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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第4章 エンゲーム・タッグポーカー
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第13話 真の王

『真の王』

 そんな名前で登録されている人物からの通話だったのだ。


 一瞬固まったが、気が付けば仮の王が手を伸ばすのを遮るように圭が先に奪い取り、そして……通話に出ていた。


 通話のコール音が途切れ、相手と回線がつながる。だが、取ったからと言ってどうすればいいのか分からない。

 なぜパッととったのか、その理由も分からないまま茫然と耳に当てた。


 無言の時間が続く。もう、それは本当に静かでイヤホンの向こうにいる次郎すら黙るその時間がまるで無限につづくかのよう。

 ただ、息をのんで無限の時間を待ち続ける。すると、向こうからこんな言葉が短く一言で飛んできた。


『お前……誰だ? 元王? いや、違うな……』


 元王? ……仮の王が……もともとの王……と言うことなのか? 元々というのは……おそらくキングダムの元々の王……。


 にしても、この声は……変声機に欠けられており、男性か女性かも分からない。


『やはり……負けたか……お前……何者だ?』

 ……。


『黙ってないで答えろ。お前は何者だ!』

 それでも答えられない。ただ、仮の王のスマホを強く握りしめる。


『そうか……だんまりか……。ふっ、しかし、その仮面、よく似合っているじゃないか。なんかのヒーローの仮面か?』

「え!?」


 思わずあたりを見渡した。圭以外にスマホ、携帯を握るもの。いや、いない。……まさか、次郎!? あいつがかけてるるのか! 次郎が……王!?

 いや、そんな馬鹿な!!

 

 では……なぜ、仮面のことを知っている!? なぜ仮面をかぶっていることが分かる!?

 今度は廊下側の窓に手をかけ、外を見る。どこか別の棟やフライハイトから、覗いているのか!?

 

『よく探したまえ。お前の視界の先にわたしはいるぞ。ヒントは特別棟だ』


 特別棟……今は第二教室棟四階にいるので廊下越しに北側の窓から見える場所だ。確認すると確かに特別棟のから教室に一人の人影が存在していた。

 遠いし、本人もかなり教室の内側に立っているようではっきりと見えない。


 すると森もその人物のことを発見したらしく、スマホを取り出した。そしてなにかのアプリを使って遠くに居るその人物をカメラで捉える。


 そのスマホを覗かせてもらうと、解像度はかなり悪かったが、なんとかその人物を捉えることができた。

 おそらく、女子。そして……何より特徴的なのが……。


「ずいぶんと……キツネのお面がお似合いで」

『見つけてくれたようで何よりだ』


 またもや、仮の王のスマホを強く握りしめた。

 今度は……恐れなどではない、本当の敵を目の前にして打倒の意思に燃える手だ。

 あいつが……王。倒すべき……真の相手!


『結局お前は何者だ……というより、当ててやろうか? お前が……解放者のリーダーだろ?』

「……え?」


 その意味を理解するのに、数秒の時間を有した。だが、意味を理解した途端、電話越しに首を大きく横に振った。


「まさか……リーダーは彼女だ」


『まあ、そういう設定でそこにいるんだろうな。でも……付き人がこの通話に一番早く出るか? リーダーの指示なしに。もし、そんな無謀なことをするような組織なら……もうとっくに解放者は誰かにつぶされていたんじゃないのか?』


……返す言葉もない……。


「……そっちこそ、何者なんだよ!」

『もう、分かっているだろ? 王だよ。キングダムの……真のリーダー』


「そうじゃない。……お前は……誰だ!」

『それはこっちのセリフだ!』


 電話越しに……パティオ越しに二人は向き合い睨みつける。


「かならず……」


 知らないうちに仮面の下で強烈な笑みを零していた。

 それは異常なまでの不敵な笑み。


「かならずお前を倒す! 王の座から引きずりおろしてやる」

『楽しみにしてるよ。返り討ちにして解放者ごと……飲み込んでやる』


 そんな言い合いの後、通話は切れた。ただ、ツーツーという音が耳に残り続ける。しばらくその音を聞いた後、ゆっくりと耳から離した。


「アリス……契約通り……王を倒すぞ」

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