第11話 タッグポーカー
時間はすぐに過ぎていった。
瞬く間に十日が過ぎ、二週間という期限が迫ってくる。その迫るにつれ、もはや、これ以上時間をかけるのは無駄だと判断するようになっていった。
覚悟を決めると、アカウント『ヴァームス』に以下のメッセージを送りつけた。
『明日。午後四時二十分からエンゲームを開始する』
授業が終わるのが三時半。ホームルームなどがあって、四時前には教室を出られると考えてこの時間を指定した。
それから、さらに時は過ぎて当日の午後三時過ぎ、こちらから場所(第二教室棟、四階西から三番目の教室)を指定するとほとんど同時、敵からもゲーム内容が送られた。
実に授業中のできことである。
ゲーム内容は……タッグポーカー?
いったい何のゲームだ? ポーカーだけなら分かるが……。
しかし、ちゃんと内容はつづられていた。
『ジョーカー(ワイルドカード)あり、ドローポーカーとフロップポーカーを混ぜたルールで行われる。
二対二で行い、三枚のコミュニティカードと、それぞれニ枚のホールカードを持ち、七枚で役ができる。タッグ相手であろうと手札を見せ合うことはできない。
基本的なルールと流れはポーカーと同じ、最後のショーダウンで二人合わせて役ができる。』
と、なっている。
言ってしまえば、七枚でポーカーを行うわけだ。役も強さの順でつづられているが基本的にはポーカーと同じ。
これを考えるにワンペアはもちろん、ツーペアでもそこまでの強さにはならないだろう。逆にストレート、フラッシュ、ストレートフラッシュは鬼難易度から超鬼畜難易度へと変貌を遂げる(まあ、普通はそろえられないと思う)。
そのため、フラッシュやストレートは本来、フォーカードをよりも弱いはずだったが、このタッグポーカーではフラッシュやストレートのほうが強いことになっている。
他に七枚なので新しい役も生まれている。スリーペアとかスリーツーペア(三枚二組)とか。あとは、二枚三枚でできるツースリー。二枚四枚組ができるツーフォー。
強さの順番は以下のとおり。
(クラブ:ク、ダイヤ:ダ、ハート:ハ、スペード:ス)
・ストレートフラッシュ
・フルハウス(例:ク3・ダ3・ハ3、ク7・ダ7・ハ7・ス7)
・フラッシュ
・ツーフォー(ハ4・ダ4、ク6・ダ6・ハ6・ス6、ス5)
・スリーツーペア(ハ2・ク2・ダ2、ハ5・ス5・ク5、スA)
・ツーツースリー(ダ3・ハ3、ダ4・ハ4、ク7・ス7・ハ7)
・ストレート
・フォーカード
・スリーペア(ハ4・ダ4、ク2・ダ2、クQ・スQ、ス3)
・ツースリー(ダ2・ハ2、ス3・ク3・ダ3、スK、ハJ)
・スリーカード
・ツーペア
・ワンペア
とりあえず、二人にゲーム内容をメッセージで送りつける。そして適当に確率を確かめるためノートに計算をなぶり書きで起こしていった。
時間も賢い頭脳もないため全部を正確に計算するのは不可能だが……一応数学で組み合わせなら習っていたのは幸いか。
二枚一組のペアが三つできるスリーペアが初手で来る確率は……おおよそニパーセント未満といったところか。
普通のポーカーの条件でスリーカードが大体二パーセントちょっと。タッグポーカーでスリーカードを揃えようと思ったら四・五パーセント。やはり、可能性があって強いのはこのスリーペアあたりまでだろう。
特に一番注意すべきは……ツーペアだ。五枚手札だと確率は五パーセントに満たない強い役だといえよう。
だが、七枚手札だと、確率が二十パーセント以上に跳ね上がる。これは……いざゲームをするとなる上で、一番難しくなるところだろう。
二割は……高い。カード交換が含まれれば……もっと高くなるのだから。
一応、タッグポーカーとなっているがゆえ、タッグ相手……今回では森の手札は見ることができない。
そこに何らかの駆け引きが生まれるのかもしれないが、これは胸ポケットあたりにペン型の隠しカメラを仕込んで、次郎に送れば全ての手札を見ることができる。
で……ドローポーカー、フロップポーカーってなんなんだよ……。
そんなツッコミを心の中でかました直後、授業終了のチャイムが校舎に広がった。確率計算で結構な時間を費やしていたらしい。三時半を時計が示していた。
それをいいことにスマホでさっとその単語を調べる。
どうやら、ドローポーカーは日本人が一番始めに思い浮かべるポーカーのことらしい。すなわち、五枚のカードを交換しながら役を揃えていくポーカー。
フロップポーカーは全員共通で公開される『コミュニティカード』というのと自分の手札である『ホールカード』を合わせて役ができるポーカーらしい。
すなわち、これを混ぜ合うということは、さっきの内容と照らし合わせると……。
コミュニティカードの三枚が出つつ、二枚のホールカードを交換して役を揃えるということになる。
これで、ようやくゲーム内容が理解できてきた。
あとは、具体的にどうするか策を練りながらホームルームが終わるのを待った。
※19/2/19大幅修正:ポーカーの役の例
※19/2/24大幅修正:タッグポーカーのルール
コミュニティカード二枚、ホールドカード二枚or三枚 →
コミュニティカード三枚、ホールドカード二枚




