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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第3章 作戦準備
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第4話 プロファイリング?

 再び、オセロを開始。

 また、先攻は田村から。


 話を聞くに、上級者同士でない限り、後攻が有利になりがちらしい。


 そして、今度は実際、田村に教えてもらった考えで打っていく。序盤は確実に一枚ずつ。確かに打ち方一つ考えてやるだけで、さっきよりずっと打てる選択肢は保てたまま、ゲームは進行していた。


「うん、いいですね。いい感じだと思います」


 そんな事を言いながら、田村はコマを置く。中盤になれば、その『中割り』という返し方も分かってきた感じはする。


 そのままゲームは進行し続け、空いたマスは残り一つとなった。そして圭の手番。最後の一手を置くと終了した。


「ま……付け焼刃程度では……」


 結果としては圭の負け。まあ、さっき教えてもらって、そのまま勝てるほどオセロは浅いものではないと思っていたし、当然の結果。

 だが、田村は驚いた表情で圭と盤面を交互に見ていた。


「いやいや……本当にすごいですよ……」


 そう言って田村は画面を指差してくる。そこにあるのは、白黒の比率。圭が敗北しているものの、その差はずっと小さくなっていた。


「ま、先輩の教え方がうまかったんでしょう」

「圭くん、やっぱり君は本当に賢い人なんですね」


 圭が田村は持ち上げるようなセリフを言ったが、それに間髪いれないどころか重ねるようにそんなことを言ってきた。


 しばらく、妙なにらみ合いが続く。


「俺が……賢い?」


「ええ。正直言って、さっきの説明、かなり端折って行ったつもりです。短時間で、ささっと話しただけです。


 でも、君はそんなわたしの説明を正しく理解し、こうして実践で使うことができた。それは君の打ち方を見ていればすぐに分かります。わたしの説明を正しく理解し、実践できていました。


 賢いですよ。一を聞いて十を知るタイプです。何より……頭の回転が良さそうですよね。すごくキレそうです。怒るって意味じゃないですよ。


 さっきのゲーム、一戦目の適当さとは打って変わっていた。打ち方がわかったからといって、二戦目でそこまで思考してゲームを進められるかと言えば……おそらくそんな人は少数派でしょう」


「……随分と買いかぶってくれるんですね。俺は、単純に先輩の教え方がうまかったからだと思ったんですけど?」


 田村は圭の発言に対し、わざとらしく笑ってみせる。


「ははっ、まさか。あんな程度の説明で理解して実践できる人はいないですよ。特に君、最初の段階ではX打ちすら知らなかったんですから。本当になんの知識もなかったんでしょう。


 であるならばこの結果は賞賛に値すべきことに違いありません」


 不敵な笑みを浮かべつつ、圭をひたすらに持ち上げる言葉を吐き続ける田村。最初は面はゆいといった感覚だったが、田村を向き合っているうちに別の感覚が芽生えてくる。


「先輩、ひとつ聞いていいですか?」


「うん? なんですか?」


「この暇つぶし……もしかして、俺を観察するためにやりました?」

「観察?」


「俺がどういった人物なのか、プロファイリングするって言ったら大げさですかね?」


 そんなことを言ったのだが、それと同時に少しまずい発言をしてしまったかな、と思ってしました。事実、圭の発言によって、田村は異様なまでに圭の顔をじっと見始めた。


「プロファイリング? 逆にそんなことをされるような覚えでもあるんです?」

 まあ、そう来るだろうとは思った。ちょっとでも不思議な点があれば、容赦なく突っ込んでくるタイプだろうとは思っていった。


「別に、そんな覚えはありませんよ。でも、他人に対して、賢いかどうかなんて評価、口に出してします?」


「……しませんか? 君馬鹿ですね、なんてのは言わないでしょうけど。賞賛ならするのでは?」


「そうですかね。でも、さっきの話の流れだと、俺がどういう性格なのか、そしてどういう考えを持つのかを探るために、このオセロゲームを持ち出し、そして打ち方を教えた……ってのは、考えすぎですかね」


「考えすぎですね」


 そんなことを言っているが、果たしてどうなのか。


 大体、見ず知らずの別学年の生徒と、ここまで親しく接しようとする時点で普通ではないような気がする。部活でもなんでもないのに。

 つまり、なにかしらの理由があるような気が。


 でも、理由ってなんなんだ? 田村が実際言ったように、プロファイリングさせる覚えなんて……。


 うん、ありまくりだな。だって、解放者本人だもの。


 いやいや、なんでここまでそんなことを考えなくてはいけない? いくらなんでもコントラクトに脳が毒されすぎている。


「そうだ。ついでに、連絡先を交換しませんか?」

 こっちが変なことに思考を巡らしている頃、田村がスマホをもってそんなことを言ってきた。だが、


「いや、すみません。俺、ガラケーなんですよ」


 そこばかりは、もう完全に徹底することにしている。たとえ相手が誰であれ、少なくとも学校内ではこれで通す気だ。

 実際にガラケーを取り出してそう言う。


「ああ、そうなんですね。じゃあ、電話番号だけでも交換しましょう」

「え!?」


 予想外の提案に少し驚いてしまった。


「あれ? なにか問題でもありました?」

「あっ、いえ。今までそんなことを言ってくる相手、いなかったので。基本、みんなLION使ってやりとりしてるでしょ? ガラケーは蚊帳の外ですから」


「でも、電話とか、ショートメールとか、使えますよね?」

「え……えぇ、まぁ」

「なら、交換しましょう」


 ショートメール使ってまで連絡交換をしようという田村に、戸惑いはしたが、気が付けば勢いの押され、交換してしまっていた。

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