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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第2章 解放者契約
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第14話 作戦会議2

『王と名乗った人物?』

 森が圭のメッセージに対してそう返信する。


『三年の女子生徒だ。無論、そいつが本当に王かどうかは分からないがな』


 本当にこればっかりは分からない。普通に考えたら王であるはずがない。王のアカウントを隠すためにかなり考えられている組織になっているのに、ホイホイと王が顔を晒すまねをするはずない。


 だが、そう思うからこそ裏をかいて王だと名乗ってきた……いや、裏を掻いてでも名乗るメリットはあるかどうかといえば、圭の思いつく限りではない。鎌をかけるにも別のやつに王を名乗らせるよう指示すればいい。


『あれだよ、キングダムの情報を得ようと動いたときに、王って名乗る奴から声をかけられたらしいぞ』


『あぁ、まんまと相手の思惑通りに動いてしまったわけか。心当たり、ありまくりだったね』


 ……まあ、否定しようはないんだけどね……。


『まあでも、組織の形から考えても、下っ端が王と名乗ってくるような自体にはあまり陥らないと思う。その人をひとまずのターゲットとするのは、悪くない手かもしれない。


 そもそも、それ以外の手はないかな』


 森の言うとおり、それ以外は打てる策がないというのが現状。こちらが持てている情報というのは少なすぎる。これでも、キングダムのメンバーがひとりいるという、わりと有益な存在がいるのに。


『でも、その王……ややこしいから仮の王としておくけど、そいつって、行動からしてキングダムに協力的な立場であることは変わりないよな?』


『だな。ま、だからこそ王に近い存在である可能性が高いわけでもあるが』

『その仮の王から欲しい情報って、あわよくば王の正体、わからなくてもそいつよりも上の立場が誰なのか、吐かせないといけないんだよな? ならやっぱり、エンゲームを仕掛ける以外の方法はないわけか……』


『もちろん、交渉もありだが……基本そうなるだろうな』

『だよな……』


 次郎の言いたいことはよくわかる。そう何度もエンゲームを行ったとして、必ずかてるわけではない。ゲームである以上、負ける可能性がある。そんなのを王にたどり着くまで繰り返していくのは、至難の技。


 できる限り、リスクを抑えた交渉で進めていきたいというのが本音。だが、次郎が言う仮の王がキングダムに協力的である以上、交渉の台に載せられる対等のものが用意できるかといえば、それもまた至難となる。


『脅すっていう手もありますけどね』


 ふと、森がそんなメッセージを次郎とのやり取りの間に出してきた。そのメッセージを見た瞬間、手が固まった。


 森は、さらにもう一つメッセージを送りつけてくる。

『殺すと脅せば、情報を吐くんじゃない?』


 一見、この森の発言はむちゃくちゃに思える。強制的な契約を結ばされるコントラクトにおいて、脅しなんて無意味だと……感じられる。


 だが、コントラクトにはルールがある。


 それは第五章の『契約の更新並びに破棄及び契約条文一部の破棄』による。

『・契約が関係して結果的に契約者が大けが又は死亡しかけた場合、その瞬間に契約は解除され、大けが及び死亡しない最善の行動が行われる』


 すなわち、契約で口外しないとなっていても、話さないと殺されるという状況になれば、契約の関係で死亡しかけている状況になるため、解除されるのではということだ。


 だが……

『無理だな。それならボブ既にと実験済みだ。もし、殺されかけて契約が解除されれば殺されないで済むという状況を作ってボブにカッターナイフ突き刺してみた』

『実験台にされた俺が通りま~す』


『……やったの? で? 結果は?』


『失敗だ。契約が解除され、喋らせることはできなかった。


 だが、「一時間その場から動くな」という契約をしたうえで、車で轢こうとする実験でもすれば契約は解除されると思う。

 道徳的に実験できないから確証は持てないが……ルールが適応されるなら、そうなるはずだ。


 成功例を出せる実験方法は思い浮かばなかったのが残念だが……まあ、実験するなら死ぬ覚悟が必要だから無理だな』


『……なかなかえげつないこと言うね……。でもなぜカッターナイフを突き刺すだけでは解除できなかったんだよね? ちゃんと脅した?』


『ああ、薄皮をカッターナイフで切ったほどにはな』

『本気で脅されました、ええ、されましたよ。実験だと分かっていても本気かと思ったぐらい、というかチャーリーがトチ狂ったかと思った』


『まあ、一番の原因は俺に本物の殺気がなかったからだと思う。人を殺す勇気は俺にない。本当に殺そうとしない限り、コントラクトは反応してくれないのだろうな』

『……なるほど』


『本気で殺しにかかれる。ガチの殺気を放つ自信があるというなら、話は別だが』


『無理』


『あたしも絶対無理。もしできたら、もはや犯罪者になるレベルじゃない?』


『まあ、そういうことだ。ただ、世の中には本当に人を殺せる奴もいるんだから気を付けるに越したことはないだろうな。高校生の中にそんな鬼がいないことを祈りながらも』


『ただ、それじゃあ、問題の解決からは程遠いよな』


 ……次郎は随分と痛いところを突いてくる。結局の問題はそこなんだよな。


『どちらにしても、まずは仮の王と交渉する場を設けるのが目の前の目標というこでいいだろう。それ以外の手はないんだ』


 三人の意見を一致させたことで、会議は一旦終了となった。


 各自、自宅で必要な部分をメモし、ほかの人に見られない場所に隠す。それが出来た頃、LIONのチャットデータを削除し、次の行動へと移っていくことになる。

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