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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第1章 コントラクト
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第1話 契約しようよ

コントラクト 

ルール


第一章

 大原則


・このアプリで結んだ契約は“絶対に”破ることができない。

 ショッピングセンターにある携帯ショップ。一角のテーブルで座る小林圭こばやしけいは手に二つのものを持っていた。右手にはガラケー。今までも持っていた格安のケータイ。


 そしてもう一つ、左手にはデータ通信のみできる格安スマホ。父曰く、一番安上がりな契約方法らしい。


 圭は今日、スマホデビューをした。



「ふ~ん、で、ケータイとスマホ。両方持つことになったわけか」


 通う高校への登校中、隣で圭が新しく手に入れたスマホを見る女の子がいた。泉亜壽香いずみあすか。圭と同じ高校二年。


 実に自然体な色の黒髪の持ち主でその髪が背中にまで軽く届くストレートロング。ずいぶんとスレンダーな印象を持っており、男子からはそれなりの人気を持っていると聞く。


「そういうこと。スマホのことはほとんど分からねえから、いろいろ聞くぞ」

「そういうことなら、どんと任せてよ!」


 そう言って腐れ縁の幼馴染、亜壽香は大きさ控えめな胸元を強くたたいて見せた。しかし、その後すぐに背中を丸めつつ、圭に近寄ってくる。


「ところで、圭……その……スマホのことなら何でも任せるっていうのを条件にしていいから……ちょっと……あたしの頼み、聞いてくれない?」


 急にちょっとたどたどしい雰囲気になる亜壽香。圭はスマホをポケットの中にしまいながら亜壽香のほうへ顔を向けた。


「なんだよ、言ってみろ」

「あのね……」




 で、帰宅後、圭は机の上で三つの顔とにらめっこしていた。その顔はみんな大好き(?)諭吉さんの顔。すなわち、三万円である。


 周二で入る圭のバイト代が月二~三万ほど。うち、一万ほどは自主的に家計へ出している。別に本気でバイトやっているわけでもないしこんなもの。


「すなわち、大金……」


 では、なぜこうやって三万円を下ろしてきたか。その答えは極めて単純、亜壽香が頼みと言って「三万円を貸してくれ」、そう言ってきたのだ。

 流石に、金額があれなので、その場でOKは出せなかったわけで……。とりあえず、家に帰って考えると言って、ここにいるわけだが……


「でも……幼馴染だし……信用は……あるのかな?」


 もうしばらく札のにらみ合いを続けたが決意。亜壽香に家に来てもらうよう連絡しようとケータイを取り出す。

 しかし、スマホがあることを思い出し、教えてもらったLIONとかいうコミュニケーションアプリを立ち上げた。


『例の件で話がある。家にまで来てくれる?』


 慣れず、おぼつかない操作ながらメッセージを送信する。すると直ぐに既読という文字がメッセージの横に現れ、ピロンと言う音と共に返事が来た。


『OK すぐ行く』


 その後、ペンギンが家を飛び出すスタンプが送られてきた。そんなスタンプはどうやって送るのだろうか、などと思っている矢先、今一度ピロンとスマホが鳴る。


『メッセージ送信、よくできました。偉い!』


 ……なめやがって。よし、張り倒そう。

 ちょうどいいスタンプも見つかったので返しておいた。イラストはLIONのマスコット、ライオンが「なめやがって!!」と言いながらもう一体のマスコット、ガゼルを張り倒す姿だった。


 かわいいイラストでごまかしているようにみえるが結構残酷な気がする……。


 そんなので他のスタンプを見ていると、家のインターフォンが鳴り響いた。亜壽香の家とはそう遠くない。

 もう、来たのだろう。気づけば亜壽香が圭の部屋に入ってきた。


 走ってきたようで肩で息をしていた。こっちががんばって返信したウィットに富んだスタンプも既読になっていない。


「LIONだとずいぶん余裕ぽかったが?」

「はぁ……はぁ……うん、水……」


 会話のキャッチボールすら出来ない亜壽香に水を与える。亜壽香はコッ一杯の水を一気に全部飲み干すと一度深い息を吐き、圭と目をしっかり合わせてきた。


「で、三万円は!?」

「あ……そのな、貸すことはできるんだけど……」


 頭をかきながら床に座る亜壽香と目線を合わせるよう自分も座り込む。


「返せるのか? そんな金」


「もちろん! 必ず、必ず返す!」


「いや……そう、口で返す返すってもさ……バイトしてるわけでもないだろ、お前? いや別に俺はお前を信用していないってわけじゃねえけどさ。使い道も言えないんだろ?」


「う……うぅ……」


 うつむく亜壽香。黒い髪が前のほうに垂れてきて、ゆらりゆらりと圭の目の前で揺れる。まるで催眠術だな、なんて場に似合わないことを思っていると亜壽香が急に顔を上げた。


「そうだ! なら、契約しようよ!」

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