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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第4章 エンゲーム・タッグポーカー
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第6話 敵の策略は?

 圭は声のトーンを下げ、ゆっくりと口にした。

「そいや……あんたたち、随分と自分の手札見るの慎重だな」


 このゲーム中、彼らは今まで手札を一度も持ち上げたことがなかった。あの扇状に並べて手に持つやり方ではない。

 机から絶対離さず伏せたまま、カードを確認するときも手でカードを隠しながらこっそり見ていた。


 カードを集めきった森がデッキをシャッフルするなか、仮の王は鼻で笑う


「ポーカーは普通、手札を持ち上げないものだよ。ほかの人に見られないようにするためにね。特に後ろにオーディエンスがいれば、その人たちの反応でポーカーフェイスも台無しじゃない。


 まあ逆に君たちはまるで誰かに見せるため、カードを胸元まで持ち上げているように見えるけど、それはわたしの勘違いということでいいのかな?」


 仮の王はにこやかに笑ってみせた。圭はその笑みに極力反応をしないようにし、淡々と語る。


「……契約で相手には見せられないだろ。観客もいないし、そもそも見られる相手もいない。それに……、本当に隠しながらカードを見るなら、一枚ずつ並べるのもおかしくないか?」


 そう、このゲーム中ずっと、彼らはどちらも二枚を重ねず並べて伏せていた。

「普通というのを言うなら、そもそもカードを重ねるものじゃないのか?」


 仮の王は少し沈黙したが、軽く笑ってみせた。そして言う。

「遊○王って知ってる?」


「「……はっ?」」

 森と圭、同じタイミングで同じ発声をした。

 田村は変わらない不敵な笑みを浮かべ続けている。


 対して仮の王は楽しそうに指を一本立てた。

「ほら、魔法、罠カードあるでしょ。伏せカードってやつ。あれの癖だね」


「「はぁ?」」


「え、分かんない? リバースカードオープン!! エネミーコントローラー、左右AB!! なんてね」


「「……」」

 圭は無言を貫く。

 森もトランプの束を触りながら無言。


「あ……もしかして引いた? やっぱり、女子がカードゲームは引いたか~」

 わけわからんことを言い出して一人勝手に落ち込む仮の王。ファラオもびっくりするほど……まがい物の王の姿。


 ……フォロー入れとくか……。

「とりあえずチェーン、神宣。それ無効で」

「あぁ!?」

 対角線上にいる森から抗議の声が聞こえた気がした。


「なにっ!? でも、そっちコストでチップ半分支払ってね」

「……マジか」


「オッホン!!」

 そこまで来て、森が急に咳き込んだかと思えば、トランプの束をあからさまに机へ叩きつけた。

「シャッフル終了。さっさとカットしてください。黙って……ね」

 そう言って仮の王へ束を突き付けていた。


 いろいろあったが、『誰かに見せるため、カードを胸元まで持ち上げている』という仮の王の指摘は正しかった。


 圭たちは今まで手札を胸あたりまで持ち上げて確認していた。それは胸ポケットにあるペン型隠しカメラにカード情報を映すため。すなわち、次郎に情報を渡すため。


 圭たちは策のため手札を持ち上げなければならない。


 もしかして、この間に情報が流れているのか?


 もし、その間に流れるとすれば……後ろに鏡があるとか? しかし、後ろを確認したところで鏡は置かれていない。

 なら……圭たちが来る前に隠しカメラをセットしていたか……。


 相手は授業を抜ければ実質一時間の余裕があったはずだ。その間にこちらが設置した隠しカメラを取りながら自分たちのカメラを設置できた。


 ゲームの内容は奴らが仕切っている以上、どこにカメラを設置すれば有効かなどすぐ分かるだろう。


もう一つの可能性と言えば……次郎を買収していたか。もし、次郎の存在が相手に知られ、買収されていれば……、ばっちりこちらの情報は筒抜けになる。


 何より……今は解放者契約を解除している。簡単に次郎は裏切ることができる。


 しかも、解除しようと言い出したのは……次郎。

 ……えっ!?


 次郎……?


 考えれば、解除をまっさきに言いだしたのは、圭はもちろん、森でもなかった。次郎がまっさきに言い出した……。


 いやいや、それはあくまで策を講じるため。次郎はこのゲームに勝つために解除を……というか、そもそも解除しなければ、こうしてここにいる四人での集団契約が不可能だったのだから。


 でも、もし……仮に仮の王が、事前契約の時に次郎の存在を知っていたら……? そして既に取り込まれていたら?

 いや、それはおかしいのか……。いや……でも……。


 二対二を選んだ理由……解放者が三人である可能性を考慮して……、そして集団契約を解除させるのが目的で……であるなら……。


 いやいやいや、信じる。もちろん、次郎を信じる。

 信じたいが……可能性として捨てきれない以上……。

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