軍事力拡大!あくまで防衛のためです
代表会議が一段落し、休憩を挟み再開する。
今度は私から提案することがあるのだ。
「私は軍事力の拡大に着手しようと思っている。」
手を顔の前で組んで机の上に肘をつき、それっぽくポーズを決めて言った私の発言に全員が息をのんだ。
「なるほど陛下。ついに世界征服に乗り出そうと」
「いやいやいや!違うから!」
私が慌てて否定すると全員が「え?違うの?」というような表情をした。
え?私、そんな野心家に見える?世界征服目指してそうに見えてるの?
ちょっと衝撃を受けて言葉が出ないでいると、みんなが曖昧に笑った。
うん。それはどういう反応?
私はどう受け止めればいい?
「申し訳ありません。陛下は野心家ではないとは思っていたのですが、気に入らないやつは容赦しないタイプだとは思っていたので、てっきりレザラム帝国あたりに喧嘩を売るつもりでいらっしゃるのかと。」
「うん。それ普通にダメなやつ。」
私ってそういうイメージだったんだ。気に入らないやつぶっ飛ばすとか普通に野蛮人じゃないですか。ちょっとショック。
私はそんな直情的ではなく、これでも理性的だと自負していたんだけど。
いつからそんな間違ったイメージがついてしまったのか。
「間違った?」
「なにかいったかね。ドゥーべ卿?」
私が笑顔でゴードンに視線を向けると、ゴードンは勢いよく首を横にふった。
フーハッハッハッ!発言には十分に気をつけたまえ!
と、まあ冗談はこれくらいにして
「自分たちから侵略を行うことはないけど、防衛や友好国から助けを求められた時に戦力は必要だと思う。今のところ私たちの国の戦力といえばドラゴンだけだから。」
ノワールとブラン以外は知らないけど、ドラゴンたちが今協力してくれているのは、私たちが卵を孵したパートナーだから。
もし、私たちがいなくなったらドラゴンたちには協力する義理はないのだ。
私が頼めばもしかしたら国を守ってくれるかもしれない。
しかしそれが何十年、何百年と続いていけばドラゴンたちにずっと頼りっぱなしではいずれ愛想をつかされるだろう。
「ドラゴンたちに頼りっぱなしでは駄目なんだよ。彼らは兵器ではないし、今は彼らの好意に甘えている状態だからね。今はまだ仕方がないかもしれないけど、いずれは私たちだけで自力で国を守るための戦力を整える必要があると思う。」
私がそういうと全員が納得してくれたのか頷きながら考えている様子。
「それにね。ドラゴンだと周りの被害がシャレにならないんだよね。この前だって結構ドラゴンの攻撃による被害が凄かったし。あのときはああするしかなかっただろうけど。」
「まあ確かに。」
「あれは凄まじかったですからなあ。」
実際に被害にあっているクロードは実感の籠った表情で深く頷き、セルジュは曖昧に笑っていた。他の人たちも口々に感想を言い合っている。
助けるために辺りを破壊してちゃ割りにあわないよね。襲撃者とかが隠れられたら追えないって事態になりかねないし。
まあそんな理由もあり私は軍を編成する決意をしたのだ。
「戦力を整えるべきだということは理解しました。しかし軍を編成するのですかな?騎士団ではなく?」
え?何故王国なのに軍なのかって? 格好いいからですがなにか?
とまあ冗談はおいといて
「えーっと両方かな。騎士団と軍で役割を分けるつもり。クロード、みんなに資料の配布を。」
「かしこまりました。」
私は事前に作成しておいた資料を配る。クロードにめっちゃダメ出しされて半泣きで何日もかけて作った計画書。
クロードが厳しくて、飲み物や軽食を準備してくれたセルジュの優しさに涙が出そうだったなあ。
なんという飴と鞭だろうか。今まで気がつかなかったけど、もしかして二人の計画的犯行ですか?
今まで私は二人の手のひらの上でコロコロコロコロ・・・
「どうかなさいましたか?」
「イヤ。ナンデモナイヨ?」
セルジュの優しい笑顔がなんだか怖くなってきたんですが。誰か私に考えすぎだと言ってくれ。
まあ、軍備を整えたいと言ったのも計画案の作成を手伝ってくれと言ったのも私なんだけどね。二人が積極的に手伝ってくれたから完成させることができたんだし。
実際、クロードの指摘は的確で説明されてなるほどと勉強になることばかりだった。
私だって今さら文句は言うまい。
私が計画書作成中のときのことを思い出している間にも大公たちは資料を読み進めていく。
「なるほど。騎士団と軍を両方編成し、役割を分けると。」
そう。騎士団と軍の両方を設立するのは役割分担のため。日本でいう警察と自衛隊みたいに別の組織にする。
騎士団は要人の警護や王宮の警備が仕事。
王族や貴族の護衛や公の場での活動が主だから、マナーや礼儀作法も必要になる。
そのため貴族がなることが多いと思う。
後々は貴族の子息たちの就職先になるんじゃないかな。
軍は戦争や災害時の救助、また魔物対策が仕事。
だから主に城外での活動になる。
普段は要所に砦を建設してそこに駐在してもらう予定だ。
それと、軍は完全なる実力主義社会で、貴族だろうと平民だろうと関係ない。
だから平民が貴族の上に立つことだってあると思う。
それを理解した上で所属してもらいたい。
「なにか質問はある?」
一通り読み終わった様子だったのでみんなに尋ねるとローランが手を挙げた。
「町の巡回や警備は引き続き警備隊が行うのでしょうか?」
「そのつもりです。」
町では既に警備隊がトラブルが起こっていないか巡回をしてくれている。
これは町の人たち平民が主に行う仕事になると思う。
理由としては町の人たちに身近な存在でいてほしいから。そうすれば協力も得やすいと思うし。
「ここには領主が騎士団を持つことを許可するとあるんじゃが。よいのか?」
ゴードンが手を挙げてそういうと、私は言葉の意味が分からなくて首を傾げる。
「いいのかとは?」
「じゃから貴族が武力組織を持つと反乱が起きやすくなり危険じゃなかろうかと」
「うーん。でも貴族なんだから護衛くらい必要でしょ?自分が信頼できる相手がいいだろうし。もちろん規模は制限させてもらうけど。」
「それはそうじゃろうが」
ゴードンは心配してくれているんだろう。
今は建国したばかりだし、大公たちとも志をひとつにできているから良くても、時が立てばいづれ王に対して反感を持つ貴族も出てくるはず。
その時、貴族が武力を持つことを許されているのと許されていないのとでは大きく違ってくる。
私もクロードもそれを考えなかったわけじゃない。
それでもその時の王が正しいとは限らないと私は思ったわけだ。
それに騎士団はそうでも軍は国の組織で王しか命令権はないからね。人事権も王が持ってるし。
「他に質問もないみたいなので、軍組織について説明します。」
内訳としては陸軍、海軍、空軍。
でもなあ。空軍は帝国みたいにワイバーンを利用すればなんとかなるかもしれないけど、海軍はなあ。
船の建設には時間がかかるし、なんといっても一番の問題は王国周囲の海域には強くて危険すぎる魔物が多いんだよ。
珊瑚がいれば魔物は近づいてこないけど、いつもついてきてもらうわけにもいかないし。
だからまずは強い魔物にも負けない船を造船する必要がある。
「今はまだ空軍と海軍の運営は難しい。だからまずは陸軍の組織から始めたいと思う。」
私がそういうとみんな頷いた。
「たしかにおっしゃる通りです。帝国の活動が活発になってきている今、軍の組織は急務です。いつシェルフィート王国から援軍要請がくるかも分かりません。向こうもこちらの事情は理解してくださってはいると思いますが、代わりに竜神様の派遣を要求してくることも考えられます。」
「竜神様はこの国の守護獣であり陛下のおっしゃる通り戦争の道具にするのは反対です。」
「その通りだ。竜神様に迷惑をかけるわけにはいかない!」
みんなが口々にドラゴンたちに頼るべきではないとそういってくれる。
・・・なんかいつも冷静なカミロが力説していてちょっと引いてしまう。
そういえばドラゴンを初めて見たカミロは興奮していたっけ?
なんだか色々ありすぎて遠い昔のように感じるなあ。
「では軍を組織してなるべくドラゴンたちには頼らなくてもいいように戦力を整えるということでいいでしょうか?賛成の方は挙手をお願いします。」
もちろん全員の手が挙がり賛成を得ることができたのだった。




