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コントラクト・エンゲーム 1編・2編  作者: 亥BAR
第2章 解放者契約
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第10話 仮面

「よし、大体のことは把握した。他になにか、この場で伝えておかなければならないこと、あるか?」


「そうですね……でも、これがひとまず、あたしが出せるキングダムに関する情報、すべてですかね? 基本的に、ひとつ上の立場の人物のことも、詳しくは知らないので。ましてや、王に関することなどは……ないですね」


 そう言いながら、森は水をごくっと飲み込んだ。


「まあ、十分だ。次郎、ひとまず、これ以上、森さんに聞いておくことはあるか?」

「う~ん、いや……ないな」


 森をじっと見て、首を横に軽く振った。その次郎の様子を確認したあと、圭は少し話を切り替えるように「ちょっと待ってろ」といい、自分が持っている袋を漁り始めた。


 それは、このフードコートに行く前に寄った百均ショップで買った品物が入っているビニル袋。そして、中からあるものを二つ取り出した。そのものを、テーブルの上に並べて配置する。


 次郎と森は、圭が置いたそのものを食い入るように……森は傾げる動作を踏まえつつ、見てくる。先に声を上げたのは次郎だった。


「これって……仮面だよな? マスク?」

「そうだ、ネイティブ戦の時に俺がかぶったのと同じやつだ。森さんは知らないだろうがな……」


 森は実際に、圭が用意したヒーローの仮面を手に取り、表面を触ったり、裏を見たりしている。


「これで……顔を隠すというわけですか……」


「あぁ。対決となれば、お前らも相手と直接対面することは十分考えられる。その時に、素顔を晒すのは得策ではないだろう。顔一つ、正体一つが重要な情報となる。顔を隠すこと自体がアドバンテージとなる。


 特に、俺たちは王の正体が分かっていないんだ。その点から考えても、みすみすこっちから正体を晒すことは悪手だ」


「まぁ……確かにそれはそうですけど……」


 森は仮面を人差し指でお面を突っついていた。


「なんか、こんなお面を三人が被って並んだ絵面はさぞかし不気味でしょうね」

「だろうね~」


 次郎が仮面を顔の正面に置いて見せてきた。当然だが、次郎の声が仮面の向こう側から聞こえてくる。圭も始めて、仮面姿を客観的に見たがまあ、なかなかの変人っぽさが出てきている。


 ネイティブは圭の仮面姿を見て、よく平常心でいられたものだな。笑うなり引くなりしてそうなものだ、自分で言うのもなんだが。


「いや、お前が引いてんじゃねえよ!!」

「え? おお、悪い。絵面が想像以上にアレだったもんで」

「アレってなんだよ、アレって!? ま、大体わかるけど、そのアレは」


 どうやら表情に出るぐらいには、次郎の仮面姿に引き攣りを見せていたようだった。そのやり取りを横で見ていた森も、複雑な表情をして見せていている。


「ま、まあ……学校内……教室内なら問題ない。警察にも捕まらん」

「そういう問題か……?」


「でも、正体を隠すということ自体は賛成します。本来であれば、ネイティブのようなフルフェイスのヘルメットでも被ればいいんでしょうが、手軽で隠し歩くこともできる仮面というのも、理にかなっているでしょう。


 カバンに入れることだってできますし」


「と言ってもカバンに入れてもらっては困るがな。もし、カバンを押収されたらそれが証拠になるだろう。マスクは別途で保管場所を用意する」


「……それはそうですね……証拠物品を持ち歩くのはそれこそ、とんだ悪手でしたね」


 仮面を机に置いた森はそう言いながら、顔を上げる。森はこの仮面をかぶること自体は賛成してくれているということでいいだろう。だが、次郎は未だ、首をかしげていた。


「なんだ次郎? なにか不満があるのか?」

「いや、別に。仮面かぶった三人で近寄れば、それだけで威圧になるだろうし、それで警察呼ばれない限り、いい手だとは思う……けど」


「けど?」

「なんか、用心深すぎないか? そこまでやる必要あるのか?」


 仮面をひらひらと揺らしながら、圭の方に向けてくる。次郎がそう思うのも分かるが……圭自身もそれはつど思うが……。


「いいや、徹底的にやらしてもらう。これだけじゃない、正体がバレる可能性があることはできる限り排除するつもりだ。この状況に置いて、やりすぎってことはないぐらいの気持ちで挑む。また、支配される側になるなんて、お断りだ」


「あたしもそれ自体賛成ですね。変に遊びみたいな感覚で用心を怠れば、隙になってしまうと思います。傍から見たら遊びのよう見えるのかもしれませんが、やっていることは、間違いなく、遊びじゃないんです」


 圭と意見が一致した森も一緒に、次郎に向かって真剣な表情で仮面を握って状況を語る。次郎はその剣幕に少し黙ってくれたが、すぐに次郎もまた、仮面を手にとった。


「わかった、それは分かった。でもよ……本当はこれ、顔を隠すようにかぶったらいけないらしいぜ?」


「……へぁ?」


 ちょんちょんと次郎が片手で自分が持つ仮面を指差す。そして、裏側に貼ってあるシールに指刺した。


「知ってるか? こういうのって、顔の横とかにつけないといけないらしいぞ。かぶるのはダメたって、書いてある。本当は俺も今、気づいたんだけど」


 そう言われ、森が持っている仮面を横取りして、裏に貼ってあるシールを見た。


『お面をかぶると視野が狭くなります。思わぬ事故を防ぐ為、頭かおでこにつけて遊ぶようにお子様にご説明ください。』


 森も覗き込んでくるそのシールには、ご丁寧に正しいお面の付け方といって絵まで載せてある。


「……これは……衝撃の事実ですね」

「ほら、おでこにつけてあそんでねって書いてある」

 ニコニコしながら、正しいお面の付け方で額にヒーローのマスクをあてる次郎。


 「……黙らっしゃい! なにが、「おでこにつけてあそんでね!」だ! かぶれ! かぶれったらかぶれ! 俺たちは良い子じゃねえからな!」


※よいこはただしく、おでこにつけてあそんでね!

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