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パロディミー・妄想物語

(っ `-´ c)マッ

作者: 名無 無垢

(っ´ω`c)マッ..(っ `-´ c)マッ!!( ∩'-'⊂ )シュッ (っ ´-` c)マーΣ(っ ॑꒳ ॑c)


こんな噂がとある街で流行っていたーーある掲示板が丑三つ時に現れ、書き込んだ本人の命が奪われてしまうという都市伝説。


しかしこの噂には根拠と呼べるものが何もなかった。


なんせその街での死亡者が出たニュースがなかったため、誰もこの噂を気に止めていなかった。


だがこれにはも一つ、奇妙な噂もあった。


掲示板に書き込んだ人間は、存在そのものが消されてしまうと言われているものだった。


つまり、書いた人の存在そのものが消えてしまうため、みんなの記憶にないーーというものだった。


そんな噂が流れてたのはここ最近、皆が某SNSで呟いたある日のこと、ある男の耳にもこの噂が届いた。


「死の掲示板……都市伝説か」


その男は商品開発の部署に所属しているサラリーマン。彼の名前は城田カズヒサ、年齢は22歳、大学を卒業して間もない新卒者だ。


そんな彼は深夜1時半過ぎ、皆が帰る中、一人で遅れた仕事を片付けようと残業していた。


一通りの仕事を終えた彼は一旦作業を止め、息抜きのために某SNSのタイムラインを見ていた。


ボーッとスマホの画面を見つめていると、都市伝説の元となる記事を見つけた。


「流した主はこいつか。随分と暇なんだな……羨ましいことだ」


カズヒサはその記事に「いいね」と高評価だけを押し、後でその記事については調べてみようと思い、スマホを閉じた。


眠い眼を擦り、タバコを蒸かしながら何もない天井を見上げていた。


するとスマホから通知音が鳴るーーある人から相互フォローの要請のダイレクトメールを受け取る。


「あなたに癒しを、我に癒しを……?」


さっきの記事を張った本人からだった。


宗教なのだろうか、それともたたのイタズラと思った彼、眠い思考のせいか、正直に返事をしてしまった。


「『メッセージありがとうございます。しかし結構です。私には必要ありません』と」


単調な文を送り、疲れた体の背中を伸ばすーーすると、即答の返事がやって来た。


『覗くだけでも構いません。リンク張っておきます。http//www.×××(っ `-´ c)マッ〇〇〇……』


リンクのURLに顔文字が付いている。リンクの位置から察するに掲示板の名前だと分かった彼は、誰もいない一室でそのリンクへと飛んでみた。


「……ん?」


その掲示板には誰も書き込みがなかった。


あるのは書き込めるを作れる記事制作の枠だけだった。


過去に誰かが書き込んだ形跡もなく、白い背景だけが彼のスマホを映していた。


「俺と同じで、寂しいだけの人間なのかなぁ……そう思うと親近感が出るな」


カズヒサは簡単に『初めまして。癒しがあるなら下さい』そう書き込んだ。


だがその後、5分ほど待ったが返事はなかった。彼は再びフマホを閉じ、残った作業を行った。


「って、おいおい。もう2時過ぎか……帰って仮眠するか」


彼の出勤時間は7時頃、住んでいる寮は会社から歩いて20分くらい、そこまで遠い訳でもない。


電車やバスの利用も必要としない彼にとって、これほど楽な通勤はなかった。


カズヒサは書類と荷物をまとめ、タイムカードに退勤時間を機械に読み込ませ、そのまま真っすぐ帰る。


この時彼は気づいていなかったーー掲示板に返事が返ってきたことと、これから彼に起こる悲劇について。


ちなみに返事の回答はーー(っ´ω`c)マッ







翌日、カズヒサは4時間少しの睡眠をとった。現在時刻は6時半、丁度ギリギリの時間に出勤となった。

疲れの抜けない彼の毎日、これから好きでもない上司に媚を売る一日がまた始まる。そう思うだけで憂鬱だった。

しかし人は働かないと食べたいものも食べられない。そんな当たり前を胸に今日も出勤のタイムカードを機械に読み込ませた。


「よっ!おはよう!」


誰かが背後からカズヒサに挨拶をした。

振り向くとそこにいたのは同僚の直樹、と皆が呼ぶ人物だった。

いつも元気いっぱいな挨拶、誰よりも仕事熱心、そして体育系のノリみたいなところがある彼は一部の人には好かれている。

カズヒサはどちらかといえば、彼を応援している側の人間だった。何故なら、カズヒサにとって彼は太陽みたいな存在だったからだ。


「ほら、急がないと朝礼、おっくれるぞぉ!」


「あぁ、直ぐ行くよ」


カズヒサと直樹が駆け足に自分の部署へと急ぐ。時間は5分前、全員が席に座り、部長が来るのを待っていた。


「おはよう、カズくん」


カズヒサが席に座ると、隣から別の声が聞こえたーー色っぽい人の一言で片づけられる気もするが、彼女をあえて紹介する。

彼女の名前は結城ナオ、いつも胸元が開いているスーツ姿、噂じゃGカップらしい。

そんな彼女、席に着くたびにカズヒサに挨拶をすることは日常茶飯事でありテンプレートだった。

仕事がらは適当なのだが、部長のお気に入りとあって、この部署には長くいるとのことだった。


「結城さん、おはよう」


「はいはい。足早で来たところ悪いけど、部長さん、今日遅れるみたいよぉ?」


「そう、なのか?なら急ぐ必要もなかったな」


今日は朝からレポートの提出もあって昨日徹夜をしたカズヒサは少しだけ安堵した様子だった。

昨日書いたレポートにミスがないか気になったカズヒサはカバンから書類を取り出すと、

ナオが自分のコップにコーヒーが入ってない事に気づき、席を立ったその時ーー


「きゃっ!」


ヒールが折れて足元を挫き、カズヒコの顔に胸が当たってしまうーーカズヒコは赤面しながら一緒に倒れてしまう。


「おいおい!大丈夫か結城?あとカズヒサも」


遠くから直樹の声がした。次いでに心配されるカズヒサの顔は思わずニヤけてしまう展開だった。

ナオは直ぐに起き上がると、折れたヒールにショックを受けていた。


「あぁん、高かったのに……」


「結城さん、け、怪我は?」


「……ブーメラン」


「えっ?あっ……!」


結城に指をさされたカズサコ、純粋無垢な彼は気が付けば鼻血が垂らしていた。

そのせいでナオの制服に血が付いてしまった。


「もぉ……まぁ私が悪いのだけどさ。着替えてくるね」


「すいません……」


カズヒサはゆっくりと頭を下げ、ナオは更衣室へと向かっていった。

突然のラッキーにカズヒサの顔はニヤけが止まらなかった。

その様子を見た直樹もニヤニヤしながらカズヒサに近づいてきた。


「朝からやるねぇ~」


「そ、そんなんじゃないよ!向こうが勝手にコケたから」


「いいじゃないかぁ別に。それよりよ、部長遅いし仕事進めちゃおうぜ」


話は直ぐに切り替わり、みなが仕事を開始した。

しばらくしてナオも合流すると、ナオの顔色が青ざめていた。

その様子に皆が唖然としたーーそしてナオの次の一言にカズヒサが一番驚くこととなる。


「ぶ、部長が……今、廊下の受付にスリッパ借りに行って小耳に挟んだんだけど……亡くなったって」


「な、なんだって!?」


「……」


声を上げたのは直樹、そしてカズヒサは複雑な顔を浮かべた。

いつもコキ使われ、残業を強いられて来た毎日、そんな過去を頭に悲しむことは出来なかった。

ただ部長が死んでこれからは寝る時間が増えるのかと、安堵する自分もいた。

そして無意識に今日まだ開けていないスマホを開けると、

通知欄に身に覚えのあるサイトがアプリとなっていたトップ画面に並んでいた。

カズヒサをそれを静かに開くと、2件のメッセージが届いていた。


「(昨日の…………顔文字?)」


そこには顔文字だけのメッセージが載っていた。

一つは『(っ´ω`c)マッ』そしてもう一つは『( ∩'-'⊂ )シュッ』と書かれていた。


「(どうゆう意味だ?他に文字がないなぁ)」


ただ顔文字だけの返信と新たに新規としてのメッセージが来ていた。

どういう意味を指しているのは分からないが、カズヒサは皆を気にしながら返信をした。


「『返信ありがうございます。この顔文字はどういう意味ですか?』と」


小さく声に出してしまいながらも返信をした。しかし直ぐに返信が来ることはなく、カズヒサは顔を上げた。

周りはドタバタと動いていた。みな病院に行こうと荷物をまとめていた。


「ほら、カズくんも!」


「う、うん!」


カズヒサだけは仕事の荷物を置いて直ぐに向かった。

会社に戻るつもりではいたため、財布とスマホだけをポケットにナオ達と一緒に病院に向かった。

突然の部長の死に、喜べばいいのか悲しめばいいのか、感情に縛られながらカズヒサは走っていった。





病院に着いたものの、親族だけの入室と禁じられ、一行は取り合えず近くの喫茶店へと入り、会議をすることにした。

今後の方針、自分たちの部署の上司が亡くなったことで、他の部署にも迷惑がかかる。

まだ他の上司への報告はしてないーーだが恐らく他の部署には今日中には伝わることになる。

そこで問題なのは、どこの部署の誰が上司となるか、だった。


「我々からじゃダメなのか?」


そう言い出したのは、会計士のルカと呼ばれる女性だった。

金髪でいつも面倒臭そうな表情で、指でテーブルをトントンと突っついていた。


「じゃあ誰が仕事受付やるのさ?」


直樹が言い出した。


「さぁ?」


その答えに対して適当にルカが答えると、直樹は大きなため息を着き、アイスコーヒーを一気に飲み干す。


「ぷはぁ……ならやっぱ、他の部署の上司になるな」


「えぇ……サボれないじゃん。私は嫌よ」


「お前なぁ……」


呆れる直樹だが、実際他の部署の上司を呼ぶということは、そこのホストに穴が開く。

それをつまり、こちらの部署の評価にも繋がってしまう可能性がある。

それを踏まえた上で、直樹は次の提案をするーーむしろこれは、直樹らしい答えだった。


「俺が部長補佐をやる!」


その一言に、カズヒサは少しだけ笑みが零れたーーだが。


「反対よ」


ナオが手を上げ、直樹に目線を向けた。そのことにカズヒサはヒヤッとした。


「あんたは熱くなりすぎて、話が感情的になるから商談とか出来ないタイプでしょうが」


「そ、そんなことないぞ!会社の情熱を伝えることが感情論って訳じゃないっ!」


「どうだか。どうせ補佐をこちらに決めるなら、私はカズヒサを推薦するわ」


「な、なんで僕が!?」


ナオの指名でカズヒサの名前が出たーーその事に顔に冷汗が出てしまう。

そして次に最も恐れていた声と言葉がカズヒサを襲った。


「それはいい!俺なんかより冷静さもあるし、何より仕事が出来るからな!」


直樹の声だった。この言葉を聞いた瞬間、カズヒサの脳裏に浮かんだ言葉はーー裏切り者ーーの一言だった。


「なら決まりね。報告書、書いておくから明日から宜しくねぇ」


「えっ?」


ルカに便乗するかのように直樹が応援をする。


「大丈夫だって!俺たちもいる!困った時は助けてやるって」


「う、うん!」


カズヒサは引きずる笑みで答えると、ナオや直樹達が席たち伝票を持ち、会計を済ませて領収書を会社名義で貰う。

ルカが席から立ち上がらないカズヒサの肩を軽く叩くと、小さく手を振って先に会社へと戻る。


「(どうして……僕が上司なんかを!)」


上司に昇格しても増えるのは仕事と給料だけーー新入してそんな間もない彼にとってそれは地獄絵図でしかない。

カズヒサが求めていたのは安定した仕事と安らぎ、このままでは生き地獄のビジョンが浮かんだ。


「……」


店を出ようと席を立つと、ポケットに入れていたスマホが床に落としてしまった。

その衝撃でスマホの画面が点くと、またサイトアプリから通知が来ていた。

そもそもこのアプリなんなのだろうかとカズヒサは思うーー軽く長く押すが、移動することも消すことも出来なくなっていた。

更に喫茶店に入ったせいでwifiに接続され、アプリのアップデート更新がされていた。例のサイトアプリは新たなに赤い目が描かれたイラストへと変わっていた。

不気味なはずのアプリだが、カズヒサはそんなことよりも通知の内容が気になりアプリを開く。


「……またか」


『(っ ´-` c)マー』そう書かれていた。


「ははっ、話せないってか。誰だって話したい言葉ってやつは話せないもんだよな。可愛い顔しやがって」


返信もせずにスマホをポケットにしまい、喫茶店を出ると、小さくバイブを鳴らしながら、返信が返って来ていた。


『(っ´ω`c)マッ』





「昇進祝いしよう!」


その日、全員が定時に帰宅を強制され、久しぶりにカズヒサは羽を伸ばせると内心喜んでいると、ナオがみなを呼び止めて来た。

それに部署のみんなが振り向き、直樹が大きく片腕を伸ばし声を上げた。


「いいねぇ!会社経費?」


「んな訳ないでしょ。みんなで割り勘よ。あ、カズ君は出さなくていいよ」


「あ、ありがとう」


仮面を作って生きるのがこんなに辛いと思ったのは今日を除いて他にないだろう。

信じていた仲間が、カズヒサの気持ちも考えずに面倒ごとを押し付けようとしている。

気の弱く、純粋で、無垢な彼は何か目に見えない重圧のようなものが伸し掛かっていた。


「行こう行こう!」


「もう、お金の事になる時だけルカちゃんは元気になるのね」


「会計士だからね。みんなで割り勘なら安く済む!」


「お前は守銭奴か?ってな!」


「あはははは!」


あははは、そんな笑い声すらカズヒサは笑いでなく、悪意にしか聞こえることはなかった。

何より、みんなといるだけで寒気を感じていた。他人事なんだ。そう思う他にない。

そんな彼も同伴の飲み会、カズヒサは断ることも出来ず、みんなの背中を追うようにお店へと向かうのだった。





深夜過ぎ、カズヒサは一人、酔っぱらいながら自宅へと着く。

千鳥足のまま、彼は布団に潜るように入ると、またスマホならアプリの通知が来ていた。


「……また顔文字か」


『(っ´ω`c)マッ』と書かれた返信と、次に書かれていたのは『(っ ´-` c)マー』だった。


「寂しいのかぁおい?ひっく……『早く癒しとやらを下さい』と」


そう打ち終えると、普段の疲れと酔いのせいで眠るカズヒサだった。だが、事件はもう既に始まっていた。


翌日のことだ。

会社にいつも通り遅刻ギリギリに着くと、みんながザワザワと騒いでいた。


「カズ、ヒサ……」


直樹が青ざめた顔でカズヒサを見る。みんなが見ていたのは、真っ赤な血を流しながら倒れている死体だった。正確には、今日から上司として来るはずの別部署の部長だった。


「なんで、また!」


ルカも青ざめていた。その様子にナオも戸惑っていた。


「きっと、内部の人間に違いないわ!」


「どうしてそう言い切れる?ライバル社のスパイかもしれないだろ?さては、お前か?」


「はっ!?冗談やめてよこんな時に!そういう変な推理するアンタじゃないの!?」


「ちょっとちょっと!」


カズヒサが間に入り、二人を止めたが、険悪のムードは続くばかりだった。そしてこの事件で刑事科問題となり、会社はしばらく営業停止を喰らうことになる。


何もかもめちゃくちゃ、カズヒサは「体は休めるけど、これじゃあ将来に安定がない」そう思っていた。





そしてみんなが帰ったその日の夜、直樹からメッセージが届いていた。


「なんだ?」


『会社』とだけ書かれたメール、カズヒサは無視をしようかと、そのままメールを閉じようとすると、またあのアプリからメッセージが届いていた。


「……言葉だ」


初めてのことだった。アプリの主から言葉が帰って来た。その内容は『友人の言葉に耳を傾けるな』と普通に漢字もひらがなも書かれていた。


「まるで、直樹が送ったのを知ったみたいじゃないか……」


カズヒサは直樹の安否が怖くなり、急ぎ足で会社へと向かった。走れば15分ほどで着く寮の位置、息を切らしながら走り出す。嫌な予感がしてならない。カズヒサはいつもの会議室の前にして、開けることを拒んでしまう。だが、直樹のことが気になり、ゆっくりとドアノブを開けた。


「……!」


すると、そこに見えたのは、今朝見た部署の人間のように真っ赤に染まるナオ、そして片腕を刃物で刺されたのか、片手で血を押さえている直樹がいた。直樹は壁際で息を荒し、動けない状況になっているのが分かった。


「来たわね、カズヒサ」


その声と、薄暗い会議室から月夜で照らされ見えたのはーールカだった。


「ルカさんが、殺人犯?」


カズヒサが驚くのも無理はない。彼女に、反抗の動機が思い付かないのだから。それどころか、サイトの主がルカであることにも、驚きでしかなかった。


「ルカさん、都市伝説も、あんたが?」


「あんたが深夜でSNS見てるの知ってたからね。私ね、あんたのこと好きなのよ」


「な、なにを言ってる……の?」


「だからハッキングしたのよ。アプリからでも見るだろうから、あのサイトに飛んでくれた時点で私の勝ち。んで、あの顔文字キャラ、本当の都市伝説みたいでしょ?顔文字のお化けが願いを叶える、しかも言葉は話せない……便乗して興味引いたのは私よ」


「本当の都市伝説……そうだったのか。じゃあアンタが都市伝説の主、なのか?」


「二度は言いたくないけど、便乗したのよ。つまり私じゃないよ本物は。特定的にアンタを釣ったのよ。あんたの高評価の覧、監視してたから直ぐに分かったのよ」


そうだったのかーーカズヒサは震えた。目の前で好きな人が無惨な姿で死に、友達だった人が瀕死の状態。でもカズヒサは、「僕はこの二人のことを嫌いと思ってしまった。そんな人間が、今さら好きと思っていいのだろうか」自分を責めた。

でもカズヒサはこうも思った。「でも殺す必要はなかった」彼は歯を食い縛りながら、ルカに質問を続けた。


「僕が求めていたのは、癒しだ。殺しじゃない」


「ふーん、そんな風に言うんだ。部長はあんたを攻め、二人はアンタにプレッシャーを与えて……見ていて思ったよ。アンタが今にも屋上から飛び降りそうなほどのショックを受けていたのを。みんなに作り笑いとかしちゃってさ……でも大丈夫だよカズヒサ。私はあんたの味方だから。私がアンタの嫌いなもの全部、全部全部全部!!!壊してあげる……」


「逃げろぉぉおおおお!カズヒサぁぁあああ!」


「!」


ルカが手に持っていた刃物がカズヒサに向けていた。ルカは知っていたーーカズヒサが自分自身にコンプレックスを持つことを。それを壊すということは、殺すことを指していた。止まらない彼女の足に、カズヒサはーー咄嗟に叫んだーー


「助けてぇぇえええ!まぁぁああああ!」


有りもしない都市伝説の顔の主、それはあのURLの顔文字だった。藁にもすがる思いの叫びが、この時、深夜2時丁度、丑三つ時だったのが幸いしたのか、奇跡が起きた。


『まっーー……』


声が聞こえた。しかし聞こえたのはルカだけだった。


「誰なの?あ、あ……頭が割れそう!」


刃物を落とし、頭を抱えたまま倒れ混む。すると、パソコンが一斉に電源が入り、デスクトップ画面へと移った。


「なに?!なんなのこれ!?」


会議で使うスクリーンまでもが自動で降され、繋がれた画面拡大のライトがスクリーンに映し出された。木霊する声を聞いたまま、ルカは頭をゆっくりと上げてスクリーンを見る。するとーー


『( っ`-´ c)マッ』と書かれた文字が出された。更に他のパソコンにも同じ『( っ`-´ c)マッ』と書かれていた。


「うるさーい!まあまあまあ!頭が割れる!」


その『( っ`-´ c)マッ』の文字の背景は次第に赤くなり、ルカだけに聞こえる声は続いた。

そして、大きいスクリーンの『( っ`-´ c)マッ』が次第に形が変わる。


『汝の願い……聞き入れた』


『( っ`-´ c)マッ』は『( っ`□´ c)マァァアアア』となり、開いた口から猛烈な突風がルカを吸い込もうとしていた。

咄嗟にカズヒサは近くのドアに捕まり、倒れている3人が吸い込まれる様を見ているしかなかった。


「いやぁぁああああ!!!助けてぇカズヒサぁぁあああああ…………………………」


声が聞こえなくなり、静けさだけが残った。

『( っ`-´ c)マッ』に戻り、その後にこう告げられていた。


『大丈夫、世界は収束され、モトニモドル』





翌日、カズヒサが目を覚ますといつもの寮にいた。ひどく辛い夢を見たような、そんな目覚めの悪い朝だった。

いつものように会社に着くと、直樹やナオが挨拶をした。


「おはようカズくん」


「おっすカズヒサ!なんだぁ?またナオの胸見てるのかぁオイ!」


いつもの冗談を言う直樹、セクシーなナオがそこにはいた。カズヒサは何か大事なことを忘れているような、そんなことが頭を浮かんだのだった。


「あれ?うちの会計士って……誰でしたっけ?」


「何言ってるのよ。あの人よあの人」


「そうそう……とはいえ、昨日来たばかりの新人だったからな。直ぐに覚えるのも無理だろうけど。おっと、噂をすれば……おはよう!」


振り向くと、そこには記憶には無い女性が、カズヒサの視界へと入った。


「おはようございます直樹さん、ナオさん。それと……カズヒサさん」


僕は思わず、こんなことを聞いてしまった。


「メアド、送ってもらえます?」


「なんだよ朝からナンパかよ?」


「そうじゃないんだ!なんでだろ……なんか凄く交換したくなっちゃって……」


「はぁ!?」


「ふふ、いいですよ。カズヒサさんて不思議な人ですね。じゃあアドレス、教えて下さい」


彼女にカズヒサのメアドを教えると、彼女から空メールが送られてきた。いやこれは空メールではない。件名には『(っ´ω`c)マッ』の顔文字があったのだから。


「それより知ってます?都市伝説なんですけど、丑三つ時に現れるサイトから『助けてぇぇえええ!』て女性の声がするサイトがあるみたいですよ?」

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