したでしょ! なんで連絡でないの!?」
「……ん? あ……」
しばらく、亜壽香の言葉の意味を考えてから思い出す。そういえば次の休みの日、スマホのカバー買いに行くって約束だった。
「あ~、でも、ちょっと今日はやりたいことが」
「な~に言ってんの。こっちは前から約束してたでしょ」
「いや~、だからさ。悪いんだけど……別の日にしてくれないか? 本当に……さ」
正直、いまカバーやらどうたらなど言っている暇はない。そんなことよりもネイティブの対策を考えなくてはいけないんだ。今、圭には譲れないものがある。
「だめ、約束でしょ?」
「別の日、……ああ、来週、来週なら絶対行く」
むろん、来週は開いている保障はない。今を乗り切るための嘘だが……。
「……分かった」
観念してくれたのか? だが、亜壽香はなにやらポケットをまさぐると一枚のコインを取り出した。
「じゃあ、ゲームしようよ。コイントス!」
ゲーム!?
『ゲーム』という単語に敏感に反応してしまう。だが、こちらが何かを言い返すまでもなく、コインを宙にはじく。それをぱっと自分の手の甲で伏せた。
「さ、表、裏、どっち?」
「ど……どっち……? お、表」
「じゃあ、表だったら来てもらうね。裏だったらあきらめる」
「は!?」
こちらが突っ込むまでもなく、手が開かれる。そこには表が上を向いているコイン。
「はい、残念。というわけで来てもらいます。あ、ちなみにコインはどちらも表ね。おもちゃのコイン二枚を表同士、両面テープでくっつけたやつでーす」
「……あ、おい。こら、てめ!」
「はい、約束通り来てもらいまーす」
どうやら亜壽香は圭の言葉などはなから聞く気はないらしい。圭の申し出は軽く蹴飛ばされ、圭はショッピングセンターに連行されていった。
あの勢いはだめだ、あの勢いは……反則だろ……。