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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第4章 エンゲーム・タッグポーカー
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第5話 観察

 二戦目。

「ショーダウン」


 圭たちは共通カードなし、9のワンペア。相手はJのワンペア。相手の勝利。続いて三戦目、四戦目とくる……。


「次のディーラーはボブ、君だよ」

 仮の王がカードを集めながらそう言う。圭はカードの山を受け取ると、まずはバラバラの向きになっているカードを整え始めた。


 一度綺麗に整えると、シャッフルを開始。変に不正を疑われるのは絶対避けるべく念入りに……。


「あっ!」

 シャッフルに失敗し、カードが散乱。圭の手の中でカード同士がぶつかり合い、宙を舞っていく。


「あら~。もしかしてボブくん、緊張しちゃってる?」

 仮の王が笑みを浮かべ圭の顔を覗きに来ようとする。とうぜん仮面をかぶっているので、その表情までは読まれまいが……。


 机の上や床にまで散らばったカード。瞬時に判断した森が真っ先に動き、拾い始める。

 続いて、田村が圭をじっと見たあと、不敵な笑みを浮かべ机の上のカードを集め始める。


「……申し訳ない」

 謝りつつ、散らばったカードを圭も集め始めた。


 そして、大体のカードが集また。

「はい。緊張しなくていいよ。自分のペースでゆっくりシャッフルしてよ」

 仮の王から拾われたカードを渡され、受け取る。さらに、田村からも受け取る。


 最後に森から拾ってもらったカードを受け取る。

「あ、あとこれと……」

「……悪いな」


 森から受け取ったカードも合わせてひとつの束をもう一度作る。角を整えて……再びシャッフル。


「手間取った、申し訳ない……カットをお願いします」

 そう言って圭は田村に束を渡す。田村は束を受け取るとちょうど半分位で山を二つわけ、下の束を上に持ってきた。

 カット終了。


「では……四回戦目を」




 ……そのまま四回戦、そして瞬く間に五戦目が終了してしまった。


 結果としては二勝三敗。これだけ聞けば接戦中だと思えるのかもしれないが、チップの数は全然違う。三十枚あったハンデもあっさり逆転、奪われていた。

 二戦勝利しているがこれはどちらも相手のフォールによるもの。


 逆に敗北の残り二戦は文字通り惨敗だった。特に五戦目はお互いツーペア。ジャックハイ※のツーペアだったので、こちらとしてここは攻め時だと掛けチップを張ったものの、相手はQハイのツーペア。


※○ハイ:役を作る上で、組み合わせの中で一番高いランクを○に入れて言う。

(例1:J・J、K、5、4(ジャックハイのワンペア)、

 例2:8・8、9・9、2(9ハイのツーペア))


 一ランクの差で、晴れてごっそり相手に持っていかれたというわけだった。


 で、現在のチップは82対148。その差、66枚で負け越し中。まだ三戦が残っているため、巻き返せる可能性はあるが……厳しいな。


 だが……やはり腑に落ちないこともこのゲーム中に起きていた。相手は勝負に出たら必ず勝っているということだ。三戦すべて。

 負ける場合は絶対フォールド。


「……何を仕込んでいる?」

「ん? あれ? もう負け惜しみ? まだ三ゲーム残ってるよ、頑張って!」

 白々しいくらい笑顔でガッツポーズを取る仮の王。なにが「頑張って」だ、このやろう。


「少なくとも……あんたたちは、お互いの手札分かり合っているだろう?」


 彼らの役の作り方だ。カードを交換するとき、一枚ないし二枚交換するだろうが、それに違和感がでてきていた。

 相手の手札が分かっていないと、できないような交換の仕方……。無論、確かな証拠はないのだが……。


「それ……お互い様じゃないかな?」

「……」

 まあ、その通り。お互い様だ、仕方ない。


 このタッグポーカーとかいうオリジナルゲームにおいて、一番独自性がある部分はタッグ。独自のゲーム性を生み出すのであろうタッグ相手の手札非公開性はお互いに無視している状況である。


 まあ、お互いイカサマしているのだから、ある意味フェアだと捉えておこう。


 だが、問題は奴らがどんな方法で情報を交換し合っているかだ。今になって考えるとエンゲーム契約で結んだ契約条文も気になってきていた。


『ゲーム中、ショーダウン以外で自分以外の手札の表を見てはならない。』


 最初はイカサマを封じるための条文だと思っていた。相手の手札やタッグ相手の手札ののぞき見を防止するため。

 そして同時に、圭たちの策ではタッグ相手の手札の表を直接見ないため、ジャッジスルーできると安心もしていた。


だが……これこそが奴らの策だとしたら? むしろ、奴らが仕掛けたイカサマをカモフラージュするため、このような穴がある条文を提示したとしたら?


 奴らは直接表を見ない方法でタッグ相手の情報を得ている……いや、下手すれば圭たちの手札も見られているのかもしれない。


 相手の手札まで分かっていれば、負けると分かるゲームは確実にフォールドしながら、勝てるときだけコールまたはレイズできる。


 これが正しければ、最初のハンデを三十枚で押しきった理由も分かる。


 自分のタッグ相手の手札、相手の手札全て見えるというのならば、普通に考えれば負けることはないだろう。

 だが、山札の操作はしない以上、運要素が高いのも事実。


 もし、自分のほうには弱い役しか来なかったら、と考えると思い切ったハンデをあげきれなかった。


 では……表を見ずにどうやって非公開情報を得ているのか。

 ここであることを思った。


「そいや……あんたたち、随分と自分の手札見るの慎重だな」

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