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私の中の小人たち

作者: 川咲 みゆ

『他人の悪口は言わないようにしよう』

ある時私は自分でそう決意してみる。

(そう思っている君はえらい!)

空耳なのか、どこかで私の思考回路に合いの手を打つ声が聞こえる。


『〇〇ちゃんって、こんな良いところがあるよね。私も見習わないと。

〇〇さんは少し厳しい人だけどしっかり者だし、何より私のことを思って指導してくれているんだろうな。良い人だな。』

(人の悪いところじゃなくて良いところを見つけようとするなんて、君は立派だね!さすがだ。)

まただ。どうやら私の頭の中に住んでいるらしい小人たちが私の考えに続けておかしなことを言ってくる。


『たくさん勉強するんだ。努力も怠らないんだ。でも、他の人からは見えないところで頑張っていたいな。』

(それこそが本当の努力なんだよ!君は強い心の持ち主だ!)

なんだこの子たちは。私はこの小人たちの言っていることを喜んで聞いていていいのか?


『お腹すいた…』

(お腹すいた…)

初めて、私と私の中の小人たちとの考えがシンクロした。


『なんだか今日は疲れたな。早く家に帰って休もう。そして……』

(……そして家に帰ったら昨日買ったお菓子を食べよう!)

もしかして、この子たちは私の考えが分かるの?

それとも、この子たちはずっと私と同じことを考えているの?


(やっぱり家に帰る前に近くのコンビニに寄ろうっと)

今度は小人たちの声が私の考えになった。


(眠いなー)

小人たちがそう言ったとき、私は大きなあくびをする。

もしかして、私自身が小人なの?

私の中のどこかに小人が住んでいるのだと思っていたけれど、私の考えと小人たちの言葉との間に境界はないのかしら。


(最近の君は頑張ってるね)

これ、本当に私が言っているの?

(えらいぞ!)

ええい!もう!うるさい!

どうして私が私から褒められなきゃいけないの!?


『私は人から褒められなくったって、自分が損をするかもしれなくったって、他人のためになることをしていくんだから!』

(『そうだよ!それこそが本当にきれいな心の持ち主だ』)

今、私、自分でこれを言ったの…?


(『自分でそんなことを思っている限り、君は永遠に立派な人にはなれない。どんなに良いことをしたって、それは自分のことを自分で褒めたいから、自分が立派な人間だと自分で思いたいからしているだけのことなんでしょ?』)

そんなこと、私が一番わかってるよ!私の中にあなたたちが住んでいるからいけないんじゃない。いつもあなたたちは私を冷やかしてくるのね。

(『なんて無責任な人。この言葉だってあなたが考えて言っていることなのよ。もしかして、自分の思考回路とは別に天から言葉が降ってきていると思っていたの?それに、冷やかしてなんかいないわ。ずっと褒めてあげているじゃない。あなたが喜ぶことは分かっているんだから。』)

なんて意地悪なの!それじゃあ私はただ自己満足で幸せを感じているだけの人じゃない!

(『やっと気が付いたんだね。君が、私が、自分が思っているほど立派な人間なんかじゃないってことに。』)


道の真ん中に落ちているゴミを拾ってみる。

『町がきれいになったら、他のみんなもうれしいよね。』

(君はえらい!)

今日も私の中の小人たちが私の考えと行動に合いの手を打ってくる。

あなたたちがいる限り、私はただ褒められたくて動いているだけの人間になってしまうのに。

でも小人たちは私の中から出ていかない。

小人たちこそが本当の私だってことは、今では自分が一番よく分かっている。

私はこれからもずっと、この小人たちと一緒に生活していかなければならないようだ。






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