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道しるべの国と謎の卵

 ブランという新たな臣下を加えた次の日。

 私に食事の準備をさせるわけにはいかない!と言ったブランに朝食を用意してもらい、のんびりと食事をしていた。

 それにしてもなかなか美味ですね。

 顔がいい上に料理までできるとは。

 ブラン恐るべし!

 そんなことを考えながらまったりと過ごしていたのです。

 しかし私は、一番(?)重要なことを忘れていたのだ。


「あ、あの、陛下。」


「ん?どうしたの?」


 呼び掛けてきたブランを見ると、なぜか眉間にシワをよせて深刻そうな顔をしている。

 どうしたんだろう?

 具合が悪い?

 それとも、さっき一緒に食事をすることを拒んでいたブランを無理やり席に着かせたことをまだ怒ってる?

 そ、そんなに私と食事をするのが嫌なのか・・・。


「・・・恥ずかしながら陛下。私はまだ陛下の治める国の名を知りません。自分の仕える国の名も知らないとは本当に自分が情けないです。まことに申し訳ありません!是非、愚かな私にこの国の名を教えて頂けないでしょうか!」


「・・・。」


「ッ!言葉を失われるのも無理はありません。ですが、どうか!」


「・・・ないんです。」


「へ?」


「・・・国の名前、ないんです。」


 ワーー!

 すっかり忘れてた!

 そうだよ!必要だよ国の名前!

 国の名前もないのに王様だ!とか言っていたのか私は!

 は、恥ずかしー!

 ・・・おい、ちょっと!

 そこの鎧くん、我関せずみたいな感じで食べてるんじゃないよ!

 っていうかパン何個目だよ、食べ過ぎだよ!


「へ、陛下?」


「・・・こほん。ブランくん、君に重要な任務を与える。」


「は?あ、いや、はい。・・・まさか!」


「君にこの国の名前をつける権利を与える!立派な名前を考えるように。以上!」


 必殺、丸投げである。

 ブランの驚愕した顔が面白かったです。






 あの後、必死に私からの重要任務を辞退しようとするブランがそろそろかわいそうになってきたので、任務を解いてあげることにしました。

 だって土下座までされたらね、なんか私が悪者みたいになったんですよ。

 でも自分で考えた名前が国の名前になったら嬉しくない?

 ・・・え?私?

 私は別に嬉しくないですね。

 だって面倒くさいじゃん。

 でも考えないという訳にもいかず、こうして今頭を悩ませて色々考えているんです。


「あーー、何にしよー。全然思いつかない。」


「陛下が良いと思ったものでいいんですよ。」


「私はブランが考えたのがいいと思うけどなー。」


「・・・前言を撤回します。」


「我はやはり、カリン国が良いと・・・」


「却下です。」


 なんだ、その非常に恥ずかしい名前は。

 私以上にネーミングセンスが無さすぎるよ、ノワール。


「では、我が主の好きな物の名前でもつければよいのではないか?食べ物とか。」


「食べ物かよ!」


 いや、それはいくらなんでもないと思います!

 ・・・ふむ、でも、好きなものねぇ。


「好き、というか、疲れた時とかはよく星をみてたなぁ。あんまり詳しくないから星座を見つけたりとかはなかったけど。心を空っぽにして星を見上げていると、なんか落ち着くんだよねぇ。」


 星の名前・・・。

 いいかもしれない。

 なんか格好よくない?

 ああ、でもあんまりたくさん知らないや。

 せいぜい基本的な星座と北斗七星くらい。


「・・・よし!決めた!『ポラリス』にする!」


「ポラリス、ですか?」


「そう。北極星って意味。私の故郷で道しるべになる星なの。」


 道しるべになる国、か。

 我ながらなかなかいいのを思いついたんじゃない?

『ポラリス王国』。

 うん、悪くないね!


「さすがです、陛下!道しるべの国とは!素晴らしい国名です!」


「うむ、さすが我が主だ。きっと名付けの才能があるのだろう。」


 名付けの才能・・・。

 私にそんなものがあったとは!

 私が今までつけた名前。

『黒』、『白』、『北極星』。

 ・・・今更考えてもしょうがないよね!

 少なくとも、私に才能がないことは分かりました!

 さてと、国名も決まったことだし、そろそろ住民募集とかした方がいいのかな?














 ある日、私は奇妙なものと運命の出会いをすることになる。





「それで、話ってなに?ノワール。」


 私はノワールに話があると言われて、ブランに入れてもらったお茶を飲みながらノワールの話を聞くことにした。

 なんか重要なことらしい。


「うむ。我が主がこの国の王となってから、三日がたった。そこで、王しか入ることのできぬ部屋のことを伝えておこうと思ってな。」


 なんと!そんな部屋があるなんて!

 まさかまたなんか神様のプレゼントだよ!っていう手紙が置いてあるとかじゃないよね?

 そこがちょっと不安だけどその部屋のことは気になる。


「それで、その部屋はなんの部屋なの?」


「それは宝物庫だ。」


「「宝物庫!」」


 私とブランの大きい声が揃う。

 ブ、ブラン!お茶こぼれてる!

 それにしても、みなさん!宝物庫ですよ、宝物庫!

 それってあれだよね?

 金銀財宝とか伝説の武器とか!

 なんとこの城にそんなものがあるなんて!

 あの神様にしてはロマンがあるね!


「そ、それで、その宝物庫ってどこにあるの?」


「地下である。我は案内ならできるが、王以外は決して入ることはできないのだ。」


「そ、そっか。それでその宝物庫の前まで案内してくれるの?」


「うむ。そこにはどんな財宝よりも大事な物があるらしく、それを早く王に渡さなければならないのだ。」


 そ、そんなものがあるんだ。

 財宝よりも大事物ってなんだろう?

 やっぱり貴重な武器とかかな?


「我も何があるかは知らん。主自らその目で確かめられよ。」






 私たち三人は宝物庫を目指して地下に向かい、宝物庫の扉の前までやってきた。

 ここまで普通に一本道だったけど、ここまでたどり着けるのはノワールと私だけらしい。

 だからブランが一人で宝物庫を目指しても絶対にたどり着けないようになっているんだって。

 そして中に入れるのは私だけ。

 ちなみに私と一緒に入ろうとしても無理。

 なぜなら、この扉は開けるんじゃなくて通り抜けるものだから。

 どうなっているんだろうね、これ。


「じゃあ、行ってくるね。」


「お気をつけて。」


「我にも後で何があったか教えて頂きたい。」


「分かった。楽しみに待っててね!」


 さて、お宝との対面よ!









 世の中、ついていい嘘といけない嘘があると思うんです。

 なぜ私がこんなにテンションが低いのかというと、目の前にあるものが原因です。

 宝物庫の中には金貨などの入った大きい袋が無造作にたくさん積んであります。

 でも、私の目の前にあるのはお金ではありません。

 クッションのひいた台の上に大事そうに置かれている・・・なにかの卵。

 しかも五つ!

 しかもデカイ!

 しかもカラフル!

 なんじゃこりゃー!ってなりますよね?

 どんな財宝よりも大事な物ってこれ?

 あ、そうか。

 きっとこの世界ではお金よりも卵の方が貴重なんだ。

 なかなか手に入らないのかもね、卵って。

 それともめっちゃ高級な卵?

 これでプリン作ったら美味しいのかな?

 ・・・あ、今卵が震えなかった?

 ハァー・・・。

 なんの卵か分からないのに持っているのはなんか怖いけど、大事そうにしてあるし、とりあえず二人にこの卵を見せてみるか。

 そう考えて、近くにあった大きい袋に卵を五つ入れて宝物庫を出ようとする。


「なかなか大きいから五つも運ぶとなるとさすがに重いわね。なんかサンタクロースみたいになってる。・・・ん?」


 そして私は見つけてしまった。

 あの手紙という名の恐ろしい物体を!


「読まずに捨ててしまいたいけど、そういう訳にもいかないよね。きっとこの卵のことも書いてあるだろうし。」


 私は暗い気持ちで手紙を読んでみる。


『やっほー!元気?ついにここまでたどり着いたようね!もうこっちの生活にもなれたんじゃない?まだ三日だけど!

 そこで、私からの最後のプレゼントよ!ジャジャーン!なんとカラフルな卵!嬉しい?嬉しいよね!うん、あなたが喜んでくれてかーちゃんも嬉しい!何が生まれてくるかな?楽しみだね!あなたが親になるんだから名前もつけて可愛がってね!なんてったって名付けの天才だもんね!プププー!あ、五つの卵の面倒をみるなんて大変ってときは黒い卵をノワールに、白い卵をブランだっけ?に頼んでもいいよー!その代わり三つくらいはちゃんと面倒みてよね!じゃあ、これからも頑張ってねー!

  あなたの親友かーち・・・』


 ビリッ!


 はー、疲れた。

 手紙読むのって精神力がいるんだね。

 いつも思うけど無駄にテンションの高い手紙だな。


「・・・。」


 っていうか、これ絶対こっちの様子見てるでしょ!

 手紙だってさっき慌てて書いたでしょ!

 なんか字が急いでるし!

 だったら要点を短く書けばいいのに、無駄にイラッてするような無駄な文をいれるんじゃないよ!

 というよりも結局なんの卵だとか書いてないし!

 なーにが、何が生まれてくるかな?だよ!

 一番知りたいこと書いてないよ!

 ハァー、ハァー・・・。

 疲れた、もう戻ろう。


 そして戻ってきてげっそりとやつれた様子の私を見たブランが物凄く慌てたのは言うまでもありません。

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