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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第2章 絶対なる契約
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第11話 しまった!?

「グループ:キングダムに何か用でも?」


 完全に圭は思考の海の中だった。

 だからこそ、突如後ろから圭の耳元で囁かれたこの言葉に驚きを隠せなかった。一瞬息をするのすら忘れ体が固まる。


 そのままかろうじて動く首を回すとそこにはひとりの女子が立っていた。茶髪に染められカールを巻いたその子のサンダルは青。

 三年生。一言に言えばギャル系統の子で可愛いとエロいが入り混じったような人だった。


「誰かいるのか!!」


 驚いた時に物音や声が漏れたのだろう。トイレの中から叫び声。それに対しどうしたものかと考えるがそれより先に目の前の女子は男子トイレに向かって言い放った。


「ええ、いるよ? 聞かれたくないことでも話していたのかな?」


 女子が放った言葉の後、しばらく沈黙があったが、やがてターゲットは乱暴にドアを開けてきた。圭は咄嗟に顔を壁の方に向け隠す。ターゲットに顔を見られるのはまずい。幸運にもターゲットはこちらを一瞬見はしたがすぐ逃げ去っていった。


 さて……さらにしばらく続く無言の時間。もう、それはそれは冷たい空気が流れていた。


 圭は決して女子生徒に顔を合わせることもなく、ドアのほうを向いたまま。それでも意を決し顔を上にあげた。

 そして、女子生徒から逃げるように歩き出そうとする。


 のだが、女子生徒は声を上げてきた。


「君、質問に答えてもらってないよ」


 ですよね。ここで逃げられるわけはないか。とにかく言い訳を。


「その……たまたまだったんですよ」


「たまたま? たまたま盗み聞きしていたの? いい趣味しているね、君」


「ええ。ていうか盗み聞きじゃないですよ。たまたま四階に来て、トイレ行こうとしたら珍しく人がいてなんの話をしているのかなって思って」


「へえ? そうなの? じゃあ、別に悪いことしてたわけじゃないんでしょ? だったら、こっちに顔を見せてよ。

 背中見せたまま話すなんて先輩に対して失礼じゃないかな?」


 返す言葉もなく、ゆっくり顔を女子生徒と合わせた。目線が合うと女子生徒は嬉しそうに笑みをこぼす。


「で、なんで四階に来たの?」


「だ、だから……たまたまです」


 だめだこりゃ……どうしようない。まともな言い訳が全然思いつかない……。なら、逆に質問し返すしか道はないか。


「そういう先輩こそ、なぜここにいるんです?」


 そう聞くと女子生徒は一瞬止まったが、そのすぐ後にすごくいい笑顔を見せた。本当に一瞬にして惚れるようなレベルの笑顔。でも……内容は。


「うちのキングダムに入っている子が君に尾行されているのに気がついたからだよ。君がトイレのドアの前で盗み聞きしようとする、あやしぃ~行動してたからさ」


 全部見られていた……我ながら情けない……。いや、ターゲットばかりに神経を燃やし、周囲に対する注意を怠った自分が甘いのだ。これはもう、仕方ない。


「というか、単刀直入に言うよ。君ってネイティブの人間でしょ?」


 だろうな、来ると思った。そうなるだろう。キングダムと思われる人物を尾行するのだから……そう思って間違いない。

 でも、それに関しては対策を施していた。


「済みません、ネイティブってなんですか? 大体、キングダムってのもよく……」


「ふふっ、何を言ってるの? そんな嘘見え見え」


「いや、本当に分からないんですけど」


 真剣な表情を作りしっかり女子生徒と向き合った。さすがに女子生徒も観念してくれたようで、ひとつ息を吐きくと圭にゆっくりと近づいてきた。


「コントラクト。スマホのアプリで作り出されたグループのことね。そんなグループの中で今、キングダムとネイティブの間に緊張が走っているの」


「あ~……聞いたことあります。契約がどうたらって。でも、ごめんなさい。俺、コントラクトのアプリは使っていません。というか、そもそもスマホを持っていないので」


 そう言って圭はポケットからガラケーを取り出し見せてみた。

 これは圭が前からずっと考えていた逃避対策の一つだ。ガラケーとスマホ同時持ちということを、最大限に生かしてやる。

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