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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第4章 エンゲーム・タッグポーカー
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第12話 圭たちのイカサマ

「そう言う君たちこそ、随分と運が良かったみたいですねえ?」

 こっちが仮の王たちのイカサマを考えているとき、田村がふと口を開きだした。


「あの最後のタイミングでジョーカー、普通引きます? だとすれば、漫画みたいな引き運ですね」


 随分と不敵な笑みを浮かべつつも圭の顔を覗いてくる。

「……俺も驚いている。本当に、運が良かったよ」

「まさか、運じゃない。なにかしたんですよね?」


 ……確信できる情報があるわけでもないはずなのに……。

「別に話す義理はない。そっちだってイカサマの方法、教えてくれないんだろ?」

「証拠もないはずだしね、イカサマをしたという」

「なら、同じだ」


 しばらく田村は沈黙をしたが、すぐ鼻で笑うと姿勢を元に戻した。


 ちなみに、田村の指摘は半分正しい。運要素がかなり大きかったが、ジョーカーを引けたのはある程度故意だ。


 仕掛けの最初は四ラウンド目。圭が始めてディーラーになるターン。シャッフルするとき、失敗しカードをばら撒いたがあれは故意だった。

 そして、その散らばったカードの中からジョーカーを探す。上手く探し出せるかが、第一の運。


 結果として、森が拾ってくれており、最後にジョーカーを受け取った。その時、圭はそのジョーカーの裏面の端に印をつけておいた。ほんの少し折り目を付けるように爪を立てておく印。


 で、最終回、八ラウンド。再び、圭のディーラー。シャッフルをしながら、端を整えるフリして、印を探し当てていた。そして、その印を束の真ん中より少し下あたりに置くよう、シャッフル。


 で、カットを田村に依頼した。一度目、田村にカットをしてもらったとき、ちょうど半分あたりで束を分けてカットしていた。で、実際二回目を真ん中あたりで束を分けてカットしてくれた。これが第二の運。


 結果として、ジョーカーが束の上のほうに来てくれたことを確認。あとは、そのジョーカーを自分の手札に収めた。


 雑ではあるが、ジョーカーを引き寄せるための手段だ。


「契約書ができました。目を通して同意してください」


こうして出来上がった、集団契約『解放命令書』がこの四人の間で成立した。それと同時に森はすぐに仮の王のほうへと近づく。


「では……契約通り、あなたを支配する人物の情報を吐いてくれますか?」

 仮の王は「観念しました」とでもいうように手を軽く上にあげてため息をついた。が、その仮の王が田村なみの不敵な笑みを浮かべてきた。


「知らない」

 そしてこう言ったのだ。


 しばらく、教室内が静かになる。

「「『はっ?』」」


 知らない? 知らないだと?


 森が仮の王の胸倉をつかみあげる。

「知らない? 何を言っているんですか! いいから、すべてを吐いてください」

「無理だよ。契約しているのに、嘘は付けないからね」

「……っ!」


 そればっかりは……仮の王の言うとおりだ。

 一応、契約内容に穴がないか読み返したが、そんなことは全くない。


「ま、知らないって一言だけじゃ、満足してもらえないだろうから詳しく言うけど……、あたしは自分の『上の立場』の人物とは直接あったことがない。

 ただ、これだけは言える……」


 仮の王は指を一本天にかざした。

「それは……限りなく現在の王に近い人物よ」


 その仮の王の言葉に圭、森は多く反応をしてしまう。

 森はさらに問い詰めていく。


「近い? それはどういう意味ですか? その人の上の人物が王ということですか? 王の……直属?」

「それは……ちょっと違うかな」

「……どう違う?」


 仮の王は一度自分のカールに巻いた髪を触る。

「その人物は、王であり……王本人ではない……と思う」


 なんともあやふやな物言い。まるで意味がつかめない。

「思う? 確かではないということ?」

「えぇ。ちなみにその人物……わたしの上の立場のアカウントは『レイザー』。ただし、その人物と直接会ってはいない」


 森が少しイライラしているようだが、やっと仮の王の胸倉から手を離す。

「全く要領が掴めない。その人と直接会って、集団契約や個々契約を結んでいるんじゃないのですか? キングダムの集団契約を結んだんじゃないんですか?」


「その人物はわたしの目の前でこういったんだよ。『わたしはレイザー本人ではない。いわば、お前を支配する者の影武者』だとね」


 その言葉を信じるなら……そのレイザーというアカウントを持つ人のスマホを借りて、その借りた人が代わりに契約した……という解釈になるか。

 まさに、事前契約で仮の王に対して森にやらしたのと同じ行為。


「……それを信用したと?」

「信用というより、アリス、君との契約だよ。あくまで開示する情報は「上の立場」。でも、肝心の上の立場のことは知らない。その影武者だけ」


「では、その影武者のことを教えてください」

「それを教えないといけない契約はしていないよ。それにその人物像を伝えることはできない。契約で口外できないことになっているからね」


「……そんな」


 ここにきて想定外の事実だぞ……。

 王にかなり近づいたというのは、喜ばしいことだろうが、話を聞くに、本当に王に近いという確信すら危ういじゃないか。

 影武者……か。面倒だな。


 なるほどね……確かに、キングダムの組織を形成する個々契約はいっぱいいっぱいだ。だが、影武者が行けば、影武者は影武者独自に個々契約を結んで、口外させないことだってできる……。


「……ロミオさんは?」

「わたしもありませんよ。彼女と同じ状況です」

 田村は唐突に振られるも不敵な笑みで返す。


 森はため息をつき、圭のほうを見る。

「どうする? 面倒だよ?」

「……どうするかなぁ」


 とその時、誰かのスマホに着信が入り込んだ。それは、契約したまま机の上に放置された仮の王のスマホ。

 LIONの無料通話でその相手は……


「真の……王?」

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