橋の完成と魔道具の性能
私とクロードは現在レティシアの領地、アルカイド領に来ている。
ここはポラリス王国の玄関口なのだ。
「これ、なんですか。」
「橋です。」
「そんなことを聞いているんじゃない。なんで昨日までなかったはずなのにいきなり巨大な橋が出現するんだと聞いているんだ。どう考えても1日でできるものじゃないだろ。」
「だってシェフィールドの王様が造っていいって言ったんだもん。」
「だもんって・・・」
いやいや、なんでクロードからそんな目で見られないといけないのかな?
いいじゃないかべつに、だもんって使ったってさ。
「それでなにか弁明は?」
「ちょ、ちょっと待つんだクロード君。私悪いことしてないよね?むしろ頑張ったって褒められるべきだよね?」
「やりすぎだと言っているんだ!こんなのがいきなりできたら他国からも目をつけられるぞ!」
「うっ!そう言われると・・・」
私がなんでこんなにクロードに怒られているのかというと、私が造った橋が原因だ。
ダンジョン機能を使ったので橋が1日で完成してしまったのだ。
ちゃんと夜に設置したことはしたんだけどそれでもこれはみんなびっくりするよね。
「ごめんなさい。ダンジョン機能が優秀すぎました。」
「それ、謝る気ないだろ。」
そんなことないですよ。
こう見えて結構反省しているのです。
「やってしまったのはしょうがない。さて、反省はここまでにして早く仕事を始めようー!」
「もうちょっと真面目に反省して欲しいんだけどな。」
クロードがそうぼやくけど、だって忙しいし仕方がないよね!
転移魔法で王宮に帰ると私はシェフィールド王国に使者を向かわせた。
使者といってもブランに国王への手紙とお詫びの品を渡しに行ってもらっただけだけど。
手紙の内容は橋ができたことへの報告と橋にまだ誰も通れないように見張りをおいて欲しいというお願いだ。
うちの方の橋の入り口はお久しぶりのノワールの部下のゴーレムが見張りについている。
いや、お久しぶりとはいっても最近は王宮の門番をしてくれているんだけどね。
私はあまり門を通らないから会わないけど。
ついでにブランに冒険者ギルドと商業ギルドへお使いにも行ってもらった。
ギルドは開国より一足先に設置したいからね。
そして今日の私の予定は大公たちとの会議だ。
「さて、今日みんなに集まってもらったのは戸籍カードを作成するための魔道具のお披露目会をするためです。エレオノーラ。」
私がエレオノーラに声をかけるとエレオノーラは頷いた。
「ついに魔道具が完成したのじゃ。この間決まった紋章の絵を元にして裏にデザインされるようになっているのじゃ。」
紋章は各自でエレオノーラに紋章にしたいものを伝えエレオノーラがデザインした。
その手の才能があったのか、かなり満足できるものに仕上がっていた。
大公たちの紋章に描かれているのはクロードが百合の花、セリオンさんが世界樹、ローランが桜、エレオノーラが薔薇、レティシアがマーメイド、カミロがワイバーン、ゴードンが剣と斧が交差している絵だ。
ゴードンが酒の絵は描けん!と嘆いていたけど、描けなくて良かったと思うよ、うん。
ちなみに王家、つまり私の紋章はドラゴンにした。
ドラゴンの色で揉めたけど(主にドラゴンたちが)金色にしてみた。
これなら豪華だし喧嘩にもなるまい。
ドラゴンたちがちょっと不満そうだったけど。
これに北斗七星の絵を加えたものが王家と大公家の紋章になっている。
でも戸籍カードの裏の絵は北斗七星はなく、それぞれ百合や世界樹などの大公家の象徴の絵がシルエットだけで描かれているらしい。
やはり貴族の紋章を平民が持つのはまずいんじゃないかという意見があったのでそうなった。
私はべつにいいんじゃないかと思ったけど、みんながそういうならそうなんだろうな。
「ではそれぞれ渡すから受けとるのじゃ。2つずつあるのじゃ。色が違うから間違えることはないと思うが取り換えないように気を付けるのじゃ。でないと他の大公の絵になってしまうのじゃ。」
私が渡されたのは桃色の水晶玉が2つだ。
持ってみると意外と軽かった。
「では早速自分の戸籍カードを作ってみるのじゃ。魔道具に手をおいて少し魔力を込めれば大丈夫なのじゃ。」
私はエレオノーラに言われた通りに魔道具に手をおいて少しだけ魔力を流す。
「おお!でてきた!」
魔力を流すと魔道具が薄く光り、白いカードがでてきた。
裏にはドラゴンのシルエットがあった。
表は私の名前と年齢、誕生日が表示されている。
でも職業欄は空欄で、残高は0円になっていた。
「なんで職業欄は空欄なの?」
「ああ、それは特定の職業に当てはまらないからなのじゃ。表示される職業は、農家、料理人、使用人、鍛冶職人、錬金術師、宿屋など自称できるものしか駄目なのじゃ。」
なるほどね。
表示される職業はその人の意識にある職業なのか。
なら自己申告でいいんじゃないかとも思ったけど、それだと嘘でも登録できてしまうから駄目だそうだ。
「そのカードの便利なところは、暗殺者や盗賊、諜報員まで表示されてしまうことなのじゃ。そんなやつらも一発で丸分かりなのじゃ。」
おお!それは凄く便利!
そんな人たちは戸籍登録ができないってことだよね。
そんな職業がでた時点で捕まえればいいし。
これなら諜報員もうちには入り込めないね。
というか諜報員って自称できるものなのか?
「じゃあ、自称できない貴族とか騎士とか衛兵とかどうなるの?表示できないとか?」
「ふふん、妾を誰だと思っておるのじゃ?」
そういってエレオノーラが取り出したのは
「スタンプ?」
「まあ、あながち間違っていないのじゃ。」
机の上に置かれたのはなぜか豪華なスタンプが8つと、シンプルな黒色が7つ、白色が4つ。
豪華なスタンプはそれぞれ装飾も違っていて豪華さにも差がある。
「この豪華なスタンプは貴族として承認するためのスタンプなのじゃ。もちろん一際豪華なのが王族のスタンプなのじゃ。シンプルなのは、黒色が大公が担当する部署のスタンプで、白色が王宮の職員、騎士、衛兵、領官のスタンプなのじゃ。区別がつくように文字も彫ってあるのじゃ。ものは試しで使ってみるのじゃ。」
そういってエレオノーラは私に王族のスタンプを自分の戸籍カードに押すように言った。
大公たちが固唾を呑んで見守る中、私は少し緊張しながらもスタンプを手に取って押してみた。
「わあ!なにこれ!?」
カードが輝いたと思ったらなぜかカードの色が金色に変わっていた。
「す、凄い・・・。」
よく見ると職業欄が消えて、代わりに王族という表示がでていた。
裏を見るとドラゴンのシルエットだったものがちゃんとした王家の紋章になっていた。
装飾も高級な感じがする。
「凄いよ!エレオノーラ!」
めっちゃどういう仕組みになっているのか気になるけど。
「ふふん、そうなのじゃ。妾は凄いのじゃ。しかも王族と貴族のスタンプは陛下しか使えないようになっているのじゃ。陛下が爵位を与える式典のときにでもスタンプを押せばいいのじゃ。あと子が生まれたときとか、結婚のときも必要なのじゃ。」
ほうほう。
いちいちスタンプを押さないといけないのはちょっと面倒だけど、まあそれも仕方ないか。
「じゃあこっちの大公のスタンプをみんなのカードに押せばいい?」
私は大公の文字が彫られたスタンプを手に取りクロードのカードに押してみた。
「お!今度は銀色になった!」
クロードのカードは私の金色のカードの銀色版になっていて、職業が消えて「貴族(大公)」の文字がでている。
「次はこちらのスタンプを押してみるのじゃ。」
エレオノーラが渡したのは黒い「行政」の文字が彫られている。
なるほど、行政が宰相の部署ということかな?
そのスタンプをまたクロードのカードに押すと今度は職業の欄が復活して「宰相」の文字が。
「あれ?行政じゃなくて宰相なの?」
「ふふふ。聞いて驚くのじゃ!陛下が黒のスタンプを押すと宰相とか部署の最高職が表示されるが、その他の者が押すと行政部とか経理部という部署が表示されるのじゃ!」
なるほど。
部署の最高職、つまり大臣は私が直接押さないといけないけど、その下で働く人たちには他の人が押しても大丈夫ということか。
考えられてるな~。
高性能すぎて怖くなるわ。
こんなの現代科学も無理なんじゃない?
あ、いや指紋認証とか使えばいけるかな?
「ほら。ぼけっとしないでみんなのカードにもスタンプを押すのじゃ。陛下にしか押せないのじゃ。」
「ああ、うん。分かった。」
そして私は大公たちのカードを銀色に変え、それぞれの部署のスタンプも押した。
早速自分の領地にいる人たちの戸籍カードも作りたいということだったので、水晶を持って自分の屋敷に帰っていった。
私もノワールとセルジュ、シルキー、ブルーノ、それから侍女たちの戸籍カードを作って回った。
そのとき王宮の職員のスタンプを押すのも忘れない。
ノワールは騎士のスタンプだけど。
ブランが帰ってきたらブランの分も作ってあげないとね。
「うーん、なかなか形になってきたけど、今一番の問題はやっぱり人手不足かなあ。」
もうそろそろ開国も目前にして私は一人人手不足になやんでいた。
大公たちは連れてきた人たちや新しく呼んだ人たちがいるので、仕事を任せているらしいけど、私にはそうした伝手はないしどうしたものかな。
学校はまだ開校は先だけど、小学部だけは早く開校したいからせめて小学部の先生は見つけないとだし、最低でも役所の職員ぐらいは見つけないと移民の受け入れてすらできない。
あ、でも学校の方はエレオノーラの担当だから丸投げすればいいか。
見た目と性格はあんなだけど仕事はできるみたいだし。
「よし!シェフィールド王国に行って何人か勧誘してこよう!それでは行って・・・」
「お待ちください陛下。今から向かわれるのですか?」
セルジュが慌てて私を止める。
「そうだけど?」
「しかし護衛もいませんし、陛下自ら向かわれることもないのでは?」
「大丈夫!私見る目は確かだから!」
魔眼のおかげだけどね!
「分かりました。それでしたら、クロード様も働き手がいないとおっしゃっておりました。せっかくですからクロードと一緒に向かわれてはどうでしょう?」
クロードが?
確かにクロードは元王子とはいえ国は滅びてしまったらしいし、少し前まで奴隷だったからあまり知り合いはいないかもしれない。
「そうだね。そういうことならクロードを誘ってみるよ。じゃあ行ってきます!」
そして私はクロードのいる屋敷へと転移したのだった。




