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天竜と海竜

黒いドラゴンの名前を変更しました。

 人という生き物はあり得ないことがあって思考回路が追いつかないと、現実逃避をするのは仕方ないことだと思うんです。


「ね、ねぇ。私今、幻が見える。でっかいドラゴンの幻が見える!」


「はははは・・・。何を仰っているんですか陛下。大丈夫ですか?私には何も見えませんよ。ええ、絶対に何も見えませんとも。それにしてもチビドラゴンたちは何処に行ったんでしょうかね。私探してきますです・・・。」


「何を言っているのだ、我が主もブランも。あのドラゴンなら目の前にいるではないか。それにしても、生き物がよく食べよく遊べば成長するというのは本当だったのだな。立派になったものだ。」


 ノワールが感慨深そうに頷きながら黒いドラゴンの足をポンポンと叩く。

 ・・・いやいやいや!

 立派になりすぎでしょ!

 よく食べっていっても食事したのはさっき一回だけだし、よく遊びっていっても今日初めて外に出たんですけど!

 こんないきなり大きくなられても普通、受け入れられないと思うんですけど!


「わ、私の可愛いチビドラゴンたちが~。」


「・・・短い人生だったなぁ。」


 もうチビドラゴンを見れないことを嘆く私と、既に死を覚悟してしまっているブラン。

 そんな二人を無視して楽しそうなノワール。

 色々と考え方がずれている三人なのである。


『おい!いつまで俺たちを放置してやがる!』


「「!?」」


 色々落ち込んでいた私とブランはいきなり上からかけられた声にギョッとする。


「え?しゃ、しゃべった?」


『喋ったら悪いのかよ。』


 そう言って鼻を不機嫌そうにならす赤いドラゴン。


『無理もありませんよ、赤竜・・・じゃなくて朱凰。相手は人間なのですから。』


 と反対に落ち着いて話す青いドラゴン。


『そうよ。私たちを見て驚かない人間がいたら逆にこっちが驚くわよ。』


 そう言ってため息をつく緑のドラゴン。


『ここはどこなのでしょう?』


 そしてキョロキョロと辺りを見渡す白いドラゴン。


「ねぇ、ねぇブラン。ドラゴンって喋れるんだね。」


「そうみたいですね。今まで聞いたことありませんが。」


 私たちがこそこそと話しているとそれが聞こえたらしい朱凰は自慢気に胸を張り、


『ふん!俺たちをそこら辺の竜と一緒にするな。俺たちは竜の中の最上位種、竜神だ!どうだ、驚いただろう!』


「「・・・。」」


 色々な意味で絶句する二人。

 竜神ってことは神様?

 げ。ということはもしかしてかーちゃんの仲間だったり?

 あ、そもそもドラゴンたちが生まれた卵ってかーちゃんにもらったんだったけ。


『ですからそんなことを知っているわけがないと言っているでしょう?これだから脳筋は・・・。』


『なんだと!?もういっぺん言ってみろ!』


 やれやれのポーズをして首をふる青蘭に苛ついたらしい朱凰が突っかかって二人で喧嘩を始める。

 ああ、振動がくるからあまり暴れないで・・・。


『はぁ。あのバカたちは放っておきましょう。それにしても、あなた三つも卵を孵せるなんて凄いわね。並大抵の人間では卵を孵すことすら難しいのに。』


「え?そうなの?」


 難しいと言われても見つけた卵は全部次の日には孵ったし特に何かした覚えはない。

 ノワールとブランが持っていた卵だって問題なく孵ったしね。


『ドラゴンの卵が孵るためには相当な魔力が必要なのよ。だからこれまで卵が一度に孵ることなんてなっかたの。それに今までよりも力がみなぎっている気がするのよね。それだけ与えられた魔力が多いってことなんでしょうけど。でも、普通ありえないわよね・・・。』


 そうか、ドラゴンが孵るには大量の魔力が必要なのか。

 それで私の魔力を吸って生まれたと。

 確かに私は神様に無限の魔力をもらったしね。

 あ、もしかしてそのために無限の魔力をくれたとか?

 くそぅ!またかーちゃんにいいようにやられたっ!

 え?卵が孵せたんだから別にいいじゃないかって?

 違うんですよ!

 全部かーちゃんの思い通りっていうのがなんか悔しいんです!


『まあ、あなたが私のパートナーであることには変わりないし色々考えてもしょうがないわよね。』


「は?パートナー?」


 なんですか、それ。


『そうよ。ほら、私たちって卵から孵るためには魔力が必要でしょ?その魔力を与えてくれた相手にお礼ってわけじゃないんだけど、ドラゴンがパートナーになって力を貸すのよ。その相手が死ぬまでね。あ、でもなんでも言うことを聞くってわけじゃないから勘違いしないでちょうだいね。』


 なるほど。

 そういう仕組みになっているのか。

 ん?ということは、私たちが死ぬまでドラゴンたちはずっとここにいるってこと?

 え、それってお断りすることはできないのかな?

 せめてあの未だに騒いでいるあの二匹のドラゴンとか遠慮したいんですけど。

 絶対色々大変だよね。

 食費もそうだけど、主に精神的な面で!


「なるほど。だいたい分かった。でも私たちたちが死んだ後はどうするんだ?」


 状況を呑み込めたらしいブランが翡翠に尋ねる。

 うん、確かにそれ気になるね。


『特に決まってないわ。また卵に戻ったり、ぶらぶらと旅をしたり自由よ。でもパートナーからの魔力をもらえないから卵に戻ることが多いかしらね。まあ、ちょっと力が落ちるぐらいで多めの食事をすれば問題ないんだけど。』


「え?待って、卵に戻るの!?」


『ええ、そうよ。そしてまた卵を孵してくれるパートナーが現れるまで卵の中で眠るのよ。』


「え、じゃあ、あなたたちって今日初めて生まれたわけじゃないってこと?」


『そうだけど?』


 な、な、なんですとー!?

 なんか卵の役割が違うんですけど!

 もう卵がベットみたいになっちゃってるよ!

 驚いて口をパクパクさせる私とブラン。

 そうですよね。

 これ今日一番の驚きだよね。

 今日もう何回一番の驚きを更新したか分からないけど。


『そんなことはどうでもいいわ。ねえねえ、せっかくだし私の背中に乗ってみない?きっと楽しいわよ。風に飛ばされたり、息苦しくないように結界も張ってあげるし。』


「え?いいの!?」


 まさかドラゴンの背中に乗れる日がくるなんて。

 さすがファンタジー!

 これは素直に嬉しいかも!


『待て。背中に乗るなら俺にしとけ。俺に乗った方が楽しいに決まってる。』


『そんなわけないでしょう。野蛮な朱凰に乗るよりも私の方がいいですよ?』


『待ちなさいよ!私が先に話してたのよ!さっきまで仲良く喧嘩してたんだから、向こうでまた喧嘩でもしてればいいでしょ!』


「・・・。」


 さっきまで喧嘩をしていたはずの朱凰と青蘭がやってきて自分の方に乗れと言ってくる。

 会話聞いていたのか。

 っていうかまた言い争い始めたし。

 しかも今度は翡翠まで加わってる・・・。


「陛下、では私は先に琥珀に乗って空を飛んできます。任せたぞ琥珀。」


『任せてくださいませブラン。きっとあなたも気に入りますわ!』


 あ!待ちなさい、ブラン!琥珀!

 くっ、裏切り者め!

 というか、いつの間に仲良くなったんだ、あの二人は。

 特になにも話したりしてなかったよね?

 あー、私も早く空を飛んでみたいよ。

 もう誰でもいいから乗せてくれー!

 ・・・ん?そういえば、ノワールと柘榴はどこに行ったのかな?


「そうかそうか。それでお前の趣味はなんなのだ?」


『・・・べつに。』


「そうかそうか!強い者と戦うことか!また我と一緒だな!やはり我と柘榴は気が合うようだ!ワーハハハ!」


『・・・。』


 ・・・なんか仲良くなったみたいで良かったね。











「わー!すごい!」


 あの後私はくじ引きを作り、当たりをひいた朱凰に背中に乗せてもらい空を飛んでいる。

 ノワールも黒曜に乗って空を飛び始めたみたい。

 ちなみに青蘭と翡翠には留守番してもらっています。


「最初は怖かったけど、空を飛ぶのって楽しいね。」


『当たり前だ。乗せているのは俺なんだからな。また空を飛びたくなったらいつでも言えよ。いつでも乗せてやる。』


「あ、うん。ありがとう。でも次は青蘭か翡翠に頼むから。」


 ハズレをひいた時の二人(二匹?)の顔はなんかかわいそうなくらいの表情だったからね。

 今度乗せてもらわないと。

 それにしてもそんなに背中に乗って欲しいものなのかな?


『ちっ。なんで三つも卵を孵したんだよ。俺だけで良かったのによ。』


「そ、そんなこと言われても私も色々知らなかったの。というか、ドラゴンってそんなに背中に乗って欲しいと思うものなの?」


『あ?別にそういうわけじゃないぜ。ただ、なんというか、その、お前は俺たちにとって親みたいなものでもあるんだ。だ、だから、その、本能的なもんっていうか・・・。』


「親に甘えたい子供みたいなかんじ?」


『べ、別に俺はそういうんじゃないけどな!』


 なるほど、親みたいなものねぇ。

 大昔に生きていたドラゴンに親だと思われるのもなんか変だけど。

 卵を孵したんだからあながち間違いではないかもね。

 もしかしてあれかな?

 本能は子供、頭脳は大人、みたいな。

 ・・・なんか有名なアニメみたいだね。



 しばらく飛んでいると海が見えてきた。

 ああ、そっか。

 そういえばこの国って島国だったね。

 ・・・ん?なんか海にでっかいなにかがいる気がするのは気のせい?


『ん?あれは・・・。』


 朱凰も見つけたらしくなぜか方向転換をする。


『ちょっと行ってみるぞ。』


「えええ!?」


 なにかも分からないまま、近づくのは遠慮したいんですけど!

 そして朱凰はスピードをあげ、すぐにその生き物がはっきり見えるところまで近づいた。


「でっか!!」


 その生き物は天竜たちよりもずっと大きい。

 見た目は天竜たちのような西洋の竜ではなくてどちらかというと東洋の龍のような姿をしている。


『やっぱりお前だったか。久しぶりだな、海竜。』


『ん?誰かと思えば赤竜ではないか。なぜお主がここにおるのじゃ?』


 え?まさかの知り合いなの?

 というかこの龍、ノワールの言ってたシーサーペントじゃない?たぶん。


『俺はこいつに起こされたんだよ。それと俺はもう赤竜じゃない。こいつから朱凰って名をもらったんだ。あと俺だけじゃないぞ。他のやつらも全員目覚めた。うち、俺を含めた三体はこいつのパートナーだ。』


『ほう。そんなことが・・・。ん?』


 そのとき、遠くから声が聞こえてきた。

 と思ったらすぐにドスン!と黒いドラゴンが降り立った。


「おお!シーサーペントよ、久しぶりではないか!」


 柘榴に乗ってきたノワールが大きい龍に話しかける。


『お主とはそこまで久しぶりでもないのじゃが。相変わらず元気そうじゃな、鎧よ。』


 あ、やっぱりこの龍はシーサーペントだったのか。

 この国の守り神で、確かこの国を外から守っていてくれて、ブランも助けてくれたという。

 そういえば会いに行きたいと思ってたんだけど、城からここまで遠いから当分の間は無理かなって諦めてたんだよね。


「我はもう名前があるのだ。鎧ではなくノワールと呼んでもらいたい。我が主から頂いた大切な名だ。」


『なんじゃと!?では、まさかその方が。』


「ああ!我々が待ち続けたこの国の王であらせられる!」


 ノワールが大きな声で大袈裟に私を紹介する。

 するとシーサーペントが感激したように声を震わせる。

 あ、いや、そんなたいした人間じゃないんです私。

 だからなんか恥ずかしいからやめてくれ!


『お前、王だったのか・・・。』


 朱凰の「え、まじかよ。」みたいな驚いたような声が妥当な反応で逆に嬉しかったりしたのだった。

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