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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第2章 絶対なる契約
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第3話 最悪の面談

 圭のスマホに再びネイティブからチャットが来たのは二限目。今度は個人チャットで圭に時間場所を伝えてくる内容だった。場所は特別棟四階で西から向かって一番目の教室、今日の昼休みだ。


 というわけで、購買で我先に購入しようと荒れくるう生徒の波を潜り抜け、やっぱり一番好きな卵サンドを買うと口に放り込む。そしてその指定された特別棟、四階へと向かった。


 圭の前を歩いている人物、その教室から出ていく人物がいくらかいた。おそらく全員がネイティブに支配されている人たち。心なしか、表情は暗いように思える。


「……なんだ?」


 圭はその人たちから何か視線を感じていた。教室に向かう人たちに向けられている視線かと思っていたが、どうも違う。圭の前にいる人物に対しては誰も目線を向けようとしない。


「俺の顔になにか付いているのか?」


 試しに窓に薄く映る自分の虚像を見てみるが別段、おかしなものはない。


 教室の前まで行くと前にいる人物と並んで教室の前に立った。どうすればいいのかもわからないので、その前の隣の女子生徒と同じように待機してみる。


 しばらくして再び教室のドアが開いた。そこから出てくる二名の人物もまた圭の方に視線を寄せる。明らかに隣の人は無視だ。だが、その人たちもすぐその場を離れていく。


「これ……どうも、俺の自意識過剰ってわけでは……なさそうだな……」


 そんな背中を追う中、向こうからまた別の人物がやってくるのにも気が付いた。次郎だ。向こうも気づいたようだったが、こちらに声をかけることもなく圭の横に立つ。


 それに合わせ、こちらも知り合いと言うフリはまったくやらなかった。そもそも、いまさら、話すことなどない。少なくとも、今の疑問をこいつに聞くことだけは絶対にしたくない。


 圭より先に来ていた女子生徒が先に教室の中へと入っていくので、それに続くように圭、そして次郎も入っていった。


 教室に入るとあのネイティブが一人立っていた。と言ってもヘルメットをかぶっている以上、同一人物かどうかも分からない。ただ、声は同じっぽいか。


「よし、次はここにいる三人に話す。一度しか言わない」


 そう言って一呼吸置くとネイティブはさらに説明しだした。


「グループ:キングダムに最近動きがあるという噂がある」


 キングダム? ネイティブと似たような派閥か?


「こちらとしてもキングダムの動きには注意したい。よって、お前らにミッションを下す。キングダムの情報を持ってこい。

 俺が納得できる情報を持ってきたものには報酬だ。価値に応じて来月一日の納金金額を下げてやる。最高の情報ならチャラにプラス報酬金を出してやる。


 ただし! 情報が得られなかった場合、来月の納金はプラス五千円だ」


「は? なんだそれ?」


 思わず反論してしまった。なんというか……、こいつの思考がぶっ飛んでいるせいか知らないが、言っていることが大げさというか、世界観が違うというか。

 ついていけない……本当にごっこ遊びを変に真剣にやっているようにしか見えないのだが……。


 だが、そんなごっこもどきを否定するのではなく、反論した圭を否定するように、次郎と隣の女子生徒はジロッと見てくる。


 それでもかまわず、視線をネイティブに向けたが、ネイティブは鼻で笑っていた。


「ふっ、お前に拒否する権利はないぞ。払いたくないなら情報を持ってこい! 以上だ。全員に話をいきわたらせた後、集団契約にこの条約を付け加えてから、本格的にミッションスタートだ。何か質問はあるか?」


 それに対し圭以外の二人はうつむいたままだった。こいつらは……紛れもなくネイティブの犬だということはよく分かる光景だ。こんなのに俺もなれって? ってか、これが現実?

 今まで普通の学校だと思ってきたのに、この状況。ドッキリでもかますつもりか?



 だいたい、目の前のこいつ……アプリごときで……イカれてるよ……。


「あんた、一体どれだけの奴を不平等な契約を結ばせたんです?」


「ああ? 今それ関係あるのか?」


 ネイティブはドスの利いた声で放ってくるが、意思を固めて向かい続ける。やがてネイティブはヘルメットの首を横に振った。


「知るか。数えるのも面倒なぐらいだ。はぁ、他は」


 そう促され間髪入れず圭はさらに質問をぶつけた。


「俺はここに来る途中、他の人たちに視線を向けられた。ここの二人には一切向けられることがなかった視線だ。これはどういうことなんですか?」


「被害妄想だろ?」


 適当に投げるように返すネイティブ。それでも睨み続けるといらだつようにネイティブは机を蹴り倒した。

 当然、激しい音が教室内に鳴り響く。次郎や隣の女子はもちろん、圭もさすがに驚き後ろに下がる反応を見せるしかなかった。


「てめえは新入りだからそう見られたんだろうが! 俺は集合をかけるとき、一定のグループに分けて時間指定をしている。


 ネイティブに入っている人物が誰なのか、お互いに認識させないようにするためだ! すなわち、時間指定された間でくる人物同士だけネイティブ同士だと知っている。そこに新入りが来たら見るのも当然だ。


 これでいいか!」


「……はい」


 なんとか萎縮しきっていない演技をしてみせるが、相手にはどう映っているだろうか。相手は心理を読む天才。おそらくビビっているのは伝わっているのだろう。


 ネイティブは圭に近づき顎に手を当ててきた。そのままぐいっと引き上げられ、ヘルメットに近づけられる。


「お前、やっぱり一筋縄じゃないようだな。エンゲームの時からなんとなく分かっていたが……てめえには徹底的にネイティブに染めさせてやる。俺に恐怖し、絶望し、従え」


「ふっ、ネイティブ、漫画の見すぎじゃないですか? ま、……今は従いますよ」


 と言いつつ、圭はヘルメットの奥を見た。近づいたことによりかろうじて顔の輪郭が見えたのだ。細めだ。顔の輪郭はおそらく細め。


「永遠に従わせてやる」


 そういうネイティブは圭の顎を振り払うと出口のドアを指差した。


「さあ、さっさと出ていけ! 次の奴らが待ってるからな」

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