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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第2章 絶対なる契約
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第12話 そして彼女は言う

 当然、このガラケーは本物だ。今でも通話ができるれっきとしたケータイ。スマホは胸ポケットにしまってあるが、ここに来る前、音が鳴って周囲に気づかれるのを懸念して電源を切っておいた。


 そしてなぜガラケーを持っているかについては今、やっている通り。

 もし、コントラクトにまつわる事でピンチになった場合、自分は無関係だと証明するためだ。


 幸い、ほとんどの知り合いはまだ圭がスマホに変えたことを知らない。学校内でスマホを使った回数も少ない。そうそうばれることはない嘘になるはずだ。


「あ~、なるほどね~ガラケーか。だからコントラクトとは関係ないと?」


「そうです。なんなら、ちゃんと使えるケータイか確認します?」

「いや、いいよ。君を信じるから」


 上手くごまかせたか……。だが、気になることがある。こいつは確かに、うちのキングダムといっていた。こいつはキングダムの一員に違いない。しかもかなり重要な人物だといえる。


 ……あの二人はこの女子生徒を見てもなんの反応を示さなかったところはあるが、きっとあいつらもこいつがキングダムの人だと知らないだけだ。


 圭がネイティブのリーダーの顔を知らないように、キングダムのリーダーの顔も公になっていないのだろう。そしてコイツは今、圭が情報を盗むのを阻止するため声をかけてきた。


 しかし、一体こいつは何が目的だ? こんなセリフ、はっきり言って自分はキングダムの重要人物です、と言っているようなもの。

 ただ重要人物だとばれるのは……かなりきつい情報をネイティブに与えることになりかねない。


 可能性としてはもうひとつある……ただの末端が鎌をかけてきた可能性。少なくとも圭がネイティブ側の人間だと相手も分かっていたはず。なら重要人物を装って何かしら圭から情報を盗み出せると思ったのだろう。


 だが、残念だったな。こっちはガラケーを見せた。さすがに追求しづらいだろう。

 ガラケーを持ってコントラクトを持っていない人物がキングダムを追尾していた事実と君が重要人物の可能性がある事実。どちらがより有益な情報だろうな?


「では、これで失礼します」


 圭は女子生徒に一礼し、今度は堂々とこの場を去ろうと考える。しかし、そんな圭が女子生徒に背中を向けた直後、女子生徒はその背中に声をかけてきた。


「ねえ、そういえばまだしていなかったので一応、自己紹介しておくね」


「……自己紹介?」


 足をぴたりと止めたまま停止。背中を向け続けるなか、女子生徒はさらに続けた。


「わたしはキングダムのリーダー、いわゆる『王』と言うわれるものよ」


「……ハ!?」


 突如、何を言い出すこの女? 何をバカなこと告白している? 


 この女の狙いは一体何なのだ? 大体、それが本当である証拠はない。やはり、一キングダムの末端が偽って? いや、そこまでするものか? 大体、そんなことを言うなど? 


 もしあるとしたらキングダムの幹部的立ち位置の人物が偽っている可能性……。


「あれ? どうしたの? 随分と驚いているようだけど?」


 ハッ、しまった。これが狙いか!


「コントラクトと関係ない、ネイティブとも関係ないのにそこまで?」


 このやろう……、完全に不意をつかれた。


「いえ……まさか、あなたのような方がリーダーだとはさすがに思っていなかったもので。それに……そんなことをいきなり言ってくるとも思っていませんでしたし」


「ふふっ、人は見かけで判断しちゃダメだね」

「ええ、本当にそうですね」


 なんだなんだ、こいつ……マジでめんどくさいぞ……。


「でも……なぜ無関係の俺なんかにそんな事実を?」


「いや、無関係だからこそ言っただけ。本当に無関係なら言ってしまってもさほど問題じゃないからね。だってそうでしょ?


 無関係なら君が他人にわたしが王だと言いふらす理由がない。逆にここからバレたりしたら、君はやっぱり関係者だと疑えることになるしね」


 ……なるほど。イラっとくるほど正論だ。この情報をもしネイティブに報告したら圭が即刻関係者ということになってしまう。でも、ここはあくまで無関係者で通さなければ。圭が無関係者なら、どう答えるべきなのか。


「は……はぁ……そうなんですか?」


 これだな、やはりほとんど内容を理解していない体で話を進めることだ。


「そういうことだね。んじゃあ……時間もあれだし、そろそろ、じゃぁね~」


「え? ああ、じゃあ……」


 あまりにあっさりと手を振ってその場を去っていく女子生徒に思わず拍子抜けしてしまう。

 なんというか、狐につままれたってのが、一番しっくりくる状況。なんか、いろいろとわけがわからない……。パニックなど、とうの昔に追い越していた。


 だが、それ以上に情報に対し首を刺された事実のほうがよっぽど身にしみていた。

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